日経Science“温暖化が変える食習慣” WHOはCOP29を前に、気候変動交渉に健康問題を早急に組み込むよう要求
沖縄や奄美は大気が不安定な状態が続いており
今日も急な雨や雷雨の所がありそうです
ニュースでは記録的な大雨とのことで
地盤の緩んでいる所があるため
少しの雨でも土砂災害に警戒が必要とのことです
大きな災害にならないことを祈るばかりです
地球の温暖化の影響は
頻発する台風や線状降水帯が原因の
大雨による地滑りや山や崖の崩落
河川の氾濫による水害などで
日本に居ても実感できますが
世界保健機関(WHO)が7日に発表したリポートの
“気候変動対策のあらゆる側面で健康を優先する”
という話は正直ピンときませんでした
【 “温暖化が変える食習慣”という記事 】
2024/11/10 日本経済新聞 26面 科学の扉
温暖化が変える食習慣 食中毒リスク、香辛料で気づかず
「地球温暖化が健康に及ぼす影響として、食生活に関する新たな指摘が
注目されている。気温の上昇に伴って食習慣が変わり、胃腸を痛める
だけでなく食中毒のリスクが高まるという。世界人口の約6割を占める
アジアで特に影響が大きく、日本人も無縁ではない。」
というなかなか刺激的な内容です
その記事の冒頭に
「『健康と幸福を気候変動対策の成功を測る最優先の基準に据える
べきだ』。世界保健機関(WHO)は7日発表のリポートで各国の指導者に
訴えた。」
とのWHOのリポート内容の一部を紹介していました
【 WHOによる新たな指摘 】
「従来、干ばつや高温が農作物の不作をもたらし、食料不足や栄養失調を
生む問題などは議論されてきた。今回新たに指摘したのは、高温による
食品の腐敗や食習慣の変化の影響だ。これまで十分に検証されておらず
リスクがより広範囲に潜む恐れがあるという。」
食品の腐敗は原因菌にもよりますが30℃前後の温度帯で進みますが
気温が上がることで食習慣がどう影響を受けて変化するのでしょうか?
【 この記事は読者をミスリードしないか? 】
食習慣の変化についてこの記事は続けます
「暑さは食品の腐敗をうながす。また暑くなると人の食欲は減退し
辛いものや冷たいものの摂取が増える
『中国四川省や東南アジアでは辛みと酸味を暑さを克服するための食欲
増進に使う』(東京大学のロン・イン准教授)
欧米でなじみが薄いトウガラシを香辛料に多く使うアジアの食習慣に
注目した。辛いものを食べると、冷たい食べ物の摂取が増えて胃腸を
痛めるリスクも増す。
こうしたリスクはアジア以外に広がる恐れもあるとみる」
→ 気候変動で気温が高くなると暑さ対策で辛味や酸味の効いた料理が
増えて冷たい食べ物の摂取が増えて胃腸を壊して健康を損ねる…
なんだか風が吹くと桶屋が儲かる的な話だなぁ
記事は続きます
「四川省出身のロン氏は日本で経験がある。
2年前に飲食店で食べた火鍋で食中毒にあったという。
『辛さの刺激が味と匂いの異変を隠し、腐敗に気づけず完食して
しまった』」(注 : 腐敗していたとされる食材と原因菌は不明)
→気候変動とこのエピソードはどういう関係なのか?
気温が上がると火鍋などの辛い料理の出現頻度が増加して
辛さで腐敗に気付かない人が増えて危険ということですかね?
