初めての大ゲンカ
彼とはずっと仲良くしてきたのに、新年早々、大きなケンカをした。(内容は個人的なケンカの話です。長くなったので、飛ばし読みでもななめ読みでも、ご自由に!)
年明けに時間を合わせて彼の部屋で会ってた時に、私が彼に無神経なことを言ってしまった。彼が体調不良でもともと半日の仕事を休みにしたいと弱音をはいていたときに「何時間かで終わることだから、やってみたら」「帰ったら休めばいいんだから」「私も休みたい時はある、主婦は休みがないんだよ」と長めにいろいろと言ってしまった。
私はそこまでひどいことを言った覚えはなかったけれど、彼はその言葉だけではないけど、それで完全に怒ってしまったらしい(後から聞いてわかった)。その後も話は続けたけど、なんだか様子がおかしい。
帰るときは駅まで送ってくれるか、風邪などの事情があるときも玄関までは送ってくれるのに、座ったままだった。帰ってから「家に着いたよ」とLINEしても返事がない。さすがに怒ってることはもうわかっていた。
私が「謝りたい」とLINEしても「話したくない 話にならない」という返事。こちらから返事をしないうちに「もう終わり さよなら」とも入ってきた。私は「話にならないのはそっちだよ」と思いながらも、その前には「俺が調子悪いって言ってるのに」というLINEがあったから「あー本当は洒落にならないぐらい体調悪いのにそれを隠してたんだ」とようやくわかってきた。
幸いなことに翌日は私以外の家族が出かけていて、行こうと思えばまた彼の部屋に行けた。多少は迷ったけど、とにかく部屋に行く。
チャイムを鳴らしたら出ない。5回ぐらいは時間を置いて鳴らしたけど、あきらめて駅前に戻る。
彼とは行ったことがない駅前のスタバに入り、【ほうじ茶、クラシックティーラテ、トールサイズ、バニラシロップに変更】を飲んだ。
この頼み方は、パートの職場で大学生の女の子に教えてもらった。何回か一緒に復唱して覚えた長い名前。甘すぎなくて、味には文句なし。でも、気持ちはかなしみでいっぱい。
20分ぐらい寒風吹きすさぶテラス席で時間をつぶして、もう一度彼の部屋まで歩いた。
今度は3回ほどチャイムを鳴らしたら出てくれた。どうやらさっきは出かけてたみたい。
でも、かなり怒ってた。この時に教えてもらってようやくはっきり冒頭に書いた怒りの原因を知ることができた。彼が言うには「何時間かぐらい働けばいいのに」と言ったときに「私も疲れてるのに」という八つ当たりが入っているように感じたとのこと。
「きのう疲れてなかった?」と聞かれて「確かに年末年始はやること多くて疲れてた」と答える。それなら「今日は疲れてるって言って断ってくれればいい」と彼は言う。でも「そこまで疲れていたわけじゃないし、あのぐらいの態度は私は家族間ではやってるから八つ当たりとも思ってなかった」と伝えてみる。
彼は「俺は家族がいないから、人と会うときはちゃんとしようと思うから、疲れてる姿とかも見せられない。エマが寝れば?って言っても寝ないのもそういうこと」と言ってた。
私にはどう見ても、昨日の彼はそこまで体調が悪そうに見えなかった。彼が「俺は言葉じゃなくて態度で表す方」と言っていたことも合わさって、「かなり疲れてる」と彼は言ってたのに、そこまでの不調じゃないんだと思ってしまった。
彼の事情はよくわかったから、「ごめんね」「ごめんなさい」と謝った。LINEでは、謝ることもさせないという勢いだった彼も「元気そうにすると私はわからない」と伝えたら、謝ってくれた。
「私と会うときはもっとだらけてていいのに」と話すと「それはできるかわからない、ずっとこうやって生きてきたから」となかなか頑固。
私からは「私も、この人はだいぶやせ我慢する人なんだってわかったから、これからこういうことはなくなってくるとは思うよ」と伝えた。
このぐらいになると、彼も軟化してきて、私も気持ちを伝えやすくなった。たくさん話したけど、一番言いたかったことは、私の覚悟について。
