2024年 心に残ったコンテンツ ランキング
今年観たコンテンツで良かったものを10個、選んで書く。
こういう記事は、年末年始に書くのが相場だろうが、今がちょうど個人的な節目のタイミングなこともあり、一足先にまとめてみたくなった。
漫画、アニメ、テレビ、YouTube、舞台‥など、ジャンル問わず、心に残った順だ。(ただしゲームは除く。同業者に順番をつけるのは恐れ多いゆえ)
10位 映画「マッドマックス:フュリオサ」
待望のマッドマックスシリーズ新作。最高に面白かった。
密度がぎゅうぎゅうに高い2時間半。冒頭から次々現れる、この世界独特の装置、キャラクター、文化風習。全てのカットに、アイデアと要素が満ちていて、すぐに世界に引き込まれる。荒廃した世紀末で、文明の遺物を拾い集めて作られた車両の数々も良い。どれも新鮮なデザインで、所有者のキャラクター性が反映されているのも面白い。チャリオットにはしびれた。
2015年の歴史的傑作「怒りのデスロード」のあと、ビジネス上の都合で続編制作が難航し、本作まで、9年の期間を要した。その間に、コロナ禍を経て、世界はすっかり変容した。映画興行も事情が変わったはずだ。いまや多くのトップクリエイターは、Netflix や Amazon Prime に主戦場を移している。時勢が急変するなか、この企画が倒れることなく、完成に至ったことは嬉しい。ジョージ・ミラー監督は70歳台だが、9年経っても熱量や体力を維持したまま、こうしてまた尖りきった作品を、ひとつ生み出してくれた。
できれば一人でも多くの人に、この映画を見てほしい。Amazon Primeで、冒頭10分が、無料で公開されている。
実はレーティングもPG12だ。子供と一緒に見られる(前作はR15+だった)
9位 漫画「Dr.STONE」
後日譚が描かれた最終巻が、今年4月に刊行。この機に、最初から一気に読んだ。すごく面白かった。
世界の謎を解き明かすミステリー展開だけで、興味を維持させている、曲芸のような漫画だ。人同士が傷つけあう場面は、最小限しかない。バトル漫画における修行シーンの魅力は、科学製品のクラフトシーンに置き換えられている。このあたりも、他のジャンプ作品とは明らかに一線を画していると思う。
登場人物が、ことごとく清々しいのもいい。困難の中での前向きさ、他者の巻き込み方、仲間への信頼。Dr.STONEのキャラクターは、どこか現実離れしていて、一片の曇りもない人物ばかりなのが、むしろいい。ここも他のジャンプ作品と毛色がずいぶん違う。小学生に薦めたいジャンプ漫画、個人的には第1位。
終盤の物語はどれも好きだが、特に、26巻の龍水の、乗組定員に関するエピソードが特に印象に残っている。ドラマも良い。
8位 NHKスペシャル「戦場のジーニャ」
副題は「ウクライナ 兵士が見た地獄」。一般のウクライナ市民が、兵士になることを志願し、戦場に向かう様を描いたドキュメンタリー作品だ。
ロシアとウクライナの衝突は、スマートフォンが普及した時代の戦争である。そのため、戦地の映像が、当事者によって動画で多く記録されている。作品中では、最前線の塹壕にある日常の息遣いや肌触りを、生々しく伝えていた。
また、任務から帰還した後の兵士の暮らしも、ありのままに描かれている。驚いたのは、帰還兵が余暇のリビングで、子供とFPSに興じているシーンだ。戦地で心身ともに傷ついた兵士が、画面の中のバーチャルな敵に向かって銃口を向ける。彼にとって、そのゲーム体験とはどういうものなのだろう。
この世界に対して、自分は何をできるだろう‥と、切実に考えさせられたし、そのことは、自身の人生の舵取りに少なからず影響したと思う。
5分のダイジェストが、YouTubeに公開されているhttps://www.youtube.com/watch?v=l570k5qFt5U
本編は、NHKオンデマンドで見られる(有料)
NHKスペシャルは、あいかわらず特別な作品群だ。混沌としている世界に、毎度、地図を与えてくれるような感覚がある。今後も支持し続ける。
7位 楽天モバイルパーク宮城
8月末、仙台に他用があり、当日、たまたま時間が空いたので、ゴールデンイーグルスvsバファローズ戦のナイターを、スタジアムで観た。
楽天モバイルパークに行くのは初めてだったのだが、「なんて楽しい球場なんだ!」‥と、つくづく感心させられた。レフトスタンド奥の観覧車やメリーゴーランドを筆頭に、次から次へともてなしが満ちていた。