四川省出身のロン准教授は“麻”や“辣”に慣れていると思うのですが
食中毒になるほど腐敗していた食材に気が付かなかったのかなぁ…
東京大学大学院工学系研究科のロン イン准教授と吉田 好邦教授らの
本年10月23日に英国科学誌「Nature Climate Change」に掲載された
発表内容のプレスリリースを貼っておきます↓
この発表の要点は気候変動によるリスクのうち食品変敗や食中毒リスク
を低減させるのに“コールドチェーンをしっかり構築するべきだ”という
ものです
記事を続けます
「食中毒は世界で毎年6億件ほど発生し、約42万人の命を奪っていると
いう。セ氏35~37度で繁殖しやすい「黄色ブドウ球菌」のような食中毒を
生む病原体が温暖化によって繁殖し、リスクを増す可能性がある。
腐敗や食習慣の変化が重なり健康をさらに脅かす。」
“食中毒は世界で毎年6億件…”の情報は国際連合の世界食品安全デーの
ウェブサイトを参照にしているようなのでこれも貼っておきます↓
→確かに「黄色ブドウ球菌」や「サルモネラ菌」のような食中毒菌は
30℃帯で活発に増殖します
しかし乳幼児・子供と高齢者などの弱者の生命や健康の維持が目的なら
『気候変動対策を!』と大上段に構えず発展途上国や政情不安定地域の
一般衛生管理状態をどうやって向上させるかを検討する方が現実的でより
効果的だとは思います
ニュースで紛争地域の状況を見ても水道インフラが破壊されていたり
そもそも上下水道が無かったりしていますからね
まぁそんなことはWHOも当然承知の上でのアピールでしょうけど
【 COP29へのアピールとしてのリポート発表 】
「第29回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP29)が11日に始まるのを
前に、暑熱や環境汚染が健康をむしばむ現状を紹介し『緊急かつ大規模
な行動が必要だ』と呼びかけた。」
本日11月11日から22日までアゼルバイジャンのバクーで開催される
COP29を前にWHOとしては絶好の機会と捉えて次のメッセージを
世界の指導者に向けて発信したのではないかと思います
「気候変動対策のあらゆる側面で健康を優先することで、公衆衛生、気候へ
の耐性、安全保障、経済の安定に大きな利益をもたらすことができます。
健康は、この重要な時期に緊急かつ大規模な行動を促進するために必要な
議論です。」
とても重要なメッセージで少しでもこのメッセージの本質が世界の指導者に
届いて理解されて具体的な行動に結びつくことを望みます
【 食生活における“安全”の担保に関する個人的見解 】
しかし日経新聞のこの記事には国際医学誌ランセットの熱中症リスク
の分析結果についても書かれていましたが 結局何を言いたいのか
読者に何を伝えたいのかは私にはよく分かりませんでした
WHOはCOP29に向けて“健康”という切り口から気候変動への対策の
具現化を後押ししようとしたのかもしれません
食品安全の中で“食中毒対策”に絞ると
「付けない」「増やさない」「やっつける」
が基本的な原則で先進国では食品を大量生産する
給食施設・弁当工場・食品工場などの衛生管理レベルの担保が
ポイントと言われます
食中毒菌リスクの低減は温度と時間のコントロールが必要で
それが行える設備と電気やガスなどのエネルギー供給と製造に
必要な人員及び品質管理の知識・経験のある人材の確保と適切な
教育・訓練・力量評価が行える組織と環境が求められます
つまるところ“衛生インフラ” “製造設備” “人” “教育訓練”ということに
なるのでそれらが無かったり不足している新興国や地域に優先順位を
付けて先進国が継続的な支援を行うことが必要なのだと思います
またそれよりもひどい状況の紛争地域などでは飲料水の供給や
下水処理施設の完備、生命を保つための安全な飲食の供給を
何よりも優先して行えるようにすることが必要でしょうね
そんな分かり切ったことが難しいのですが・・・
【 以下蛇足です 映画で学習! 】
気候変動・異常気象への警鐘であれば
“デイアフタートゥモロー” or “ジオストーム”を観る
格差社会による健康不平等の話であれば
“エリジウム” or “ペイン・ハスラーズ”を観る
食中毒のリスクの話であれば
“ポイズニング” or “フード・インク”を観る
ことをお勧めしたいと思います