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米国マイナーリーグの最低年俸をめぐる裁判

(この記事は2.5分で読めます。約1,500文字)

 2020年10月5日、米国最高裁がマイナーリーグ選手たちによる最低年俸をめぐる集団訴訟の提訴を受理し地方裁判所で争うよう手続を進めた、との報道がありました。本日は選手の年俸とチームの経営について考えていきたいと思います。

(参考記事)
https://www.cbssports.com/mlb/news/supreme-court-clears-way-for-class-action-lawsuit-from-minor-league-players-being-paid-below-minimum-wage/

記事要約

 米国最高裁判所は、最低賃金を下回る年俸しかもらえていないと提訴したマイナーリーグ選手たちの集団訴訟を受理し、地方裁判所で争うよう手続を進めました。アリゾナ州、カリフォルニア州、フロリダ州などのマイナーリーグ選手たちが訴訟に名を連ねているとのことです。低水準の年俸をめぐっては2014年2月に初めてマイナーリーグ選手たちが提訴しており、ほとんどの選手が法定以下の7,500米ドル(約70万円)以下の年俸しかもらえていない状況にあると主張してきました。なお、2020年はコロナ渦で全てのマイナーリーグがシーズン中止に追いやられましたが、メジャーリーグとメジャーリーグ選手会はマイナーリーグ選手に通常通り年俸を払う方向で既に合意しています。

 マイナーリーグ選手たちの年俸に関しては、メジャーリーグがロビー活動を通じて「シーズン期間中の5ヶ月しかプレーしないマイナーリーグ選手たちは、通年雇用を前提に規定されている最低賃金の対象には該当しない」というスタンスを2018年に勝ち取って以来、議論の的になっています。今年の2月には、マイナーリーグ全選手の最低年俸を引上げAAAのレベルでは8,400米ドル(約80万円)にする、と発表されました。ただ、併行してメジャーリーグ球団が傘下に置くマイナーリーグチームの数を減らす計画を進めている、とも言われており、最低年俸引き上げが財政を圧迫してマイナーリーグチームを窮地に陥れる狙いがあるのでは、とも噂されています。メジャーリーグは新たなマイナーリーグ構想を進めており、連動して現在傘下に入っているマイナーリーグチームを外していく方向で動いていくようです。

選手の年俸とチームの経営に関する考察

 日本のプロ野球選手の最低年俸は、1軍選手で約1,500万円、支配下選手で440万円、育成選手で240万円になっています。支配下選手と育成選手はプロ野球球団の2軍の位置づけに該当し、日本のプロ野球球団は1軍・2軍を一貫で保有する形です。一方、いわゆる野球の独立リーグはプロ野球とは異なり、給料制を敷くチーム、野球に対する対価は支給しない代わりに衣食住アルバイト先を提供するチーム、など年俸制とは異なる形態で対価を支払うケースも多種多様にあります。米国では、日本でいう1軍のみをメジャーリーグ球団が保有しマイナーリーグチームは日本でいう独立リーグのチームを提携で確保するケースが多いようです。

 最も収益性の高いメジャーリーグにリソースを集中投下して事業を進めるメジャーリーグ球団、一気通貫して1軍・2軍を一括で経営する日本のプロ野球球団、この2者は固定費である人件費に相当額の割当が可能です。対して、マイナーリーグチームや日本の独立リーグチームは人件費を限りなく削って経営を成立させているともいえます。経営目線でいえば合理的な選択ともいえますが、雇用される選手やスタッフにとっては経済的負担を強いられる形にもなっていて、今回のマイナーリーグ選手達による集団訴訟はそのフラストレーションが表出した形になります。マイナーリーグとはいえ、プロチームだからこそできること、野球選手だからこそできること、を球場の外に探し事業の1つとして創っていくことが一層求められる時代になってきているのかもしれません。

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