スタートアップにとっての公共案件参加のススメ〜vol.1 入札参加資格編〜
起業直後に公共案件に参加する難易度の高さ
※これから話す「公共案件」とは、「自治体(や国)の案件」を指します。
弊社では主に自治体様向けに「ヤングケアラー支援事業」を行っています。
立ち位置としてはいわゆる社会的企業なのですが、お客さんは主に自治体であり、BtoBでもBtoCでもない、いわゆるBtoGという領域になります。
私は起業するより以前から自治体とお仕事をしていたので、自治体相手にビジネスをすることにあまり抵抗感はなかったのですが、どうやら世の中的には
自治体商売は儲からなそう
そもそもどこから始めたらいいかわからない
実績がないと国や自治体は相手をしてくれなそう
というイメージがあるようで、そこそこ大きな規模の会社でも公共案件に参加するにも「どこから始めていいかわからない」という状況の会社が多いように思います。
私も起業するまでは、公共案件に参加する方法は頭では分かっていたのですが、それでもいくつかの問題にぶち当たりました(います)。特に起業してまもないスタートアップやベンチャーにとっては、公共案件に入るにあたって注意しておくべき事柄がいくつかあります。
自治体営業会社や入札情報サービスなどが公開しているWebメディアには自治体営業ノウハウなどを体系立てた情報が載っていますが、ここでは「入札に参加する事業者としてのリアルな話」を話していこうと思います。
そもそもどうやって入札に参加するのか
入札に参加するには、どの自治体も決まった流れがあります。
流れとしては、主に以下の通りです。
対象自治体の入札参加資格申請をする
入札の告知が出る
入札の参加申請を行う
入札が行われる
一般競争入札の場合は価格で競争
プロポーザル(企画競争)の場合は総合評価で審査
落札業者が決まる
入札ノウハウのようなページとしてフィーチャーされがちなのは「3. 入札の参加申請を行う」以降ですが、実は最初に問題にぶち当たりやすいのは「1. 対象自治体の入札参加資格申請をする」です。
まず入札参加資格を取ろう
これが意外と世の中に情報がまとまっていない印象があります。何はともあれ、まずやることはこれです。
入札参加資格をとらないと、頑張って自治体にアプローチして、なんとかアポを取って打ち合わせを重ねて、見積もり依頼をいただいて、いよいよ入札が出た!となって入札説明書を見てみたら「XX市の入札参加資格を持っていること」という一文で詰むという状況が発生します。
たまに自治体によっては、入札参加申請を行うと同時に入札参加資格申請を行うこともできる案件もありますが、基本は事前に申請が必要です。
しかしこれが非常にクセモノで、主に入札参加資格には
定期申請(基本1年に1回のみ申請が可能)
随時申請(年度途中で申請が可能)
の二つがあります。
定期申請は基本的に年に1回申請が可能で、一度申請すると翌年度〜翌々年度くらいまでの入札参加資格が取得できます。
随時申請は年度途中で申請が可能なもので、現在の事業年度や来年度の申請が可能です。
じゃあ時期を逃したら随時申請をすればいいじゃん!と思うのですが、そうは問屋が卸しません。
自治体によっては、「随時はX月XX日〜X月XX日のみ受け付けます」という期間限定であることが普通にあるからです。つまり、この入札参加資格申請を忘れていたら、気づいた時には詰んでいることがあるのです。
なので、1ミリでも入札参加する可能性がある自治体の入札参加資格申請は欠かさずしておくことが重要になります。あなたの営業努力を無駄にしないためにも。
スタートアップのみが直面する問題
そして入札参加資格申請には、スタートアップのみが直面する問題があります。それは「営業年数」と「決算資料」です。これはインターネット上ではほぼ語られていない印象があります。
入札参加資格申請を行うには、審査のためにいろんな申請書類とともに多くの参考資料を自治体に送ることになります。例えば
履歴事項全部証明書
納税証明書
従業員リスト
各種宣誓書
決算書類
など色々とあるのですが、ここでまず問題になるのは「決算書類」です。
もしあなたの会社がまだ事業初年度で決算書類がない場合、果たしてどうなるでしょうか。
事業初年度で決算書類が存在しない場合
結論から言うと、「自治体によって対応は異なる」です。
自治体によっては、「事業初年度で決算書がないならその旨を申請時に添えてください」となりますが、別の自治体では「決算書類がないなら入札参加資格申請は受け付けません」となります。
体感としては、後者の方が多い印象です。
つまり、それらの自治体の入札については、基本的に決算書類ができるまでは入札に参加する資格すらもらえないのです。これはもう制度上の問題なので、回避する方法はありません。
なので、スタートアップが自治体に営業する場合、決算書類がなくても入札参加資格申請ができる自治体を優先的にアプローチする必要があります。まして、入札参加資格申請は多くの場合翌年度の資格の申請となります。決算書類ができた=入札にすぐ入れるわけではないのです。このことを頭に置いた上で営業対象の自治体やスケジュールを決めていきましょう。
「営業年数」の縛り
次にスタートアップが直面するのは営業年数の縛りです。
自治体によっては「該当の事業をX年以上営んでいること」という制約があります。Xに入るのは、多くは1年。たまに2年がある印象です。
会社を設立して間もない場合、これも回避不可能な制約となります。これはもう、ただ静かに時が過ぎるのを待つしかありません。
効率的な営業活動をしよう
自治体への営業は、足の長い活動です。一度のアポイントで案件が取れるようなものではありません。
そんな中、奇跡的に上手に関係性が作れて案件につながったとしても、入札参加資格が取れないことが原因で今までの営業努力が水の泡になってしまうことを避けるために、入札参加資格が取れるところからアプローチをしていきましょう。
終わりに
入札参加資格については、実際のところ多少の例外や細かいポイントはあるのですが、概要としては上記のとおりです。
弊社ではヤングケアラー支援事業として
ヤングケアラー実態調査事業
ヤングケアラー向けSNS相談事業
オンラインサロン事業
研修実施、講師派遣
その他各種システム開発
などを行っています。
上記の事業に直接関係がなくても、自治体との関係性づくりに悩んでいたり私たちがお手伝いできることがありそうでしたら、noteからでも会社HPからでも気軽にご連絡ください。
次回は、実際に入札案件をどう探していくのかを書いていこうと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。