初めまして。生まれてきてごめんなさい。
最初にお伝えしておくと、私はこの世に生まれてきてはいけない人間なのだと思う。
でも生まれたからには寿命が来るその日までは懸命に生きていこう…
なんて前向きなわけでもなく、とりあえず最低限食べられたらいい。
欲を捨てると人生が楽になる…と、誰かが言ってたが、うん。なんかその通りかも。
温かい家庭で育ち、大学を出て就職して、それなりに優しい旦那様と出会い結婚、出産、マイホーム。
絵に描いた様な順風満帆人生が羨ましいと思った時もあったが、そういう人ほど欲が生まれそうだ。
ブランド物が欲しい、良い車が欲しい、子供を良い大学に行かせたい…
そんな欲にまみれたら疲弊しそうだ。
ちなみに私は5歳の時に父親が蒸発した。
今でも覚えている、休日の朝コンビニに行くと言って家を出る父親に
「私も行く!」と言ったら「すぐ帰ってくるから待ってなさい」と言われエレベーターでバイバイしたその時を。
その後母が起床したらバッグの中に置き手紙。
「もうあかん、逃げる。」
そこから母と、父を探す旅に出るのだ。
今のうちに言っておくと、私はなかなかの波乱万丈人生だが、周りが作り出したものではなく、確実に自分自身が作り出したものである…
元はマンション住まいだったが、父が蒸発してからはオンボロアパートに引っ越し、父を愛していた母は鬱気味になり生活保護を受けることになる。
それなのに何故か衣食住には困ったことがない。
それは大人になってから謎が判明するのだが。
母はとにかく父を探すため、当時父が働いていたパチンコ店の店員、客、友人、手当たり次第に情報提供を求めたようだ。
当時テトリスが流行っていて、母は涙を流しながらゲームボーイでテトリスをやっていた。
今でもテトリスの音楽を聞くと悲しくなるから嫌いだと言っている。
そんなこんなで何ヶ月か経過した日、当時は初めて見る新幹線という乗り物で静岡へ向かった。
静岡のとあるパチンコ店にて住み込みで働いていると情報があったのだ。
新幹線の中で母が頼んでくれたアイスクリームに黒い粒が入っていて、母がクレームを入れたらバニラビーンズだったのは良い想い出。
仕方ないよ、高級なアイスクリームなんて食べたことがなかったんだから。
情報の通り、そのパチンコ屋に父はいた。
もう女と暮らしていたのだ。
当時は事の重大さなど分かっておらず、久々に見た父の姿に喜んでいたのだが、対照的に母が悲壮感に打ちのめされていたのを子供ながらに感じた。
続く