しょうのはじめての嘘。 今思えば、はじめてじゃなかった。 わたしが全く気がつかなかっただけ。 でも、気づきたくなかった。 あの日から、信じたくても信じられなくなった。 でも、本当は、しょうは、最初から嘘だらけだった。
ひとつの小さな嘘だったのに。 その日から、何もかもが信じられなくなった。 こっそり、ビジネス鞄とスーツのポケットを覗いた。 何も出て来なかったけど、毎日やめられなくなった。 あやちゃんを連れて行った、ふたりの行きつけだったお店にはもう行きたくない。 彼はひとりで行くようになった。 別々に過ごす時間が増えてきた。
三連休最終日の夜。 わたしは翌日朝が早かったから、しょうに伝えたら、 「俺、飲みに行くからごはん作ってあげるね!」 って。 嬉しかった。 飲んでる様子も写真を送ってくれた。 でも、おかしい。 snowのアプリ、一緒にいるの女じゃない? いつもわたしと一緒に行ってる、行きつけのバーじゃない? 『女の人と一緒?』 『男だよ』 『そっか・・・寂しいから早く帰ってきてね』 終電で帰って来てくれた。 でも、どうしても信じきれなくて。 しつこく聞いたら、やっぱり女の人だった。
お互いシフト制のお仕事で、偶然三連休が一緒になった。 しょうの好きなラーメン屋さんに行ったり、居酒屋さんに行ったり、ボルダリングに行って、日帰り温泉に行ったり。 毎日一緒にいても、全然飽きない。 それどころか、毎日楽しいし、もっと一緒に色んなことがしたい。 わたし、一人が好きだったはずなんだけどな。
イベントに当選して、日帰りで、北海道旅行! しょうは、旅行が嫌いって言ってたから、嬉しい!! 地図に強いところ、美味しいお店に詳しいところ、タイムマネージメントが上手なところ、色々見直した。 帰りの電車も飛行機もぐっすり寝ちゃったね。 同じ場所に帰れるのって凄い幸せだったなあ。 お土産に買った雲丹、お家で一緒に食べたのも美味しかったね。
しょうがもう、8年通っているバーに連れて行ってくれた。 と言うより、しょうのお誕生日だったから、プレゼント代わりに奢らされただけか。 凄く雰囲気の良いバーですっかりわたしもお気に入りになってしまった。 このバーに何人女の子を連れて来たんだろ? そんなことばかり考えてしまった。
しょうは自分が大好き。 わたしは、しょうより9歳も歳上なので、一緒に歩く時恥ずかしく思う。 特にしょうは、今時な顔?で、一般的には可愛いんだと思う。 わたしの好みではないけれど。 それなのに、しょうは手を繋ぐ。 恥ずかしいからやめて欲しいのに、構わず繋ぐ。 駅のエスカレーターでギュって抱きしめてくれたり、ホームでキスをしたりもする。 もう、おばさんには刺激が強すぎるからやめて・・・ 一度、向こうから歩いてきた女性の傘がおでこに直撃した時、 「大丈夫?」 って、おでこにキ
酔っ払って帰ってくると、 「えみちゃん〜、俺のこと好き?」 って絡んでくる。 「あ〜はいはい。」 って適当に流すと、 「やだ!悲しい!俺のこと好き?ねえ、好き?」 って。 「うん、好きだよー」 って言ってあげると、 「嬉しい!俺も!」 って、キスしてぎゅってしてくれる。 なんて愛らしさ。
「えみちゃん、わたべくんが終電逃しちゃったから、連れて帰って良い?」 って、えええーーー??!! 急に困るよ。 汚いし、狭いし、洗濯ものも干してるし。 でも、始発まで呑んでれば良いでしょ!なんて言うのもかわいそう。 しょうの大好きな男友だち、わたべくんは、わたしの3歳下のとても礼儀の良い青年。 バンドマンで、システムエンジニアで、バツイチで、オタクのわたべくん。 友だちを見ればその人となりが分かると言うけれど、わたべくんは本当に良い子。 しょうが大好きなの、納得した。
同じ職場で働いていた時、わたしは上司と付き合っていて、しょうは同僚の女の子、まりちゃんを気に入っていた。 上司の彼はしょうを気に入っていて、わたしたちが付き合っているのは隠してたのに、よくしょうを誘って3人でごはんに言ったり、飲みに行ったりした。 まりちゃんは、同棲中の彼と別れるとか別れないとか言ってるところで、チャンスだったのに。 高級焼肉→バー→ホテルって言うデートだったらしいんだけど、まりちゃんからは、ホテルで何もしなかったって聞いた。 本当は、何もしなかっただ
ありさちゃんと別れてから、誰とも曖昧な関係ばかり続けてきたしょう。 やっと出来た恋人は、女子高生のそのちゃん。 しょうは、セフレばっかり作るけど、付き合う=結婚だと思ってる。 だから、そのちゃんのこと、本気だったんだと思う。 「あんな風に一生懸命好きですっ!って言われて、手出しちゃったし、処女だったし、付き合うしかないでしょ!」 って言ってるけど。 でも、半年で振られちゃったんだって。 残念だったね。
しょうにはずっと好きな人がいる。 初恋の人。 初めての相手。 中学生の頃から、9年間付き合った、ありさちゃん。 何回も付き合ったり、別れたりを繰り返しながらも想い合ってきたんだろうなあ。 しょうとお付き合いしながら、銀行員さんと二股をかけて、銀行員さんと出来ちゃった結婚をして、しょうを捨てた人。 未だに夢を見る。 大好きなんだろうな。 忘れられないんだろうな。
数日後、こずえちゃんからラインが来た。 『えみさん、恋人居ないって言ってましたよね?今度、わたしの勤めてる会社主催の街コンみたいなイベントがあって、知り合いとか誘わなきゃいけなくて。来られませんか?』 って。 しょうがうちに来てること知ってて、このライン。 凄いなぁ。 若い子の攻め、は。 もちろん、行きません。
翌日になっても帰って来なかった。 こっちから連絡するのもおかしいし。 しょうはお休みって言ってたかな? 夜になって、 「えみちゃん!ごはん行こう!昨日断ったんだから、今日は絶対!駅でまってるからね!」 って。 仕方ないなぁって言いながら、嬉しくて。 駅に着くと、こずえちゃんもいた。 意味が分からない。 昨日の夜からずっと一緒だったの? その場で帰るわけにもいかなかったから、大人な対応で?、3人でもんじゃ焼を食べた。 帰り道。 こずえちゃんのお家としょうの実家は近くだか
しょうとの再会の場にいたこずえちゃん。 しょうとは、高校生の頃からのお友だち。 今、23歳だから、もう6年? ちっちゃくて、可愛い。 恋人と同棲中。 でも、その恋人、浮気癖が直らないらしい。 「えみちゃん!ごはん行こう!こずえちゃんも居るよ!」 って電話がかかってきた。 「えー、わたし居なくて良いでしょ?2人で楽しんで!」 「えー、やだ!こずえちゃんもえみちゃんに会いたいって!」 「んー、ごめん。疲れてるし、今日は本当にごめんね。」 そう言って断ったけど、まさか、その日、帰
いつもわたしの部屋を、 「居心地が良い。」 って言う、しょう。 実は、動物アレルギーらしい。 それなのに実家では、猫を飼ってる。 弟の前の彼女の犬も預かってて、たまに実家に1泊すると、次の日はくしゃみと鼻水が止まらなくなるのがかわいそう。 「あ、だから実家嫌なんだ?わたしのとこが良いんだ?」 「それもある。」 転がり込んで来たのは、そんな理由だったのか。