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中国で苦戦する「日本型マネジメント」

日本企業と中国企業のマネジメントの違いはどのようなところにあるのか?私は上海で人材育成・組織開発を生業としていますが顧客の80%が日本企業の現地法人となるため、中国企業のマネジメントについては限られた範囲でしか知見がなく、仮説はあっても検証できていません。2019年パーソル総研「HITO REPORT」のアンケートデータをご紹介しながら仮説を一緒に考えて頂ければと思います。

上司のマネジメントを部下はどう見てる?

まずは2019年パーソル総研「HITO REPORT」のアンケート結果をご覧ください。「あなたと現在の上司の関係について、最も近いと思うものを選んでください」という質問への回答データです。

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「HITO REPORT」の解説
日本では「問題を起こさないこと」に意識が高く、他のアジア各国では「組織を使って事業を動かす」に意識が向いている

「HITO REPORT」の解説にある「問題を起こさないこと」にフォーカスしたマネジメント、特に中国の日系現地法人では更に、この色が強くなります。もともとの現地法人の役割自体が、決まったお客様への販売、予定された数量の生産、と設定されていることが多く、問題を起こさず予定通りに円滑に業務遂行することに意識が向けられるのは当然の結果です。

意味合いの変わった「現地化」戦略

現在、多くの日系現地法人は新たな役割を期待されています。
・中国市場における新たな顧客開拓
・中国顧客ニーズに合わせた商品開発
などなど。以前より担ってはいましたが、日本市場の縮小、中国市場の巨大化という環境変化の中で、本気でこの役割を求められています。

しかし、外国人である日本人には極めてハードルの高い役割で、十分な成果を出せている企業は、ほんの一握りです。ただでさえ外国人なのに、定期異動により、駐在員が3~5年で入れ替わるため、よりハードルは高くなります。ようやく市場特性を理解し始めたら帰任、また一からスタート。毎回、引き継ぎはいい加減・・・といった具合です。結果、多くの日系企業は中国人社員のチカラを活かし、彼らを事業の中心にしていく戦略「現地化」を目指します。これまでのコスト削減を目的とした「現地化」から、中国人社員のチカラを最大限に発揮させる「現地化」にシフトしています。

日系企業の苦手な「組織マネジメント力」

この時の大きな障害こそが、アンケートデータに現れているマネジメントの意識と行動特性ではないでしょうか。日本企業のマネジメントは問題を起こさない事業運営は得意だが、組織を使って事業を動かすことはとても苦手。私の解釈ですが、「答え」が分かっているものに向けた組織管理は得意だが、「答え」が分からないものに向けた組織管理は苦手だと捉えています。そして、これは意識すればすぐに出来るものではなく、スキルとして相対的に低く、わたしたち日系企業のマネジャーは身に着けたいスキルだと感じています。(私も苦手です・・・)

コミュニケーションの目的意識

先程のアンケートデータでもう一つ注目すべき点があります。それは回答数です。先ほどのデータを拡大して見やすくしてみました。(画像が少し切れてしまっていて、すみません!)

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改めてこのアンケートデータですが、「上司のマネジメント特徴について、当てはまるモノにチェックしてください」といった質問への回答です。

<日本>
1位:メンバーに対する平等な接し方 42.1%
2位:ミス発生時の十分なフォロー 39.4%
<中国>
1位:納得できる注意や叱り方 86.7%
2位:良い仕事に対する賞賛 86.7%

回答数(割合)について、約2倍の差があります。この回答をそのまま理解すると、日本企業では上司と部下のコミュニケーションが相対的にとても少ないとも解釈できますが、私の肌感覚では恐らく日中両企業でコミュニケーション頻度は大きく変わらないです。ではなぜ、ここまで回答数(割合)に違いがでるのでしょうか?この問いを考えていて、ふと思い出したことがあります。

日系駐在員のマネジメント研修を行っていて、部下とのコミュニケーションについて聞くと、よくこんな答えが返ってきます。『仕事の合間の短い時間や、出張時の移動中に、よく話しているよ』、話している内容は、普段の業務に関して思っていることや、プライベートのこと、世間話まで多様です。日本人・中国人という文化の違いを理解し、少しでも普段の仕事で感じている愚痴・不満を引き出そうという優しいコミュニケーションです。つまり、将来起こりえる問題を回避するためのコミュニケーションです

弊社のお客様の中国企業マネジャーは、業務を前に進めるために目的意識を持ったメリハリあるコミュニケーションを普段から実行している方が多い印象です。(n数が少ないので、あくまで仮説です)

事業を前に進めるためのコミュニケーションなのか、将来の問題を回避するためのコミュニケーションなのか、どちらが良い悪いではなく、この無意識に染み付いているコミュニケーションに対する意識が、部下から見たときに何のためのコミュニケーションか理解が出来ていない。「回答数を下げている=伝わっていない」に繋がっているのでは?と推測しています。

私たち日本企業がグローバルで、且つ、経験したことのない課題を解決していくためには、無意識に染み付いてしまっている、この「コミュニケーションの目的意識」を修正することが第一歩。明確に目的を伝えるコミュニケーションにより「組織をつかって事業を動かす」マネジメントを実現することが中国人社員の能力をより発揮させ、目指す現地化に一歩近づくと感じています。

まずは、私自身のコミュニケーションを見直していきます。

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