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19.01.19 Pyrénées Talk Event@SUNDAY フードメニュー

レシピってほどでもないけど簡単に。ビバークレーションアレンジは全然ヴィーガンじゃないので注意!(笑)小噺を添えて。

《ビバークレーションアレンジ2種》
◎エシャロットおじさんのポタージュ 

 前半、あれは何ていう町だったかなぁ。山から久しぶりに町に下りてきた。まだまだ歩き初めて1週間もたたないくらいで食糧計画がよくわかっていなかった。あまり買い溜めをしていなかったので、石造りの避難小屋のようなところで一夜を過ごして、町に下りるまではミックスナッツが20粒ほどしかなかった。
 そんな中で下りてきた町からしばらく、農地を繋いで町から町へ歩くようなコースに。2つ目の町の小さな商店で買い物をしていたら、店の前でおなじように食料を買って仕訳をしているおじさんがひとり。
 2人で向かい合って、木のテーブルの上でパッキング。言葉はよくわからないけど、どうやらフランス人でGR10をスルーハイクしているという。スルーハイカーはすごくめずらしくて、しかもわたしと逆方向から歩いているので、おじさんはもう殆ど終盤だ。

「ここで最後の補給にするんだ。あと1週間をこの食料で歩くんだよ」

大きなトマトに生のニンニク、ズッキーニみたいなきゅうりを3本、バケットをたぶん6本くらい。粉末スープにサラミ、チーズ。にんにくをおもむろにわしづかみ、私にこぶしを差し出す。

「これ、あげるよ。キミはこれから長いだろう?スタミナをつけないと」

いやいや、私はこの旅で調理しないから。と言ってこぶしを押して戻す。ごめんね、でもありがとう!

「じゃあこれでどうだい」

にんにくを雑に放って、今度は何だと思ったら小さな紫色の丸いものを5つわたしに渡してきた。

「これは何?生で食べられるの?」

「そうだよ。きっとキミの力になってくれる。踏破を願っているよ」

ギュッとハグして別れた。そこから2週間、日に日にバックパックの底へ移動していき、すっかりその存在を忘れていた。歩き疲れてちょっぴり疲弊していたある日、キッチンのある静かなGiteでバックパックを洗おうとガサッっと逆さにした時、足元にコロンと転がって思い出した。

そうだ、わたしの力になってくれるやつだ。
おじさんの優しい笑顔が脳裏に浮かぶ。

「これは何て言う野菜なの?」

「魔法のエシャロットだよ」

材料:ビバークレーション(ポルチーニクリーム)、紫玉ねぎ、スライスチーズ、コーンポタージュスープの粉末、コーン缶、コショウ
1.ビバークレーションとスープ粉末を入れてお湯を注ぐ(お湯多め)
2.熱いうちにチーズを入れて混ぜる
3.コーンと小さく刻んだ紫玉ねぎを入れて混ぜる
4.コショウで味を調える

◎四つ星キャンプ場スペシャル

綺麗な湖畔でキャンプをしたい。
ピレネーの写真を眺めて胸を躍らせていた日本での準備中、ずっと考えていたことだ。日本では見られないような壮大な景色の中で、青く透き通った湖畔でのんびりキャンプ。実に外国っぽい。いままでトレイルランニングの大会でヨーロッパアルプスには行っていたけれど、苦しみながら通過した山々。楽しそうにキャンプをするハイカーを見かけては、あんな風にのんびりしたいなぁ、とずっと思っていたことを叶える時が来たんだ。

だけど神様はちょっといじわるだ。綺麗な湖畔に着いてもお昼で、夜遅くまで歩く予定のわたしは、踏破計画を考えるとそこで立ち止まるわけにはいかない。あるいは夕立でテントどころじゃなかったり、牛が多すぎてさすがにウンチまみれすぎたり。キャンピングカーばかりでテントを張っている人などいなくて騒がしくて泣く泣く通り過ぎたり。いくつもの美しい湖を通りながらも200km歩いても300km歩いても湖畔キャンプは叶わなかった。

「また今日も、か・・・」

湖畔キャンプをしたい一心で予定よりも長く歩いて有名な湖に下りてきたら、案の定フランス国内の観光客だらけで、アンテナや自転車を積んだ馬鹿でかいキャンピングカーや高級車が列をなし、お人形さんのような子供達が走り回る様子を、オシャレな夫婦がにっこり笑って見ている。