限定ユニフォームが観客に配られており、見渡す限りほとんどの人が、同じ水色のユニフォームを着ていた。スタッフも同じ服を着ていて、一体感がある。外野指定席は勾配を抑えて作られていて、フィールドを近く感じる。券種でエリアで分断されておらず、どんなチケットを持っていても、スタジアムをぐるっと一周できる。高さのある席、応援団の集う席、マス席、楽しみ方に合わせて、様々な席がある。一方、観覧車に乗れば、辺りに高い建物がなく、眺めもいい。夏のナイターだと、美しい夕陽をバックに、試合が始まる。花火も間近で打ち上がるし、イニング間イベントも楽しかった。食事もおいしい。雑多なエンタメの集合体を一気飲みするような多幸感。テーマパークより同時多発的だった。
プロスポーツ観戦も好きだが、スタジアムはレジャーとして、別の面白さがあるとつねづね思っている。スタジアム体験としては、これまで行った野球場でいちばん良かった。
6位 TV「あちこちオードリー」 後輩SP
この番組は、ずっと大好きで、毎年見続けているのだが、今年はトムブラウンとヤーレンズが出演した回がすばらしかった。漫才に賭ける3組の、本音のぶつかりあいと、絆。
個人的には去年のM-1で見た漫才のなかでは、トムブラウンの漫才がいちばん好きなのだが、その誕生プロセスも垣間見えて良かった。
今ならU-NEXTで見られる(有料):
https://video.unext.jp/play/SID0089576/ED00505705
令和ロマンのM-1アナザーストーリーを先に観て、ヤーレンズと令和ロマンの関係性を知ってからだと、より楽しめるかもしれない。(それもU-NEXTで観れる)
佐久間宣行さん案件は、今年も、たくさん楽しませてもらった。オンラインライブも良かった。ノブロックTVの、芸人が嫉妬したランキングシリーズや、100ボケ100ツッコミも好きだ。勝手にテレ東批評も、トークサバイバーもよかった。ANN0のDJ松永さんゲスト回も面白かった。こんなに、ずっと安定して面白いのって‥、すごい。
5位 ドラマ「海のはじまり」
フジテレビ月9の夏ドラマ。2022年の傑作ドラマ「silent」を作ったチームの新作だ。まだ完結しておらず現在進行形。あと2話残しているが、この時点でもう名作と言い切れる。毎話、観るたび、感情が動きすぎて、感想が言えない。
脚本・演出の両名とも、90年代生まれの、若いチームだ。これまでのドラマではリーチしなかったような人間の機微を描いているし、そのうえで、ストーリーがエンタメとしても、ちゃんと面白い。
現時点では、TVerで3話まで無料で見れる
back numberの主題歌もいい。「誰の人生だ」という歌詞が、脳内でリフレインする。
4位 ダウ90000単独ライブ「30000」
めちゃくちゃ面白かった。笑いに笑った。2つめのコント「磯丸水産」が特に最高だった。最後のコントも好きだ。
蓮見翔さんは、明らかな才能の塊で。あんな目まぐるしい忙しさのなかで、コント一本一本で、新しい仕掛けを入れつつ、面白いことをやり続けるって、狂気の水準だ。とにかく、ちゃんと全部面白い。目新しさだけで終わっていない。
始めた当初、大学生活や若者の恋愛をコント化するのは、ブルーオーシャンだったかもしれないが、近作は、それ以外の切り口の方がもはや多い。それでもずっと、新しくて、面白いところを探している。才能がほとばしりすぎていて、眩しい。
EX THEATER ROPPONGIで観た、ダウ90000×チュートリアルのコラボコントライブ「+90000」も良かった。最後の長尺コントは良かったなぁ‥。若者に交じる年長者というテーマを、この座組のライブの最後に据えるのが、チュートリアルへの愛に満ちていて、心地よかった。
蓮見さんが、noteで自分の弱みをさらしたり、ノブロックTVのインタビューで嫉妬を隠さず見せていくところも美しい。また、現役で、キングオブコントや、岸田戯曲賞で競い続ける様を、ショーにしているのもいい。何も装うことなく、ただ天才。そして、メンバーの前ではチームリーダーとしての表情も見せる。アーティストのメンタルと、プロジェクト責任者のメンタルを共存させている。そこも感嘆する。
きっと、ダウ90000の活動自体は、今後、傷ひとつない輝きのまま、長く続けられるものではないだろうとは思う。(なんせメンバーが多いのだ。それが欠けてしまうリスクも高い)この輝きは今だけのものだと思って、ありがたく観るようにしている。そして、この先、何がどう転ぼうと、紆余曲折すらも、応援し続けるつもりだ。もう目が離せない。
3位 DMMTV「大脱出2」
「水曜日のダウンタウン」演出として有名な藤井健太郎さんが、DMMTV配信のために作った、バラエティ番組の第2弾。
圧倒的に面白い。こんな面白いものがあっていいのか。演出の藤井健太郎さんは、「現時点での自分の最高傑作」と語っていたが、その通りだった。脱出ゲームの魅力と、エクストリームなテレビ演出の融合。
