Self liner notes #09 Le chemin du retour(かえりみち)
エレキギターはいちばんかっこいい楽器である。
辛うじてピアノを弾くワタクシがとにかく憧れるのはエレキギターである。
憧れと現実は見事に乖離して、自分の曲はピアノの鍵盤を弾きながらいくつも紡がれるのだが、それらをサポートメンバーと共演すると、ギターや弦楽器の特性を生かせてない曲作りをしていることを思い知らされる。ワタクシがかいた譜面にアドバイスと修正が入るのは、もう最近となっては心地よい鈍痛であり、指摘してもらえる感謝しかない。むしろだからこそ、ずーっと憧れ続けていられる。
何が云いたいかというと「Le chemin du retour(かえりみち)」は、ワタクシのギターへの憧憬を凝縮して作った。ピアノ弾き語りシンガーソングライターへの稚拙な抵抗である。ピアノを用いず、でもギターは弾けず、文明の利器のDTM、Logic Proに託す。MIDIキーボードも接続していないので、PCのキーボードで頭の中のギターサウンドをポチポチと描いていった。わりと黒っぽいライヴハウスで、自分の黒いレスポールをかき鳴らす妄想をしながらポチポチキーボードを叩いた。この無様なアプローチにして、野望に落書き並みの輪郭を刻みこむことができている。やらないよりいいのだ。
ちょっと古臭くて、洗練されていない1曲が仕上がって、それらは自分では褒め言葉。ちょうどCOVID-19禍の最初の夏くらいに出来上がった。
その頃、ライヴも中止になったり配信を取り入れ始めたり余儀ない変化が多く、数少ない友人のひとりが帰郷する出来事があった。彼女がそれを片道切符と云い表したところに並ならぬ覚悟を受け取り、でも、その個人的な背景とは関係なく「片道切符」のモチーフだけが一人歩きして詞となった。「4階」は団地の404号室に住んでいたことから、「砂利路」は五輪真弓の「恋人よ」の2番から引用した。そういう遊びが一連になった。
デモトラックをそれなりに作り込んでいたので、めちゃくちゃなドラムを、これもポチポチ叩いて、音源化してしまった。アルバムの中で抜きん出て幼稚だけど、今の自分らしくていい。サビで、博文さんが地殻下マントル辺りから囁くような掛け合いは悪くない。
レコ発ライヴは
2023/06/10(土)
open 18:30 / start 19:00
コチラ→ emma mizuno LIVE「Amorphous 404」
配信アリます。
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