【CEOインタビュー#2】進化を続ける革命的クラウドサービス EMLinkが業界にもたらす価値とは
2023年4月のリリース以降、全国各地で導入するプラント・工場が増え続けているEMLink。アセットマネジメントの視点を取り入れた新発想のクラウドサービスとして注目が高まっているが、製造業界にとってEMLinkはどのような価値をもたらす存在なのか。近々発表予定の注目の新機能を含め、EMLinkの機能とその効果について、生みの親である株式会社設備保全総合研究所CEO相原章吾に話を聞いた。
データの背景まで可視化。連携による一元管理でアセットマネジメントを実現
――まずはEMLinkの基本機能について教えてください。
相原 EMLinkの基本機能は、“データを一元的に蓄積して管理することができる”というものです。多くの工場では保全履歴や点検結果などのデータを紙やExcelで管理していますが、設備ごとにフォーマットやフォルダがバラバラなため情報を探すだけでも苦労したり、データを保持している人が不在で欲しいときに情報を確認できなかったりと、紙やExcelでは情報を管理しきれないという問題が起きています。EMLinkはそうしたバラバラになっていたデータを1つのシステムで一元的に管理し、データを総合的に可視化できるツールなのです。EMLinkはこれらの機能によってアセットマネジメントを実現することを目標に作られています。
アセットマネジメントとは、「最適な設備投資・運用に向けた意思決定のインサイトを得る」ということです。EMLinkはアセットマネジメントの視点に基づき、現在の設備の状況を可視化するとともに設備ライフサイクルを鑑みた設備・工程・工場のTCO(トータルコストオブオーナーシップ)を示し、最適化に向けたレバーの在りかやその感度を理解できるよう作られています。
――EMLinkには設備台帳や保全計画など様々な機能がありますが、1番ポイントとなる機能は何でしょうか?
相原 特定の機能がポイントになるというより、個々の機能間のデータがしっかり連携されるという点がEMLinkの1番のポイントです。全ての保全履歴と計画が1つひとつの設備と紐づいていることで、設備に関する情報の表面的なデータだけでなくその背景まで知ることができます。例えば「2024年に100万円かけて設備Aの工事を行なった」という保全履歴があるとします。ただ保全履歴が時系列で並んでいるだけなら文字通り「2024年に100万円かけて工事を行なった」という情報しか見えません。しかしその情報の裏には「早期に予算をかけて工事を行うことで故障リスクを下げた」という背景が隠れているかもしれないのです。単調に並べられた情報だけでは「なぜ2024年なのか」「なぜ100万円なのか」「今後どのような点検・保守をすれば工事の効果を最大限に享受できるのか」といった背景までは読み取れません。
その点EMLinkなら保全以外のデータまで連携して総合的に可視化できるため、そのような背景情報まで芋づる式に読み取ることができるのです。これにより、忘れたり見落としてしまったりしがちな情報まで、すぐに気付けるようになっています。
――EMLinkを導入することで得られる具体的な効果を教えてください。
相原 EMLinkを導入することで得られる効果は、大きく分けると以下の3つです。1つめは業務の効率化です。データ検索が非常に楽になるため、それまで情報の探索にかけていた時間が不要になります。また、データ入力も簡単なので効率的に情報を保存することができます。
2つめは意思決定の迅速化です。データを総合的に可視化することで情報が見やすくなり、タイムリーな情報共有も簡単にできるため、社内でのコミュニケーションが円滑になります。これにより意思決定までにかかっていた確認作業を大幅に省くことができ、迅速な意思決定が可能となります。
3つめはコスト削減です。EMLinkにはこれまで保全としてどのような活動を行い、どれだけコストがかかってきたのかというデータを詳細に入力できる機能も備わっています。詳細なデータを分かりやすく確認できるため、どこにコスト削減の余地があるのかを見極め、コスト削減を見据えた最適な保全計画を立てることができるのです。
これらの効果を導入いただいた企業の方々も実際感じていただいているようで、「業務が効率化した」「管理が楽になった」というお声を多くいただいています。
――すでに膨大な量のデータを保持する工場にとって、データを別のシステムに移行させるだけでも大きな負担になるように思います。EMLinkへのデータ移行はどのように行うのでしょうか?
相原 お客様ご自身でデータをご入力いただくこともできますが、EMLではPDFやExcelなどの既存データをEMLinkに移行させる『初期データ入力代行』も行っています。有償のサービスではありますが、データ移行の手間がほとんどかからないため多くの企業様にご利用いただいています。
型破りな価格設定で工場運営に革命を起こす新機能
――8月リリース予定の新機能『マルチ・ファクトリーマネジメント』とはどのような機能ですか?
