「笑坂&吉野大夫ツアー」のまとめを行っていた頃、機械書房さん主催のイベントが開催され、たまたま「『吉野大夫』は『吉野葛』のパロディである」という説について考えていたので、即、申し込みました。
「後藤明生文学講義CD『吉野葛 前編』」とは
後藤明生生誕90年記念企画として、アーリーバードブックスさんより昨年発売されたCD(ダウンロード版もあり)で、文学講義『吉野葛』は、1982.4.30にNHK文化センターで開催された「文章教室」のカセット音源から作製されたものだそうです。
『小説—いかに読み、いかに書くか』
後藤明生『小説—いかに読み、いかに書くか』は、NHK文化センターでの「文章教室」1981.1~1982.3(19本のカセット)を元に書き起こしたもので、明生氏は、編集者によって文字起こしされた二百字詰め原稿「五百枚」を「もう一度書き直したのが、この本である」と述べています。
「文学講義『吉野葛』」はその続きをCD化したもので、後藤明生氏の肉声を聴くことが出来る貴重なものです。
同書の「エピローグ―『話し言葉』と『書き言葉』」によると、明生氏は前の晩にテキストを読み通し、ときには徹夜してメモを作るが、いざ話はじめるとメモを見ることはほとんどなく、話ながらとつぜん飛躍が生じ、時には「一種の巫女状態、憑依状態が起こる」そうで、本CDの聴き所も、そのような巫女状態、憑依状態の追体験かもしれません。
また、明生氏は次のようにも述べています。
そして、谷崎潤一郎の『吉野葛』は、小説『吉野大夫』の四章(「吉野大夫」は「吉野葛」説)や、『この人を見よ』では「A某の文学教室」のテキストとしても、登場します。
『この人を見よ』より
『吉野大夫』四章では
「自己増殖の方法」
ということで、後藤明生氏が大いに刺戟を受けたという谷崎潤一郎の『吉野葛』とは、どんな作品なのか。詳細は、後藤明生「文学講義CD『吉野葛』(後編)」の付録、東條慎生氏によるリスニングガイド「後藤明生は『吉野葛』をいかに読みいかに語ったか」に詳しいですが、「『後藤明生文学講義CDを聴く』というイベント」への期待はますます高まったようです。
(続く)