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Trip.comの実証実験から、上海ロックダウン後のリモートワークの在り方を考察

ロックダウン中、「リモートワークにおけるマネジメント」というテーマで色々なところでお話しさせて頂きました。講演後にご参加された方の中で、こんなご意見を頂きました。
「中国人スタッフにはリモートワークは合わない?」
「そもそも、リモートワークを中国人スタッフは希望しない?」
確かに弊社のように研修を生業としていると、オンラインではなく、集合研修を希望されるお客様が日本よりも多いと感じています。

「リモートワークに対する捉え方が、日本人と中国人で異なるのか?」
2021年にTrip.com社が半年間に渡って行った、リモートワークに関する大規模な実験結果を見ながら、この問いに答えていきたいと思います。

Trip.com社について簡単にご紹介します。中国在住者であれば、誰もが一度は使ったことがあるサービスなので、認知度は極めて高い企業です。

トリップドットコム・グループは、中国・上海市に本拠地を置くオンライン旅行会社。日本を含む世界各地で旅行予約サイトのTrip.comを展開するほか、旅行メタサーチのスカイスキャナーを保有、また中国人向けの旅行予約サイトとして、CtripおよびQunarを運営している。

ウィキペディア

Trip.com社が行った大規模な実験

この実験はTrip.com社内で今後リモートワークを導入するか検討するための、材料(データ)集めを目的としています。
期間:2021年8月~2022年1月(半年間)
対象:Trip.com従業員 1,600名
実験参加者が1,600名と言うのが、中国らしい規模ですよね。

リモートワークの支持率は?

まずは、半年間の実験を経て、リモートワークを支持するか否かの声を見てみましょう。

実験開始前から81.2%と高い支持率ですが、実験終了後は更に支持率を伸ばし87.4%に至っています。冒頭でご紹介した「そもそも、リモートワークを中国人スタッフは希望しない?」は、一般的な意見としては該当しないということが早速分かりました。

日本でも同じような調査が多く実施されましたが、リモートワークを支持する声が非常に多く、支持率も85-90%程度で非常に似た結果でした。国民性によるリモートワークへの捉え方に違いは少ないようです。

支持率が高い理由は?

では、次に支持率が高い理由をみていきましょう

「通勤時間が減った」という項目がやはり最も支持された理由ですね。更には「ワークライフバランス」、「幸福度・想像力」と続いていきます。これも、日本で緊急事態宣言中にとった様々なアンケートと酷似した回答です。興味深いのは「離職意志の低下」が第4位となっており、実験前よりも約9%も上がっています。人材の流動性の高い中国労働マーケットで、離職防止は大きな課題のため、とても興味深い結果です。

デメリットは?

リモートワークを支持する声は多いですが、難しかった点もあるようです。

上手く行かなかった点の第1位は「同僚との交流」です。実験前から51.0%と懸念されていましたが、実験後も49.3%と、やはり難しかったようです。
第2位は「社内システム(イントラ)」に関する不安ですが、これは実験前が42.4%に対して、実験後は28.8%と大きく下がっています。想定していたよりも、システムによる仕事への影響が少なかったと読み取れます。しかし、これはTrip.com社のシステムなので参考にはし難いですね。

想像以上のデメリットとして「労働時間の増加」があげられています。実験前は33.6%でしたが、実験後は42.3%と大きく増加しています。中国の場合、終業時間ぴったりで退勤する従業員が多いので、これは意外な結果でした。デスクを片付けて退勤する行動がなくなり、ついついやり過ぎてしまうのは、日本も中国も変わりはないようです。

リモートワークの支持率、その理由、デメリット、ほぼ全ての項目が日本と大きな違いはありませんでした。となると、日本で起きていることが、そのまま当てはまる可能性が高いかもしれません。

採用活動への減点材料に…

日本でリモートワークを推進している理由の1つに、「採用活動への影響」があります。求職者が企業を選ぶとき「減点」材料とされてしまうということです。特に新卒採用の対象となるZ世代は、「働き方の多様性」をどの程度認めているのかは、会社選びの大きな基準の1つです。インターネットにより世界中で同じ情報が閲覧できる環境下となり、住んでいる国・エリアによる価値観の違いが減り、同じ世代間で似たような価値観を持つ傾向が強くなったと言われています。つまり、日本のZ世代と、中国の00后が同じような価値観を有している可能性が高いということです。

在中国の日系企業では必ずと言えるほど「優秀な人材確保」を課題としています。「働き方」の多様性を認め、上手に活用することで、採用活動における長所として活かしたいですね。

Trip.comのリモートワーク

Trip.com社は実験結果を踏まえ、本格的なリモートワーク導入を決めました。そのルールは大きく2つです。

・毎週水曜日と金曜日は、ニーズに応じてリモートワークを実施
・家だけではなく、カフェやリゾートホテルでの就業を認める

「Yes or No」と極論になりがちですが、Trip.com社のルールと同じく、オフィスへの出社とリモートワークを効果的に活用するハイブリッドモデルが実際の運用方法として多くなりそうです。

最期に1つだけ気を付けて欲しいコト

リモートワーク導入にあたり、デジタルツールの整備に注目しがちですが、ピープルマネジメントが上手く機能していない組織が多いです。従業員の働く環境が変わるのだから、当然マネジメント手法も変える点があります。まず、やってみて考えるではなく、事前に十分な準備をしてから導入することをお勧めいたします。

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