相原 『マルチ・ファクトリーマネジメント』は、一言で言うと複数の工場を束ねて管理できる機能です。これまでは工場ごとの情報しか一元管理できませんでしたが、この機能を使えば同じ企業内の複数工場の情報を横並びで連携し、比較ができるようになります。つまり、工場単位ではなく会社全体のアセットマネジメントが可能になるのです。
この機能の魅力は単に横並びで情報を見られることではなく、各工場のデータを同じデータ構造でまとめあげることによって企業全体の生産活動を最大化できる点にあります。例えば設備タイプごとの突発対応の発生率を比較すれば、発生頻度の低い工場の対策を他工場に共有することができます。資材データを共有すれば、予備品データの最適な持ち方を横展開したり、過剰な資材を融通したりすることが可能になります。このように、横並びで管理・比較することで工場ごとの課題や特色が見えるようになるため、会社全体で業務改善に取り組めるのです。
また、これまで工場内だけでサイロ化されて解析できなかったデータが企業内の共通データとして解き放たれれば、人的リソース活用の最適化も目指せます。これまで工場に直接赴いてデータを解析しなければ進められなかった投資戦略や保全計画の策定も、『マルチ・ファクトリーマネジメント』を利用すればどこからでも対応できるのです。そうすれば専門スキルを持つ人材がわざわざ出張や人事異動をする必要がなくなり、より企業内で幅広く活躍できるようになります。このように部署や地域をまたいで『マルチ・ファクトリーマネジメント』を使えば、EMLinkが保全活動の枠を超え、企業の生産活動にまで貢献できるようになると考えています。
――もうひとつの新機能『インテリジェントコネクト』についても教えてください。
相原 『インテリジェントコネクト』は、設備の配置図面や製造プロセスのフロー図面など、図面に描かれた設備をクリックするだけでその設備のデータを見ることができる、デジタルツインのような機能です。実際の工場の環境をEMLink内に2次元で再現できるため、設備番号や設備名称から検索する必要もなく、非常に直感的で簡単にデータ入力できるようになります。
『インテリジェントコネクト』はお客様の声を基に生まれた機能です。保全担当の方は設備番号を把握している方も多いのですが、製造担当の方はすべての設備番号を把握しているわけではないため、設備の検索や入力に手こずるというお声をいただいていました。製造部から保全部へすべての入力を依頼することもできますが、それではコミュニケーションコストが発生しますし、全社一丸となってのDX推進が難しくなります。そこで誰でも簡単に入力できるよう開発されたのが『インテリジェントコネクト』です。『インテリジェントコネクト』で直感的に操作できるようになれば、設備番号を把握していない方でも簡単に保全情報を入力できるようになります。保全と製造がシームレスに設備を管理できるようになるため、利便性だけでなく設備の稼働率や生産性の向上も期待できます。
――どちらもプラント・工場にとって画期的なツールになりそうですね。
相原 工場のデータは1工場だけでも非常に数量も種類も多く、工場ごとに独自の管理を行いがちで極めてサイロ化しやすいものです。他工場と連携させたいと思ってもシステムが複雑になり、億円単位の高額投資をしなければシステム導入ができず、導入を諦めてしまう企業も少なくありません。その点、EMLinkは1工場あたり月々9.8万円※から導入できますし、『マルチ・ファクトリーマネジメント』にいたっては無料です。これだけの価格で会社全体でのアセットマネジメントを実現できるのは、予算的にも人的にもDX投資が大きなハードルになる企業様にとって革命的だと考えています。
※年間一括払いの場合。月額契約や、初期データ入力代行を利用する場合は別途料金がかかります。
プラント・工場を支える”産業のプラットフォーム”を目指して
――人手不足や物価高などが進み、製造業の世界もこれから様々な変化が求められていくことが予想されます。その中でEMLinkはどのような役割を担う存在になっていくとお考えですか?
相原 まずはプラント・工場のアセットマネジメントの実現です。EMLinkは「将来どうなっていきそうか」という未来を見せたり選択肢を提示したりすることでアセットマネジメントを実現し、安心して工場を操業していくにあたっての戦略的パートナーのような役割が求められていくと思います。
2つめは産業のプラットフォーム的役割です。我々は工場を外側から支える立場として全国各地の工場を見ていますが、そんな我々だからこそ気付ける共通の課題があると感じています。そうした課題を抱える工場に対し、世の中の良質なソリューションやリソースをタイムリーに繋げていくインフラのような存在にEMLinkを成長させていきたいと考えています。
――これから新機能も発表されますが、さらにその先に向けて計画していることはありますか?
相原 今後は積極的にAIを活用した機能開発を進めていきます。この秋にはデータの自動取得や蓄積データの解析を行う新機能の発表を計画していますが、この機能にAIを取り入れることも検討中です。現在のEMLinkは簡潔に言えば「設備マネジメントに関するデータ蓄積・意思決定ツール」という位置付けですが、こうした機能が整っていけば、今後は「工場・プラント操業の戦略策定システム」へと進化していくと考えています。また、産業のプラットフォーム化の実現には異なる業種・業界の協力も必要なため、同じ方向を向いて協力していける企業との技術連携や事業連携も進めています。