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494.【魂活】「第1回 忍びよる侵入者―真実の鍵を求めて(『狼と駈ける女たち』第2章)」レポート

年齢も、住んでいる場所も、職業も、とりまく環境も、
ビジョンも違う「女」たちが、「骨」をあつめていく。
みつけた「骨」を語る。
その「骨」の響きが、わたしの「骨」に共鳴する。
音叉のように。

(本文より)

*********

NPO法人 Umiの家主催 越地清美さんの「野性の女を呼びさますお話し会」連続講座 オンライン 第1回目。

こっしぃさんの誘導による「ブレスワーク」で、自身と場を整える。
『青ひげ』という、ヨーロッパ各地に民間伝承として伝わっている物語から始まる。

古くから伝承されている物語には、先人の智慧や教訓が示唆されているものが多い。『青ひげ』も、ネットで読んだ幾つかのバージョンには、文末に、禁忌を破った妻の好奇心や行動を戒める一文が添えてあるものが多かった。(検索すれば、すぐに全文が読めるので、興味のあるかたは読んでみてください)

だけど、作者のクラリッサ・ビンコラ・エステス氏や、こっしぃさんがレクチャーしてくださる内容は、ぜんぜん違う。

『青ひげ』の物語は、『狼と駈ける女たち』の書籍では6ページ分で、〈第2章〉は全部で45ページ。
作者は、なんと39ページを費やして、物語に描かれた登場人物や、エピソードをすくいとり、ひとつずつ、丁寧に、そのことが何を表し、意味しているのかを、「女性の魂の成長レベル」にあてはめて解説した上で、「未熟な女性」「野性の本性」との関係を深め、「こころの本来的な掠奪者」から身を守るにはどうしたらいいか、どう学べばいいか、どうすれば罠に陥らないのか、何に気づき、何を味方にし、どう対処し、最終的にどう昇華するのかまで、導いてくださっている。

さらに、「こころの本来的な掠奪者」が忍び寄るサインとして、夜にみる「夢」に現れる兆候についても。

最初に読んだときは、登場人物も多いし、ショッキングなシーンや、スプラッターレベルの、生々しい描写などがあり、

(魔物のような恐ろしい化け物の餌食にならずにすんで、よかった!)

と、単純に思うだけだった。母親、三人姉妹、兄たち、青ひげが登場する舞台を、かぶりつきの特等席で観ている感じ。言われたことを守っていれば、恐ろしいことはおこらない、と思っていた。

ところが、こっしぃさんの講座を聴いた時、「こころの内なる掠奪者」という言葉が、圧倒的な衝撃で耳に入ってくる。書籍を読んでいる時には気づいていなかった。

その言葉によって、〈魔物のような恐ろしい化け物〉……女性の本来的な能力を奪い、女性の感情や、夢や、目標や、希望を打ち砕き、殺戮する!……と感じた「青ひげ」が、外側の誰かだけでなく、「自分の内側に存在する」ことに気がつく。

講座の間は、もう、その気づきに心がつかまれ、自分の内側の声が、いかに巧妙に、野性を切り離してゆき、本能的な好奇心や、可能性を察知する直観や、果敢にチャレンジする無邪気さの芽を、摘み取り、殺してきたかに思い当たる。

さらに、講座が終わってから、もう一度、〈第2章〉を読み返すと、自分の中にいるのは「青ひげ」だけでなく、「登場人物全員」だと言われていることがわかり、茫然とする。

「忍び寄る青ひげ」も、ターゲットにされている「三人の姉妹」も、「青ひげ」から森のピクニックに誘われたとき、娘たちに警告も与えず、のこのこ一緒についていき、最後まで何も言わない「母親」も、疑いと恐怖を感じながらも、森で楽しくすごすうちに、懸念が気にならなくなり、「青ひげ」の求婚を受け入れる「末の妹」も、帰宅後、遠ざかっていた疑いと恐怖を蘇らせ、「青ひげ」の求婚をきっぱり断る「二人の姉」も、結婚後、「青ひげ」の留守に屋敷に遊びに来て、無邪気な好奇心で全ての部屋をのぞきたがり、「この鍵だけは使ってはいけない」と言われた鍵を使って、ためらいもなく秘密の部屋を開けてしまう「二人の姉」も。

