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記事一覧
時空を超えて迷子になったはなし(ピコピコハンマー物語)
「どこだ、ここは!」
常日頃迷いグセのある俺ではあるが、そこはなんとかする男。いつもなんだかんだいってなんとかなってきた。だが、今回ばかりは何とかならんかもしれん。行けども行けども、全く見覚えのない光景。もう歩き疲れた。少し休もう。小川のある所へ出たところで一息つくことにした。
水を汲もうと伸ばした華奢な手が、ついぞ見慣れぬものであることに、ここでようやく気付く。慌てて川の中の己の顔を覗き込む。
空の果てをめざしたペンギンと竜のはなし②(ピコピコハンマー物語)
「片翼でドラゴンが飛べるなんてあり得るかどうか、ですか?」
ロボットからの質問に魔法使いはしばし考えこむと、口を開いた。
「あくまで仮定の話ですが、ドラゴンは魔法的生物と言われています。そして魔法とは想いの強さに反応する特性があります。つまり…そのドラゴンはそうまでして飛びたいという強い想いをもっているのではないかと」
そこまでの強い想いとはいったいどれほどのものかに思いを馳せ、魔法使いはすでに涙
空の果てをめざしたペンギンと竜のはなし①(ピコピコハンマー物語)
「なんか、においます。かいだことないにおい」
タヌキが鼻をひくつかせて辺りを見回す。
「この周辺に僕らの他には何もいそうにありませんが…」
ロボットにはなにも感知できていない。ただロボットには嗅覚が搭載されていないので、タヌキの感覚を信じることにした。
「そこに誰かいるんでしょう。用があるなら隠れていないで姿を見せてください」
虚空に向かってよびかけると、木の上から大きな鳥のような生き物が落ちてき
こころをそだてるロボットのはなし②
ある時には猛獣に追われた。「心」が感じる恐怖と動揺によってロボットの冷静な判断力は阻害され、逃げ惑うことしかできなかった。
この時間が永遠に続くのではと思われた。
しかし、恐怖の時間は終焉を迎えた。ふたつの刃の煌めきによって。
「ヨシ!今日の晩飯はこれで決まり!うまいとこだけいただいてくぞ」
「えー、こんなでっかいのさばくの?僕みたいな細腕の美少年にはとても無理だね」
「その細腕とやらが軽々と担
こころをそだてるロボットのはなし(ピコピコハンマー物語)
誰もしらない、とおい昔のはなし。
この世界をまもるために、強大な力をもつ兵器を作ったものがあった。
兵器の威力は絶大だった。
ただし、問題があった。
脅威を取り除くために戦った兵器は、命令を遂行するために全てを破壊しかけたのだ。
その傷跡は深く、古い世界はゆっくりと終焉を迎えた。
兵器の作り手は、己の至らなさを嘆いた。
しかし、世界の脅威はいつか再び訪れることもわかっていた。
この先息を吹き返
ピコピコハンマー物語
①
「こらっタヌキ!また俺の顔で遊んだな!どこにいやがる!」
「まあ、きみの顔は遊びがいがあるからついつい遊びたくなるよねえ」
「んな顔があってたまるか!」
猫と犬の獣人たちの会話を聞きながら、タヌキは木の上で目くばせをした。
その合図を受けて、獣人たちの背後にしのび寄る影。
ピコン!ピコン!
「ふぎゃ」「きゃんっ」
2人の頭に振り下ろされたのは、彼らが得意とするアックス…などではなく、ただ
ピコピコハンマー物語 いとちゅうにて①
「いらっしゃい!お久しぶりです。今日もタヌキさんとロボットさん一緒なんですね」
ドアを開けて入ってきた一行に快活な声をかけたのは、『いとちゅう』を一人で切り盛りしている店主のいと。
「いとちゃんのとこ来る時必ずついてくるんだよコイツら。普段はどこほっつき歩いてるかわからんくせに」
軽く手を上げて挨拶を返しながら、剣士が答えた。その後ろからピコピコと音をたてて小柄なシルエットが2つ続く。
「だって、
ピコピコハンマー物語 いとちゅうにて②
〜前回のあらすじ〜
みんなの憩いの食堂『いとちゅう』で大胆にもイタズラをしかけたタヌキとロボット。
最初の餌食になったのは犬戦士。しかし逆に死んだふりを仕掛けた犬戦士にまんまと騙されたタヌキ(と猫戦士)。惨劇は回避された。
しかし、ピコピココンビがしかけたイタズラは一つではない。
近頃仕入れた新兵器を試す恰好の機会とばかり、ほかのメンバーの食事にもなにやら仕込んだもよう。本当の惨劇はこれから、
ピコピコハンマー物語 いとちゅうにて③
〜前回のあらすじ〜
イタズラによって魔法使いのくしゃみが止まらなくなり、とうとう惨劇が起きてしまった(トビトカゲの身に)。しかし、これはまだ序の口…
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−ねえロボットさん、こんな薬がありましたよ。
−どれどれ…ふむ、どうやらこれは、飲んだ人の隠している能力がわかる薬らしいですよ。
−かくしているのうりょく…気になりますね。
−気になりますね。
酒と涙と剣士とエクスカリバー(ピコピコハンマー物語)
我は待つ。我と心通わせる者が顕るを。その者だけが、我を此処から引き抜くことができるであろう。
自我が芽生えたのはいつのことであったか。降り積る落ち葉のような記憶の底の底。我は何者かの手にあった。血湧き肉躍る冒険。満たされていた時代。
しかし、かの者の手から我が離れる時がきた。岩に突き刺され、墓標となった我は最早剣としての役目を捨てた。剣としての我の力を求めて訪れる者の手を、我は悉く拒みつづけた
なんとかする男のはなし(ピコピコハンマー物語)
-1-
今のパーティに入るずっと前のこと。俺は何でも屋をやっていた。
まだ若かったこともあって、今思えばかなり無茶をしていたな。
他に頼るあてもない、なんて泣きつかれると放っておけなくて、他の連中が断るような困難な依頼ばかり引き受けていた。
ま、そのおかげで押したり引いたり、説得したりブッ飛ばしたり、交渉術の手練手管は身についたな。
そんなうちについた呼び名が「なんとかする男」。
より一層の無理