MARVIN GAYEの「what’s going on」
ベトナム戦争真っ只中の1971年に発表されたこのアルバムは、高いメッセージ性と繊細な楽曲で非常に多くの影響を残した作品。戦争に対する嫌悪、汚染されていく環境や失われていく愛と信仰への不安、何者かによる搾取への憤り、そして子供たちに残す未来に対しての責任。その崇高なメッセージを、ひたすら美しいメロディに乗せて解き放っている。
ちょっと説教臭い気もするが、このアルバムが発表された1971年はイーロン・マスクとトマ・ピケティが生まれた年。メリトクラシーと格差社会は進行を続け、世界はいまだに偏見と差別に満ち溢れているのだから、このアルバムのメッセージは(残念ながら)50年以上が経過した現在でも有効なのである。
曲を切り刻みサンプリングして再使用することが必ずしも不毛とは思わないが、このアルバムはぜひ全曲を通して、最初から最後まで順番どおりにゆっくりと聞かれることをお勧めしたい。それは切り取られたワンフレーズとは全く別の体験を与えてくれるはずである。