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「もっと」は要注意

意識し過ぎるとかえってできなくなる。
寝ようとしたら
かえって目がさえて眠れなくなった。
力を抜こうとしたら
逆に力んでしまった。

普段は無意識にやっている動きを、
意識して動かそうとすると
うまくできないってよくありますね。

これと同じで試合の時には
結果を出すために
もっと頑張ろう
もっと速く
もっと上手く
もっと強く
と思いがちです。

この「もっと」が問題なんです。

「もっと」と強く意識的に思うことで
練習の時には無意識にやっていた
(つまり自動化された)動きが
阻害されてしまいます。

これは無意識にしている動きと
意識して動かすのとでは
脳の使っている部分が違うからです。

実は日常のほとんどの動作は
無意識にできるように自動化されています。
歩く時にどう足を動かすか考えませんよね?
これは、「潜在記憶」(手続き記憶)を
使っています。
例えば自転車に一旦乗れるようになったら
何年乗らなくても乗り方を忘れません。

子供に“あやとり”を教えた時
やり方ははっきりと覚えているのですが
どうするか言葉で説明できず
一緒に順にやってみせるしかありませんでした。

繰り返し動作を行って獲得した技能は
からだが覚えた”状態なので
言語化が難しいのです。

一方で「もっと〇〇しよう」と
意識的に思うことは
口には出さなくても言語化しているので
顕在記憶」(宣言的記憶)を
使うことになります。

自分では違う動きをしているつもりはないし、
力んでいるつもりもないけれども
つい、もっと頑張らなきゃと思うと
力が入ってしまいます。

子供が保育園の運動会で
練習ではできていたのに
本番で跳び箱を飛べなかった時
落ち込んで言うには
『かっこいいところを見せたかった』
こんな小さい子でも
そんなことを考えるんだと
驚きました。

だから、アスリートが試合で
「もっと」と思うのは当然ですね。
でも、練習ではできることが
試合でできない理由の一つは
この「もっと」かもしれません。