090の悪魔
僕は普段、人材の会社で働いている。
今期はどうやら業績が良いようで、嬉しいけど全く自宅に帰れていない。
「もう、嫌だなこんな仕事。」
そんなことを思いながら、今日は久しぶりに終電で自宅で帰れる日だった。
今日はビールでも買って帰ろう。
いつもヘコヘコして取引先法人には手数料のために「人を雇ってください。」とお願いをし、転職希望者にはたくさんの御為ごかしをして正直年収から見積もれる手数料収入しか見ていない自分を忘れよう。
自宅に着いた。さ、開けますか缶ビール。
「プルルル・・・プルルル・・・」
「んだよ・・・もう仕事は終わりだっての。」
見たこともない090のナンバー。
「プルルル・・・プルルル・・・」
「しつこいな・・・出てやるか。」
会社の携帯なんて持ってくるんじゃなかった。
奴隷根性が染み付いた証拠だ。どうせこんな時の電話なんて良い電話なわけない。でも、今出なかったら後々デカい火種になっているのも嫌だ。
しゃーなしにスワイプして電話に出た。
「あぁ〜どうも、どうも。悪いねいつもね。アメンホテプ4世です。」
いや、誰だ。アメンホテプ?なんか世界史で聞いたような。
「あれ、聞こえてます?アメンホテプですよ〜」
「あの、転職したくて相談の電話かけました。もう飽きたんですよね。王様。多神教だと国バラバラなりやすいから一神教にしようと頑張っていたんですけど。なかなかどうして上手くいかなくて。ちょいとジョブチェンしようかと。」
反応して無いのに勝手に語り始めるなよ。
どうせおふざけだろ・・・・
切っても良かったが、グビッとビールを飲んで話を聞いてやることにした。
「ご相談頂きありがとうございます。王様なんですね。で、次はどんな仕事をしてみたいんですか?」
「ん〜そうですね〜。王様ってなんやかんや人だし、部下たちも反乱起こす恐れあるし、神様ならそんな不安もないだろうな〜とか思っていますけど。今、神様の求人あります?」
ぶん殴ろうかな。と思う。バカにされている気がしてきた。ま、落ち着こう。
「神様の求人ですか。直近の募集見る限り今はないですね。ちなみに次の職場に向けてアピールできることってなんですか?」
「アマルナ文書ですかね〜。今で言うならば学術用語がラテン語で共通認識が持たれてるみたいに、アッカド語の楔形文字でいろいろ記録残したところですかね。当時の共通語みたいなものですからね。」
「それって何の意味があるんですか?」
「それはもう、今から3千年以上前の記録が残っているということに意味があるんじゃないですか〜。まぁトルコでも同じ内容の文書があったから本当だと言われてますけどね。なかったらホラ吹きだったかも。」
「神様になるとして、やりたいことは?」
「もう政治は疲れるから、何もしないでグダグダして生きたいですね〜。
あぁでもナイル川から産まれるビールが出るときは王様に戻りたいかも。いの一番にビール飲めるんで。」
「今、年収はいくらなんですか?」
「エジプトのGDPって感じです〜」
検索してみる。ざっと4千億米ドル。60兆円程程度。その3割を手数料と見ても18兆円の手数料収入。いや、ありえないだろ。
「す、すごい金額ですね。源泉徴収票とかってあります?」
「なんですか、それ〜。王様がサラリーマンと同じ天引きな訳ないじゃないですか〜。天にいるのは僕なのだから。」
なんか、馬鹿らしくなってきて笑った。こんな求職者がいてもいいかもな。いっそ本当に神様に転職させて、FIREしてしまおうか。
リクルーターとして話を聞こうじゃないか。
夜通し。
人生は狂うほど、面白い。
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ささいなことから駄目になった学者の話、できました。
偶に歴史をねるねるねるねして遊んでます。
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