こんなところで泥だらけで臭いわたしが小さすぎるテントを張るなんて。さすがに居心地が悪い。のんびり優雅な湖畔キャンプは今日も叶わなかった。地図を広げて、今日の宿を考える。

4km歩いた先にキャンプ場があった。
調べてみると、「四つ星キャンプ場」らしい。四つ星って。キャンプ場で四つ星って。これでも一応アウトドアライター。おっし、偵察に行ってやろうじゃないか。四つ星キャンプ場とやらに泊まってやろうじゃないか。

キャンプ場には、高級レストラン、バー、巨大人間チェス遊び、ライブステージ、キャビン、コテージ、シャワー、洗濯機、食洗機、ドライヤーのある洗面所、各サイトには地面から電源コンセントが生えていた。キャンプ場内の売店に入ると、まるで高級スーパーの品ぞろえだった。作りたてのチーズから生みたての卵まであった。

だだっぴろいサイトを1区画与えられ、ビールを片手に高級ポテチをむさぼりながらテントを立てた。それも2分もあれば終了。これが我が家だ。

小さい我が家の前の広すぎる草っ原に寝っ転がって、とりあえず適当に買ったものをぜんぶぶち込んだビバークレーションをかっこんだ。

「ぜいたくだなぁ」

夜中に目が覚めてトイレに出ると、四つ星キャンプ場の空の上には無数の星がこぼれんばかりに光り輝いていた。

材料:ビバークレーショントマトキック、卵黄、プチトマト赤と黄、サラミ、チーズ、ポテチ
1.ビバークレーションを作る
2.サラミ、チーズ、2〜4当分にしたプチトマト、砕いたポテチを入れて混ぜる
3.生の卵黄を入れる
4.細かく砕いたポテチをふりかける

《町に下りた時の栄養補給》

山の中ではほとんど野菜を食べることができず、Giteの食事も高くて手持ちのバケットなどを食べていた。山から下りてもなにもない村ばかりで、日焼けした肌は荒れがち、舌がただれたりもした。

大きなスキーリゾートに下りた時の楽しみはスーパーだった。レストランなんかじゃなくていい。同じだけのお金があればスーパーでビールやフルーツ、たくさんのサラダを買うことができた。パックのサラダコーナーに走り、選ぶのはいつもこの2つだった。

◎キャロットラペ

材料:にんじん、レーズン、にんにく、塩コショウ、レモン汁、砂糖(ほんとはここにビネガー)

1.にんじんとレーズンにレモン汁とにんにく少しを入れてしんなりするまで置いておく(ジップロックなどに入れて少し揉むといい)
2.残りの調味料を味見しながら足す

◎キヌアサラダ

材料:キヌア、きゅうり、パプリカ赤、パプリカ黄、プチトマト、紫玉ねぎ、コンソメ、塩コショウ、オリーブオイル、レモン汁、あればクミン

1.キヌアをコンソメで炊く
2.ほかの材料を小さく刻む
3.炊いたキヌアと2の材料を混ぜて調味料で味付け


《スーパーで買ってたもの》

長旅でとりあえずお金がなかったから(使えなかったから)、コスパ優先で買っていたものの中から2つ。一番食べていたのはTwixというチョコバーなんだけどそれは日本で安く手に入らなくて断念。amazonにあるけど超高いんだもの。

◎チョコ巻きクレープ

フランスのスーパーにだいたいある。ヌテラみたいなチョコペーストを塗って巻いたものが個包装されていて賞味期限も長め(怖)なので山歩きに便利。冷やしても旨い。日本ではコストコで買える。

◎しょうもないフルーツケーキ

しょうもないって食べ物に対して使ったら怒られそうだけど、愛情を込めてそう呼びたい。ものすごい美味しいわけでも、まずいわけでもないんだけど、そこそこ口の中がパサパサするパウンドケーキが1本まるっと箱に入って1.9~2€くらいで売っていて、カロリーコスパがいいので、トランスピレネーの参加者がよく買っていたという。わたしもそれに倣って買っていた。日本ではコストコで買ったんだけど、向こうで食べたものよりも上品だった。もっと、なんていうかこう、安っぽい味が良かったんだよなぁ。旅の想い出の味ってそういうのあるよね。

準備やクッキングをニコニコ手伝ってくれたニノが焚火缶にたっぷり入ったキヌアサラダを抱え込んで味見するの図。

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