ビジネスモデルデザインを始める最初にオススメのHBR記事まとめと雑感
ビジネスモデルデザインの基礎知識について、ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)のメジャーな文献を参照し、意見を添えてまとめます。ビジネスモデルについて書かれたものの中でも、選りすぐりの記事を持ってきていますので、興味がある方は、原文を読んでみてください。
1.ビジネスモデルが重要な理由(WHY)
Why Business Models Matter by Joan Magretta FROM THE MAY 2002
この記事では、次のようなポイントについて書かれています。
・ビジネスモデルは、ビジネス全体のストーリーであること
ー「あなたのお客さんは誰?」、「あなたが提供する価値は何?」、「どうやって収益をどうやってあげるの?」のような質問に答えることができる必要があること。
・成功しているビジネスの裏にあるストーリーを常に考える癖を持つこと
ー例えば、トラベラーズチェックや、クレジットカード誕生の裏にあるのは、創業者が海外旅行でお札がビショ濡れになったり、盗まれた経験があったこと。ダイレクトマーケティングが誕生した裏には、当時の学生が本の割引クーポンを購入していたことを知り、無料でクーポンブックを作り、広告費を店からもらう仕組みを思いついたことがあった。
・ビジネスモデルのストーリーを数字に落としてテストすること
ー顧客の価格に対する受容性など、様々なストーリーの要素はあくまでも、仮説であるため、テストして数字で計測することの重要性が語られています。例として、ディズニーランドの初期の価格設定が間違っていたことが挙げられていました。
・2つのクリティカルなテスト(ストーリーテストと数字テスト)
ーストーリーが上手く行かないか、数字(利益xコスト)が上手くいかないのかのどちらが問題だと言っています。ストーリー側では顧客にとってのライバルとの強固な信頼関係で、ブランドを築くことができなったり、数字の面では、想定している数量や価格設定が受け入れられないことなど、色んな例が書かれています。
"なぜビジネスモデルが重要なのか"というタイトルに対して、直接答えていないようにも思えますが、この記事では、ビジネスモデルとは何なのか、戦略とビジネスモデルの違い、ビジネスモデルを検証することの大切さなどが網羅的にまとめられています。じっくり読むことでビジネスモデルへの理解が深まります。
2.ビジネスモデルとは何か(WHAT)
What Is a Business Model? by Andrea Ovans, JANUARY 23, 2015
この記事では、次のようなポイントが書かれています。
・ビジネスモデルは「アート戦略」である
ーアートのように目の前に提示されれば「何か」分かるが、形になるまではしっかりと定義できるものではないというのが結論になります。儲けるための仕組みだ、会社がお金を受け取れるストーリの仮説だ、など様々な意見がありますが、意図的に生み出すというよりも、芸術作品のように偶然が大切であることについても書かれています。
ーhow you planned to make money(お金を生み出す計画)
ーassumptions about what a company gets paid for(何にお金をもらうかの仮説)
ーstories — stories that explain how enterprises work(全体のビジネスがどう機能するのかのストーリー)
ーwere created more by accident than by design or foresight, and became clear only after the fact(デザインしたり先を読んだりするものではなく偶然によって創られるもの)
・ビジネスモデルの基本的な形を理解することが大切
ーサブスクモデル、フリーミアム(無料でサービスを提供して有料プランをつくること)、レイザー&ブレードモデル(使い捨て型の刃と髭剃りを販売する)など、まずは基本モデルを自分のビジネスに当てはめて考えることが大切。
この記事は、ビジネスモデルを理解して作ることができるようになるためのちょうど入口のような記事で、他のオススメの文献や記事を紹介してくれています。ビジネスモデルとは何か、を理解するには、1つ前の"Why Business Model Matters"が例も豊富で分かりやすいと思います。
3.どのようにデザインするのか(HOW)
ビジネスモデルを知っていることと、実際に生み出すことができるようになるには大きな違いがあります。どのように新しいビジネスモデルを生み出す(デザイン)していくのかのヒントになるものを紹介していきます。
3-1: ビジネスモデルキャンバスを利用した仮説と検証
A Better Way to Think About Your Business Model by Alexander Osterwalder, MAY 06, 2013
こちらは有名なビジネスモデルキャンバスを提案した記事になります。
このビジネスモデルキャンバスが開発される前は、事業計画書が主流で計画が機能するという前提に立ってビジネスを遂行するというマインドセットから、このキャンバスの要素について仮説を立てて、検証していくという活動の繰り返しであるという本質的な違いを提案したことが重要です。
製品を計画し、開発して、顧客に売るというウォーターフォール型ではなく顧客や価値の仮説を立て、プロトタイプを作り、顧客と対話しながら新しいサービスを生み出していくアジャイル型のリーンスタートアップの考え方もリンクしています。
このビジネスモデルキャンバスですが、事業立ち上げの初期では仮説が立ちにくい項目も含まれていて、より初期の段階にフォーカス(顧客の価値提案に特化)したリーンキャンバスと呼ばれるフレームワークもあります。
3-2: ビジネスモデルをデザインする戦略
How to Design a Winning Business Model by Ramon Casadesus-Masanell and Joan E. Ricart, JANUARY–FEBRUARY 2011 ISSUE
この記事では、既に存在するビジネスモデルをどのようにして、リデザインしていくのかにフォーカスして解説しています。
ビジネスモデルデザインのビフォア(左)・アフター(右)
図の細かい内容は見にくいかもしれませんが、
まず現状のビジネスモデルを書き出します。その際、人員や物などのインプットがあって、価値を提供する顧客がいて、最終的に自社にお金などの対価が帰ってくるというようなループ図となることに注意します。
このビジネスモデルのループや各要素に対して、次の観点を意識しながら、足したり、引いたり、組み合わせたり、順番を変えるという「選択」をしていきます。
・本来、会社が達成したいゴールと合ってるか?
・飛び地ではなく、自社を強くしているか?
・時間の経過をシミュレーションして、徐々に強化されるか?
ポイントは、全くの一からビジネスモデルをデザインするのではなく、既存あるいはスタンダードなビジネスモデルから開始して、どの要素をどのように変更していくかという「選択」をしていくことで再構築しようとするアプローチです。
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ウィズコロナ、アフターコロナでのビジネスモデルの変革など、すでにあるビジネスを新しい市場環境に変革することが求められているのではないでしょうか。
私が気に入っている方法としては、現状のビジネスモデル、あるいは仮説でも良いのでビジネスのループ図で書き出すこと、次に、他のビジネスモデルの型を参照すること、そして、要素、順番などを変更するなど検討を進めていき、実際の検証活動を進めていく基本的なアプローチです。
参考になれば幸いです。
Cover Photo at Oslo City Hall, Oslo, Norway.