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やもり日記 vol.13 前編②

背後から聞こえてきた「あのー。」という声に振り向くと、1人の女性の姿がありました。
彼女こそが、今の私の恋人です。
ツイッターアカウントから私の存在を紐づけた彼女は、違うテーブルにぼんやりといた私に声をかけてくれました。
これが、運命の歯車が回り出した瞬間だと、今では思っています。

初対面のぎくしゃく感を抱えながらも、私達はゆっくりと話を始めました。宇野常寛さんや堀潤さんの活動に興味があることなどの共通項から私達の会話は広がりましたが、なにより彼女は、私と同じく同性愛者でした。

そのときの会話。
恋人「あ、私、当事者です。」
私「あ、そうなんですね。私もです。」

特に2丁目に出会いを求めに行く訳でもない、同性愛者(女性)の知り合いもいない、当時はパートナーもいなかった私にとって、何気なく自然に交わされた会話は、どことなく心が軽くなるものでした。

そして、私達は懇親会の場で、意を決して堀潤さんのもとに話しかけに行きました。堀潤さんは、たどたどしくマイクを手に、私がなんとかトーク中に話したことに際し、開口1番、「ナイスコメント、ありがとう!」と言葉をくださりました。心が広いなー、と思い、嬉しくもありました。人となり、というものが、ジャーナリズムには大切なんだな、と、私が実感した出来事でもありました。

堀潤さんは、とても気さくで、かつ、(お酒が入っていたせいもあったのでしょうか??)明るい方で、イベントの感想や私達の質問にも優しく答えてくださりました。(実は、私がこのイベントに参加した本当の理由の5割は、堀潤さんが登壇されるから、といったミーハー心による理由があったことも記しておきます。)

持て余していた懇親会の時間は、実に楽しく有意義なものへと変化していきました。

そして、帰り道。
私と彼女は風雨の強い渋谷駅までの道を歩きながら、自分達が望む様なセクシャルマイノリティーのコミュニティがないこと、について話をしました。互いに既存のコミュニティには馴染めなく、むしろ排他的な空気やムラ社会、言ってしまえば、レインボーに彩られた世界に違和感を感じていました。なぜ、レインボーに馴染めない人が集ったり、気軽に参加できるコミュニティが存在しないのだろう?、と

意思の疎通というものは不思議なものです。「ないものは、作ろう。」
その日に初めて会った彼女と私は、どちらからともなく、2人でコミュニティ作り、という種まきを始めることを決めたのです。ノウハウも頼れる人も特にいないにも関わらず、なぜか歩み出す気持ちに満ち満ちていました。

渋谷駅に着いた私達は、ツイッターの相互フォローと、2日後に開催される、これまた堀潤さんと恵比寿新聞さん主催の「伝える人になろう講座」で会う約束をして、それぞれの家へ帰りました。
同志としての私達の関係性が、この時生まれました。

まさか、その2ヶ月後に、2人は恋人となり、交際とほぼ同じくして、生活を共にすることになるとは、互いに想像もしていませんでした。

(中編①へ続く。)

#コラム #日記 #ノンフィクション #エッセイ
#LGBT #恋愛 #堀潤

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