さらに、血の海の中、黒ずんだ骨が散らばり、部屋の四隅に頭蓋骨が積んである部屋を目にしたとき、とっさに「なかったことにしよう」として奔走する「青ひげの妻」も、「青ひげ」に見つかり、殺されそうになったとき、智慧と機転をフルに働かせて、反旗を翻す「青ひげの妻」も、その「眼」となる「二人の姉」も、遠くから駆けつけて「青ひげ」を征伐する「兄弟」も、「青ひげ」の死体を食べ、循環の一端を担う「ハゲワシ」も。

(すべてが自分の「内なる存在」)

そのことに気づかされた。
受け入れることができた。あてはめることができた。体感できた。
まるで、多重人格者になったように、それぞれの自分が起ち昇ってきた。

いちばんよかったのは、青ひげをめった切りにする「兄弟」が、自分の中にいるとわかったことだ。

***

次に、講座の中で、私の耳に、まっすぐに飛び込んできた言葉は「アニムス」だった。
禁忌に触れ、鍵のかかった部屋の秘密を知り、青ひげに追い詰められ、絶体絶命の危機に瀕した「青ひげの妻」を助けるために、遠くから砂塵をあげて駆けつける「兄弟」たち

〈必要とあらば、死ぬまで戦うべく鍛えられている魂のある側面〉だと書かれている。

こっしぃさんは、「こころの筋肉」だとおっしゃっていた。
これがないと、どんなに素晴らしいことを思いついたとしても、実際の世界で計画し、実行するに至らないと。
そして、アニムスが引き起こす三つのことについて、語ってくれた。

・〈魂の掠奪者を制圧する〉
・〈夢見がちな少女に変わって、はっきり眼をひらいた女性が現れる〉
・〈戦士が両脇につきそってくれる〉

アニムスは、女性性の創造的エネルギーを、実行するための助け手としてやってくる、男性性的エネルギー。

(危ないものには触れたくないけど、窮地に追い詰められたら、切り抜けたい!)
(創造すると願ったものを、思いだけじゃなく、実現したい!)
(どうすれば、「こころの筋肉」を鍛えることができるのだろう?)

その思いでいっぱいになり、シェアのときに、こっしぃさんに質問すると、こんなふうに答えてくださった。

「危ないところには近づかない、危ない扉を開けない、という生き方もあると思うんですけど、意外と近道だったりするんです。〈一番危ないところを開ける〉のが」

「こころの筋肉を鍛えるのは、筋トレと一緒で、毎日つづけることが大切で、〈何一つゆるがせにしないこと〉です」

今日、どんなふうに生きたいか。何を選択するか。それはなぜか。本当にそれでいいのか。
ささいな行動のひとつひとつを、自分に尋ねながらやっていく。
その選択肢が何かとぶつかったときに、もめることや、小競り合いが大事だと。
そうすることでしかつかない。それで力をつけていく。いきなり大きな戦いには行けない、と。

このときは、まだ、私のアニムスは、どこか遠いところにいて、〈助けに来てくれるのを待っている〉という、どこか他人事のようなイメージだった。
ところが、講座が終わってから、もう一度、書籍の〈第2章〉を読むと、前述したように、すべての登場人物が自分の中にいることがわかってくる。

そうして、覚醒した「青ひげの妻」が、別人のように反旗を翻してからのシーンを、読み進む時の臨場感ときたらなかった。
眼で活字を追いながら、同時に、ムービーを観ているようなリアルな映像が浮かんでいる。

砂塵をあげて駆けつける「兄弟」たちは、どこか遠くの彼方からやってくるのではなかった。
自分の内側から噴出し、どっど、どっどという地響きを立てて、津波のように押し寄せてくるのだ。

(その体感)

『狼と駈ける女たち』のレビューで、「癒し」とか「セラピー」とかいう言葉が綴られていた意味を実感した。

〈自分の中に、すべてがある〉

そのことが体感できたから。

***

こっしぃさんの講座を聴いて、体感できたことが、もう一つある。
それは、流れ続けている血

「青ひげ」の物語で、開けてはいけないという渦巻き模様の鍵を使って、秘密の扉を開けると、そこは、黒ひげの先妻たちの殺戮が行われた部屋で、部屋は血の沼。手にした鍵は血まみれで、ふきとっても、こすってもとれないばかりか、白いドレスのポケットに隠した鍵から流れた血で、裾まで染まり、すすり泣きのように血がしたたる。さまざまな方法を試みても血はとまらず、衣裳部屋の一番上の棚に隠した鍵は、吊るしてあった美しい絹のガウンをすべて真っ赤に染めてしまう。

