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Do I marry your daughter?
海外で暮らしている娘からLINEがきた。妻と娘はほぼ毎日LINEでやり取りしているが、私に連絡があるのは月一くらいだ。彼が私と話したいと言っているそうだ。翌日、LINEビデオで話すことになった。
私も妻も彼には何度か会ったことはあるが、ビデオ通話は初めてだ。画面がはっきり映るように事前にiPadの画面を掃除した。
私たちはiPadを机にセットし、娘からの連絡をじっと待った。やがて LINEのコールがなる。ひとまず深呼吸をして、LINEをオンにした。iPadの画面が少し曇っていた。「なんか画面がキレイじゃないよ」妻が言うが、娘が「ちゃんと映ってるよ」っていうので、そのまま続けることにした。
私はかなり緊張していたが、彼はほとんど自然体で「Hi, How are you?」と話し始める。何とか「Fine, and you?」なんて中学生レベルの英語で返す。その後、互いの近況などについて少し話をした。
彼が突然真顔で「Do I marry your daughter?」と言う。いずれは結婚するんだろうと思っていたが、突然の問いに言葉に詰まる。妻に「結婚してもいいかってさ」と伝えると、私が答える前に妻が笑顔で「OK」と答えた。いやいや彼は私に聞いているんだ。
彼の国ドイツでは、結婚する時はまず父親に許しをもらうのがルールなので、私に話をしたかったのだという。NOという理由など全くない。「もちろん、Yesだ」と伝えた。
いきなり娘が画面に指輪を映した。驚くほど大きなダイヤの指輪だった。「Thank you!」と返すと「Not for you」と彼がジョークで答える。そして二人の満面の笑みが画面一杯に映る。幸せいっぱいの風がこちらにも流れてくる。
「おめでとう。本当におめでとう。今度会う時は、とびっきりの日本酒を用意しとくよ!」
後でわかったのだが、画面が曇っていたのは私のiPadのカメラ部分に埃がたくさん溜まっていたためだった。記念すべき日の前に、一生懸命ディスプレイをクリーニングしていた自分に思わず苦笑。妻から大ひんしゅくをかったのはいうまでもない。