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350社以上のインタビュー(NEA):スタートアップのデザインの未来
スタートアップが成功を決める要素として、デザインは大きな役割を担うと言われています。プロダクト・マーケット・フィット(製品が市場にフィットしている状態)を第1使命とするスタートアップにとって、UXデザイン、プロダクトデザイン、サービスデザインなど、デザイナーは、スタートアップに最も重要であるプロダクトを成功させる上で、絶対欠かしてはならないポジションだと考えられます。より成熟して成功しているスタートアップほど、デザインもより活用されているという報告があります(下図)。
NEA Future of Design, 2016
一方、目まぐるしい速度で移り変わる、スタートアップのトレンドにおいて、デザインに求められることも変わってきます。未来のスタートアップに求められるデザインを把握し、対応していくことがスタートアップの成功だったり、デザイナーのキャリア構築にとっても大切な事だと思います。
NEAという米国のベンチャーキャピタルが2016年、2017年に350社以上のスタートアップにヒアリングした「スタートアップに求められるデザインの未来」についての調査レポートがあります。このレポートから3つのインサイトについて紹介したいと思います。
1.右脳型デザイナーは左脳型のビジネスリテラシーを
95%のスタートアップがデザインはビジネスの上流に携わって欲しいと回答をしています。
重要なデザインの役割(回答率)
スタートアップのなかで期待されるデザイナーの役割として、プロダクトロードマップ戦略(91%)、経営戦略(84%)、ユーザーの維持とエンゲージメントの計測(78%)が上位3つです。
"Ultimately everything a design team does has consequences (both good and bad) for a business. The more you know about the business and its goals / intentions, the better a design team is positioned to deliver good experiences and results for the business." - Time Riley, Senior Director of Digital Experience @ Warby Parker
究極的にはデザインチームが行なっている活動全てが、良くも悪くも、ビジネスにインパクトを与えます。そのため、デザイナーがビジネスをことを理解すればするほど、ユーザーへの良い体験を通じてビジネスへ貢献することができると言っています。
スタートアップではデザイナーは直接的にビジネス(経営)に携わって欲しいという期待がありり、ビジネスパーソンはデザインの理解が求められていますが、反対に、デザイナーにはビジネスのことを理解して、積極的に携わることが求められています。
2.デザイナーはプロダクトマネージャーの役割を
スタートアップのステージ毎に必要としているデザイナーポジションについて、ヒアリングした結果がこちらです。
ステージ毎に求めるデザイナーのポジション
まず、どのステージに置いてもプロダクトデザイナーを欲しがっています。面白いのは、ミドルステージ以降、UXリサーチャーが必要とされており、サービス改善のためにインサイトを拾ってくるデザイナーが必要だと考えられます。
"Design is a peer organization to Product Management and Engineering. One representative from each groups is the triad responsible for road-mapping" - Head of Design @ Large B2BC company
デザインに求められるのは独立した機能ではなく、プロダクトマネージャーやエンジニアリングチームと共同して、プロダクトビジョン、ロードマップを描いたり、プロトタイプの制作とユーザーの対話を通じたユーザー体験をデザインしていくことです。
大企業の分割された縦割りの組織のような働き方ではなく、より広くプロダクト全体の質をデザインしていくことで、ビジネスに貢献することが求められます。次のようなアドバイスが掲載されていました。
・全ての意思決定をドキュメントする
・エンジニア・プロダクトマネージャーが「一緒に」座る
・早めにエンジニアをデザイナーとともにアサインする
・最低限のエンジニアリング知識を持つ
・Zeplin(デザイナーとエンジニアのコラボツール)などを使いこなす
・横のつながりを上手く設計する
また、スタートアップにおけるデザイナーの給料は上がり続けています(少なくとも、今回の調査対象であった米国、欧州、アジアのスタートアップ)
ジュニアのプロダクトデザイナーでも、アーリーステージで平均年収770万後期のデザイントップになると、平均2,000万と報告されており、デザイナーに対する期待が伺えます。
3.数年後に必要とされるデザイナーのスキル
次の数年後にデザイナーが学ぶべき最も重要なスキルは?という問いに対して、「マネジメント」と「ビジネススキル」という答えが多くありました。
数年後に欲しいデザイナーのスキル
上述の通り、プロダクト全体を担うことができるデザイナーが求められていることから、ビジネスとマネジメントに対する理解、スキルが必要とされていることがわかります。
デザイナーが今後活躍していくフィールドは?という質問に対しては、
未来のデザインが活躍する領域
テクノロジーのトレンドであるAIやMachine Learningが1番で、企業向けのソフトウェア、金融サービス、IoTと続きます。
そして、これら新しい領域でデザイナーが活躍するために必要なスキルはという問いに対しては、
未来のデザインスキル
ライティング(会話のデザイン、トーン、スクリプト)、AIやMachine Learningの原理原則、データサイエンスと続きます。
ライティングについては、デジタルでの双方向コミュニケーションをデザインすることができるスキルが、AIなどのテクノロジーの発展に伴い、求められてくる(いる)と考えられます。イメージとしてはチャットボットのようなプロダクト、声を使ったサービスなど、新しく出てくるサービスを想定していると考えられます。
まとめると、次のようなインサイトがありました。
1. デザイナーが活躍する領域は広がり続ける...
ービジネスの理解、プロダクトロードマップ戦略、エンジニアリングチームとの連携=プロダクトマネージャーへ
2.デザイナーが学び、習得すべき事項は変わり続ける...
ー新しいテクノロジートレンド(AIや機械学習)は新しいタイプのプロダクトが求められ、それに伴い、デザイナーの習得する項目は変わり続ける。
3. デザイナーへのニーズは増え続ける...
ーアーリーのスタートアップでもデザイナーの給料は増え続け、また、新しいトレンドに対応できるデザイナーも限られている。
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スタートアップに求められるデザインあるいはプロダクトに求められる事が目まぐるしく変化するなかで、ボクシングではなく、K-1のような総合格闘技に必要なサバイバル能力が求められていると感じます。
Photo at Otaniemi, Espoo, Finland
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