この情景を最初に読んだときは、血が流れ続ける鍵が怖すぎるし、その鍵を衣裳部屋に隠したことが不可解だった。

でも、講座を聴いて、全ての登場人物が自分の中にいるとわかり、ほかならぬ自分自身が、これまでに打ち砕いてきた、夢や、目標や、希望の数々が、一斉にフラッシュバックしただけでなく、いまなお、ぬらぬらとぬれて、血を流し続けていることが、リアルに体感でき、貧血になりそうだった。

(瀕死の状態であれ、いまなお、生きている)
(知ってしまったらもう、なかったことには、できない)

そして、血の沼のなかに、がちらばり、四隅には頭蓋骨が積まれていた。

(骨さえあれば、「魂の歌」で蘇らせることができる)

もう消えた、捨てた、忘れた、と思っていた目標や願いが、全て残っていて、ずっと血を流し続けていることを知った。
その血の沼の中に、「壊すことのできない生命の力」「破壊することのできない力」である「骨」が、すべて残っていることを知った。

(だから、蘇ることができる)

この時点で、どこにあったのかもわからない、私の中の隠し部屋が、開いていた。

「なぜ、衣装ダンスだったのか?」 ということは、作者のクラリッサ・ビンコラ・エステス氏が、このように書いている。

【元型心理学では、衣服は外的なありようを擬人化したもの。人が世間に見せる仮面】

***

黒い男の夢というものをみたことがある人は、たくさんいるのではないかと思うんですけれども……」と、こっしぃさんが話し始めたとき、

(そんな夢はみたことがない)

と、即座に思った。夢の中に、黒い男が出てきたことはないからだ。
だけどすぐ、(黒い男は象徴だ)とわかる。

恐ろしい夢。
追い詰められる夢。何か得体のしれないものに追われる夢。困難に陥る夢。

(「夢」は、目覚めのサイン)
(イニシエーションの予告)
(「黒い男」の夢は、反旗を翻すチャンス)

血が流れ続けている。
骨は残っている。
気づいたらもう、なかったことにはできない。

***

【流れ続けている血は、創造的生のもっとも深い、もっとも魂のこもった部分の破壊】
【部屋に散らばっている骨は、魂の中にある女性的なものの、けっして破壊できない力】
【骨を集めて、野性の女を蘇生させるラ・ロバ】
【罪や罪人を食べ、のみこみ、再び生へと戻すハゲワシ】

(〈生―死―再生〉のサイクルが自分の中にあることを教えてくれる)
(気づいた時から、その循環に入っていく。入っている。どのプロセスにいたとしても)

「青ひげ」から、掠奪者としての破壊的エネルギーを奪い、ビジョンを成し遂げるためのエネルギーに変容するには、自分自身のこころのこもった真実を伝える「声」を持つことだと、教えていただく。

そして、「こころの筋肉」をつけるのは、どうしたらいいですかと、こっしぃさんに質問したときに、答えてくださった大切な行いも。

〈なにひとつ、ゆるがせにしないこと〉

今日、どんなふうに生きたいか。何を選択するか。それはなぜか。本当にそれでいいのか。
ささいな行動のひとつひとつを、自分に尋ねながらやっていく。
その選択肢が何かとぶつかったときに、もめることや、小競り合いが大事だと。
そうすることでしかつかない。それで力をつけていく。いきなり大きな戦いには行けない、と。

***

〈第2章〉のレクチャーが終わったあとは、参加者ひとりひとりのシェアタイムだ。

年齢も、住んでいる場所も、職業も、とりまく環境も、ビジョンも違う「女」たちが、「骨」をあつめていく
みつけた「骨」を語る
その「骨」の響きが、わたしの「骨」に共鳴する
音叉のように。

最後の記念撮影が、ぶっとんでいた。「変顔」をしてくださいと、言われたのだ。
そうして、みせてくれたこっしぃさんの見本は、「がおーーっ」と、吠えていた。
「がおーーっ」が、本当に、野性的だった。
それを見て、

(野性の顔をとりもどすのだ!)

と、わかった。
まだ、ぜんぜんぎこちないけれど、毎回、毎回、仮面がはがれ、表情が変わっていく記録だ。
最後に、すべて眺めるのが、今から楽しみ。

浜田えみな

※マガジンで連載しています 【0回】(〈序章〉〈第1章〉)あります!

越地清美さんのHP

 マガジンで連載しています。


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