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今日も猫の尻がくさい

猫は甘えるときに親猫の注意を引くために尻から臭いを出すらしい。
うちの『きょもも』もそうなのだろうか。
『きょもも』というのは通称で、元々の名前は『こもも』である。
当初は里親を探していたので新しい名前を貰うまでの仮の名のつもりで、『もも』の子だから『こもも』という、安易な名づけであった。
しかし、産まれた中で一匹だけご縁がなく我が家に残ってしまったため、改名の機会を逃してしまったのだ。
生後6か月とは思えない巨体に成長したこももは、もはや小ももとは呼び難く、わたし一人が勝手に『巨もも』と呼んでいる。
きょももは我が家でもっとも甘える猫で、ごくごく自然に人間の身体に登ってくる。愛らしいは愛らしいのだが、なにぶん落ち着きがない。
人の鎖骨のあたりに巨体を載せてきては、甘えて前足でもみもみと母猫の母乳を出す仕草を繰り出す。そして爪が刺さる。
甘えて鼻先を首筋に押し付けてくる。よく濡れた鼻が冷たい。
身の置き所を見つけて丸くなったかと思えば、あっちへ行き、こっちへ行き、飛び降りては再び飛び載ってくる。疲れる。
そして尻がくさい。
このニオイは何に例えればよいのだろうか、とてつもなく塩味が強そうな感じ、それでいて出汁が効いていそうな、どっかで嗅いだことのある臭いにとても似ている。
ここまで書いて思い出した。ナンプラーだ。ナンプラーっぽい臭い。
断っておくが、わたしはナンプラーは嫌いではない。むしろカオマンガイとか自作するくらいにはナンプラーは好きだ。でもあれが猫の尻から臭ってきて食欲をそそられるはずもない。
猫もかわいい。かわいいけれど、猫の尻からナンプラーの臭いがしてきてほっこりするのもわたしには難しい。
好きなものと好きなものを合わせたからといって、大好きなものにならない好例といえるのではないか。
ケーキにたくあん。ビフテキの上にプッチンプリン。うまい棒にチーズフォンデュ(これは想像したら割とうまそうだから却下)。
祝福されないマリアージュ。
しかしそれでも、兄弟のなかで1匹残され、過保護に育てていた母猫からは巨大になりすぎた故か目の敵にされるようになり、他の猫は年齢的に彼の体力に付き合いきれず邪険にされているきょももを、不憫な子と思う気持ちがわたしの中には存在している。
実の母に甘えられぬきょももは、わたしのことを母代わりにしているのであろうから、そのSIRIの臭さも甘んじてうけていこう。

ああ。今日も猫の尻がくさい。

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