「前にも言ったと思うけど、私は本当は人間関係を広げたくなくて、今いる友達と家族を大切にしていきたいと思ってたけど、LINEをするようになって2人で会うようになった頃から、・・さんのこともその中に入れて考えてるんだよ(いまだに名字にさんづけ)」
「私は優しくされていい気分になりたくて今の関係になったんじゃない、・・さんのこと支えたいと思ってるんだよ」
「それなのに簡単に終わりにしないでほしい。私は言い方失敗したかもしれないけど、失敗したらいけないの? 少しもまちがったこと言ったらいけないというのは難しすぎる。修正していけばいいと思ってたよ」
彼は、私が彼のことを大切にしたい人の中に入れてると言ったことは覚えてくれていた。あらためて、その数が両手で数えられるぐらいかな、と言ったら、彼は、俺はそんなにいない、ひとりかもってつぶやいてた。
そのひとりというのは、聞きもしなかったけど、彼の事情からすると私のことだと思う。それなのに、簡単に終わりにしてしまおうとするなんて。
とにかく私とはそんなに簡単に終わりにしようとしないで、修正していけばいいことだから、と伝えた。重ねて「いきなり最大限の怒りじゃなくて、小出しにしてほしい。八つ当たりだと感じたらその時に言ってくればいいのに」とも頼んだ。
彼は「だって泣くじゃん」と言う。たしかに私はずっと泣いていた。それに対しては、少し怒ったぐらいでは泣かないし、嫌いにもならない、と答えた。
そして「もう泣きやんだよ。私は傷つきたくないと思ってないし、泣くようなことがあってもいいと思ってる。一対一でつきあって、ずっと優しくしあうなんて無理」と言った。
彼は「でも、これまで、一度も言い合いもなくやってこれたのはおたがい気をつけてたからでしょ。俺がエマに一度でも優しくなかったことある?」と聞かれた。「俺は本当は一度も言い合いもなくやっていきたかった 怒るのが嫌いだから」と言ってた。
思い返してみて一度も優しくなかったことがなくて、首を振る。彼は「ずっとどんな時も、疲れてる時も不安がある時も、優しくしてたんだよ」って言ってた。
私は「優しくされたから好きになったんじゃない。今日だって、はじめに“なんで来たんだよ”って言われたけど、怒ってるところを見に来たんだよ」と言った。
怒ってるところを見に来た、はちょっとうまいこと言ってしまったけれど、怒っているのを承知で来たのは本当だった。
続けて「怒ってても、ぜんぜん怖くないよ。私今まで、もっとひどいこといっぱいあったから」と伝えた。
彼は怒っていても、なぜ怒ったかを順序立てて説明してて、私のことをけなすこともなく、私が言ったことにも否定とか拒否であっても、なぜできないか理由もつけて答えてくれていた。夫婦ゲンカを繰り返してきた私にはまったく怖くなかった。
「俺は何を言ったら傷つくかはわかっててそれは避けてるから」と彼は言った。私は、怖くもないのに自分がなんで泣いたかよくわかってなかったけれど、怒っていてもまだ優しいところに泣けたのかもしれない。
あとは話が通じなくなってきたことはけっこう悲しかった。せっかく話ができる人ができたのに。少しずつ怒ってない彼に戻ってきて、いつのまにか私の涙もとまってた。
彼はたまに「俺が怒ったらエマのことは泣かせちゃうし、口ゲンカは強いと思う。だからケンカしたくない」って言ってた。
でも、初めてのケンカは勝ち負けではなくて、私が思った通りに、仲直りができた。彼も聞く耳は持ってくれてたし。ずっと玄関で話していたけれど「エマも疲れたでしょ」と部屋に入れてくれて、布団に入れてくれ、彼も隣に来て並んで横になった。
本当に疲れたな、と彼と足と腕を重ねて目を閉じて横たわっていたら、
「ほっとしたからかもしれないけど、涙がとまらない」と彼が言う。
見ると涙が出てて、こんな時にも、なんで泣いたか理由を考えていることが彼らしくて、涙をふいてあげた。
その後は、私が帰る時間までたくさんキスして、またすぐに会う約束をした。とにかく仲直りができて、よかった。