マローンおばさん
この本は、こぐま社の創始者佐藤さんの、先日行われたお別れの会にて参列者にプレゼントされたものである。本を開いてこの文章、もうぐっと喉の奥が痛くなるようだ。ちなみにおばあちゃん子である。
マローンおばさんは、貧しい暮らしの中でも、「あんたの居場所くらいあるよ」と、いろんな動物を迎え入れる。貧しさなら十分身に染みてわかるが、そんな中でちゃんと分け与えてあげられるか?自分にはわからない。
ファージョンといえばアーディゾーニの挿絵。こどもに向かって描いているけれど決して甘くなく、赤ちゃん言葉ではない。じっと見ていると、小さな絵の中でどういう光が、風があるか、じっと滞在したくなる絵だ。
私は、絵本というものを描いてかれこれ16年になるけれど、あらゆる方面で足りないと制作のたびに思う。何年か後には楽々に作れるようになるかも、と進んできた。でも一向にそれはなく、才能のなさと勘の悪さを恨むばかりだが、そうしていても時間だけ過ぎて気分の悪さだけしか生まないので、もうこれは諦めるしかない。ひっくりもっくり唸りながらなんとか倒れながらも前進しなくては。
生前の佐藤さんには数えるほどしかお会いしたことはない。遊ぶように生き、そこから生まれた数々の作品。私には大きく眩しくて、お会いした時もただデクノボーのようになって挨拶するのがやっとだった。
お別れ会にて流された、岩手に遊ぶ佐藤さんの写真を見ながら、晴れ晴れとした気持ちになった。そうだ、こうやって世界は楽しいのだということを伝えることが希望になるのだな、と。
「絵本で子どもに何を伝えたいのか?」
これにすぐに答えられない16年だった。
マローンおばさんに「ここにいていい」と許された時の気持ち。
大きな世界と友達になって行くこと。
絵本の中で育っていく気持ち。
まだまだすぐには答えられないけれど
どうやら伝えたいことがある。
そこを確認したような、
何かヒントをいただいたような気持ちになりました。
ありがとうございました。
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