ネタバレせずに説明するのが難しいが、抽象的に言えば「構造的な面白さを突き詰めた一作」という言い方か。大笑いしながら、感心するエンタメの最高峰だ。今回は、さらば青春の光という、明確な主人公を据えたことで、より見やすいものになっていた。
あと水曜日のダウンタウンは、今年も最高だった。清春の新曲、タッグ相撲、歯無し運動会、不義理をした人に謝るロケ、あれ作ったの俺ドッキリ、モニタリングでエグい秘密、終了デマ、インフォマ-1GP。なんだ、この打率の高さは。「最近のテレビは、規制が強くてつまらなくなった」なんて、よく言われるが、個人的には、水ダウひとつで、かつてのテレビバラエティ全部を凌駕している気がしているので、物足りないとは思わない。結局のところ、制約を茶化して、どう巧みに踏み外して遊ぶかが面白みなので、どこにラインが引かれているかは、面白さの優劣とあまり関係ない気がしている。(そのぶん、予算は大胆に使っているのだろうけど)
2位 映画「リバー、流れないでよ」
劇団ヨーロッパ企画の長編映画。公開は去年だが、昨年末にソフト化され、今年に入ってはじめて観た。人生ベスト級の映画だった。笑えるし、感心するし、美しかった。
海外の映画祭で受賞はしているものの、まだ作品の価値に対して、評価され足りていない思いだ。「カメラを止めるな」のような一大ムーブメントになっても、おかしくない傑作だと思う。単純にコメディとして面白いし、心を掴まれる美しいシーンもある。
あと、撮影自体が圧倒的に難しい映画だ。映画全編を通じて、長回しが多用されている。そして、その難しさ自体が、観客の楽しみにもつながっている。
この映画は、きっと多くの、若いインディーズ作家を刺激していることだろう。俺も映画を作りたい、と思わせてくれる。
1位 オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム
幸運にも東京ドームのチケットを入手でき、目の前で観られた。当日のことについては、直後に感想を詳しく書いた。ずっと噛みしめられる思い出だ。ブルーレイの発売も心待ちにしている。
赤塚不二夫さんとタモリさんや山下洋輔さんなどの交流の様子が時を経て、いまや逸話として懐かしく語られるように。今のオードリーの二人を中心とした、人のつながり(星野源さん、山里亮太さん、Creepy Nuts‥)も後年、各自の作品群と合わせ、逸話として語られるようになるのかもしれない。今この時代に、それをリアルタイムで目撃している。
次点
YouTube「タイマン森本」×永野
セッションで生まれる面白さ
映画「正欲」
Vaundyさんの主題歌が忘れられない
YouTube「きしたかの ウミガメのスープドッキリ」
このチームの企画力には毎回、感嘆する。見事
オダイバ恐竜博覧会2024
等身大スピノサウルス展示の迫力
TV「THE SECOND 2024」
学天即、金属バット、ザ・パンチ。みんな見応えあったなぁ‥
YouTube「ReHacQ なぜ会社辞めたんですか!?」上出遼平さん回
書籍「ありえない仕事術」も面白かった
TV「そのコントやってみます」
こういう番組を待っていた。そして、ベッキーさんがすごい。
ドラゴンクエストカーニバル in 横浜みなとみらい
タワー展望台の眺めと共に聴く「おおぞらをとぶ」が最高だった
ヤーレンズのオールナイトニッポン0
2時間ずっとハイスピードアドリブ漫才
FNS27時間テレビ内の「さんまのお笑い向上委員会」
吉本団体芸の極致。何度も観てしまう
Netflix「地面師たち」
題材も刺激的だし、ケイパードラマとしても面白い
ホロライブ「需烏風亭らでん」配信
美術の学芸員資格を持つVtuberが、美術知識を教えてくれる配信
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最後に少しだけ、自分の話も書く。
当初の予感通り、2024年は、個人的にも転機になった。転がって転がって、昨年時点では想像もしていなかった場所に辿りつきつつある。居場所を探して、もがくように行っていた様々な活動。それがつながって、先の道が開けた。じたばたした時間は、無駄ではなかった。
もう人生の後半戦だ。いつか終わる。だからこそ、踊る決心ができた。
今年、出会った素晴らしい作品群も、私の転機を後押ししてくれていたように思う。こうして、同時代を生きる人たちが、いま、リアルタイムに作品を世に出し、同時に、自分の生きざまをさらしてくれているこそ、もらえるものがあった。御礼を言いたい。
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