540.【ソロ活】太田 朋さん作品展「森をぬける 水をたどる」(2024.10.14)
いつのまにか、物語が動き出し、本のページをめくるように、絵の世界に引き込まれている。
文章を読んで、わくわくしたり、どきどきしたり、心が振動する感覚が、絵から伝わってくる。
作品の中に描かれている、月や、太陽や、森や、水や、木の実や、生き物や、夜や、昼や、風や、季節の気配が、溶け合ったり、はみだしたりしながら、その前に立つ人に、その人だけの物語の扉を開いているって、すごいと思った。
朋さんの文字は、音符のようだ。
音が聞こえる。
トーンチャイムのような、透明な音。
(本文より)
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太田 朋さんの作品展「森をぬける 水をたどる」に行ってきた。
「森をぬける 水をたどる」
作品展のタイトルだけで、物語が始まっている気配を感じる。
会場に入ってすぐに出逢う2枚の絵は、「縦書きの罫紙」に描かれていた。
私にとって、原稿用紙や罫紙は、特別なものだ。
縦線の上に描かれた絵。文章を書くために作られた紙に、描かれた絵。
それは、手紙のように、届いてきた。
「森をぬける」
「水をたどる」
いつのまにか、物語が動き出し、本のページをめくるように、絵の世界に引き込まれている。
文章を読んで、わくわくしたり、どきどきしたり、心が振動する感覚が、絵から伝わってくる。
(文字って、なんだろう! 文章って、なんだろう!)
(絵って、なんだろう! 物語って、なんだろう!)
(いっしょやん!)
罫紙に描かれた作品は、あと2作品あった。
「ひとつひとつ さようならの世界」
「ひとつひとつ はじめましての世界」
朋さんの、あたたかい手描きの言葉と絵の前に立つ。
「さようなら」は置き去りにされることや止まったままでいることじゃなくて、ぐんぐん進んでいくことだ、という感覚に出逢う。
進んでいくことは、「はじめまして」と「さようなら」を、笑顔でクロールしていくような。
そう感じたから、今、私は進んでいきたいタイミングにいるのだと、感じる。
朋さんの文字は、音符のようだ。
音が聞こえる。トーンチャイムのような、透明な音。
絵だけでなく、木と皮革を使った作品や、巣ごもりの鳥がいる空間があり、木の実が置かれ、羽根が揺れていた。
作品の中に描かれている、月や、太陽や、森や、水や、木の実や、生き物や、夜や、昼や、風や、季節の気配が、溶け合ったり、はみだしたりしながら、その前に立つ人に、その人だけの物語の扉を開いているって、すごいと思った。
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最終日だったので、カレンダーは売り切れていたし、ほかにもあったかもしれないグッズもなかったけれど、2冊だけ残っていた「MIDORI」という蛇腹の本と、ポストカードと、友人へ缶バッジを。
サインをお願いすると、こころよく頷いて、手でていねいに削られた、短くなったえんぴつをにぎりこむようにして、イラストとお名前を描いてくださる。
缶バッジの裏には、油性のペンで、それぞれ小さなイラストを。
よく登場している動物が、なんなのか(犬なのか、きつねなのか、そのほかのものなのか)わからなくて、尋ねたら、少し間があって、笑いながら、「……けもの?」とおっしゃった。
朋さんの口から出ると、地球にいる「獣」というカテゴリーではなく、朋さんの世界にいる、不思議な生き物の種別のように聞こえる。きっとそうだと思った。
そもそも、朋さんの絵に描かれている、「ひと」のような生き物も、人間とはちがう、不思議な存在なのだった。
12月には、「羽根にまつわる展覧会」が塩屋の「舫書店」で開催される。
朋さんとお話をしていたら、会期中に開催される「山さんぽ」に参加したくなった。
(創造性の子どもが、遊びたがっている)
浜田えみな
追記
開催されている、ギャラリーヴィーは、9月に夫とデ・キリコ展の帰りに寄って、どら焼きセットとあずきソフトを食べた、「本高砂屋本店」の角を曲がってすぐの場所!
作品展の開催場所を調べたときに、あまりにもすぐ近くまで来ていたことに驚いた。
方向オンチの私でも、元町商店街の本高砂屋の角は、迷いようがない。
人生には、いたるところにガイドがいて、道しるべを用意してくれるのだと、あらためて思う。
太田 朋さんの作品展には何度か訪れている。朋さんの初めての本「soul」も持っている。
いつの年だったか、カレンダーが週めくりという年があった。
朋さんの絵に毎週出逢えて、とても嬉しく、週めくりなのでイラストも豊富で、「文章を添えたら、本ができる!」とワクワクして、毎週、文章を書いて、勝手にコラボしていた。
眺めていると、言葉が浮かんできて、書き留めたくなる。
それは、いったい、いつ頃だったのだろう? と思って、プロフィールをみたら、活動を始めたのが「1994年」と書かれていた。
30年前!
私が作品展を訪れたり、朋さんの本を手にとったり、勝手にコラボをしていたのは、創作をやりたくて文章修行をしていた頃か、書けなくなってやめて、それでも何か書きたかった頃か、そのあたりだ。
時が流れ、直近で作品展に行ったのは、2015年5月。
10年前!
旅する絵描き 木の葉堂 白澤裕子ちゃんとの「てんけん隊」の、記念すべき初回だ。
朋さんは、ずっと描き続けていらっしゃる。
てんけん隊1回目 太田朋さんの「お守り展」
てんけん隊まとめ読み