297.白澤裕子ちゃんとのてんけん隊復活! at 室生山上公園芸術の森(5) ~いじらしさとわかってもらえなさ感~
(おじさんのイラスト 旅する絵描き 木の葉堂 白澤裕子ちゃん)
ほんとうにぴっくりするのだけど、おじさんは、写真が撮れない。
録画しか撮れない。
(本文より)
◆自分のいる場所がステージ
◆いじらしさとわかってもらえなさ感
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◆自分のいる場所がステージ
今回の「てんけん隊」のミッションは、「裕子ちゃんのアート作品の主人公になる」こと。
翼を描いてもらうほかに、写真に裕子ちゃんのイラストを合成する演出アート「お絵描きフォト」に、
「よかったら、モニターになってね」
と言う言葉をかけてもらって、飛び込んだ。
(発露するイメージをすくいとって、具現化してもらえること)
(裕子ちゃんと私のイメージの世界が融合し、アルケミーが起こること)
室生山上公園芸術の森は、空があり、山があり、緑の草原があり、水辺があり、道があり、不思議なオブジェがあり、森があり、世界は、アクティビティに満ちている。
自分のいる場所がステージで、まわりはすべてオーディエンス。
何をしても(何もしなくても)、エールの中にいる。
ピラミッドの島から、ステージの島へ向かう道は、祝福された花道のようだ。
ステージの中央に立っていると、歓声と、スポットライトを感じる気がする。
(ここで歌ってほしいな)
(ここで踊ってほしいな)
(あの人がここにいたら、こんなふうに歌うだろうな)
(あの人だったら、こんなふうに踊るだろうな)
ほかの人の美しいシーンばかり浮かんでくる。
こんなにすべてをひとりじめにして、世界を巻き込んで、つながりあって、一体になって、歌ったり踊ったりできる場所を、知らないと思った。
それなら、やってみればいいのだけど。
(やっほー)すら、言えず。
(スキップ)さえ、できず。
自分のからだは、ちっとも動かない。
どうやって表現したらいいかわからない。
歌えない。踊れない。
(裕子ちゃんと一緒だったら、できるような気がしたのだけどな)
(やれるかな、と思って、ひらひらの服を着ていったのだけどな)
(できなかったな)
裕子ちゃんが、何度かスマホを向けてくれるのを、目をふせたり、横を向いたりして、かわしつつ、ばんばんかわしつつ、私は、かわいい裕子ちゃんをこっそり撮影。
◆いじらしさとわかってもらえなさ感
ふと、二人で写真を撮っていないことに気がつき、せっかくだから記念に撮ろうということになった。
自撮りだと顔しか映らないので、スマホを立てて、セルフタイマーで撮影しようとしたのだけど、角度が合わないうえに、風が強くて、ぱこぱこ倒れてNGだらけ。
「誰かいないかなあ……」
と見回すと、それまで誰もいなかったのに、いつのまにか道の端に軽トラが止まっている。
どうみても、施設管理の車だ。
その車から降りてきたのだろうと思われるおじさんは、作業着姿なのに、レンズが10センチはあるような、りっぱなカメラを持って、湖に向かって、なにやら撮影している。
広報用の写真だろうか?
(きっと、上手に撮ってくれる!)
そう思って、近づいて声をかけて、撮影を頼んだ。
スマホを渡して、シャッターボタンを示すと、ものすごくりっぱなカメラを携えているのに、スマホ撮影は不慣れなのか、心もとなそうな雰囲気を漂わせつつ、受け取ってくれた。
「どこで?」
と聴かれたので、裕子ちゃんと顔をみあわせ、
「このあたりで」
と遠慮がちに言うと、
「いや、ここに来たら、ピラミッドでしょ。みんなそこで撮る」
というお返事。
思わず、後ろを振りかえる。
ピラミッドが写る場所までは、だいぶ歩くことになる。
「戻らないといけないですが」
「いいよ」
(おじさんのこだわり!!)
(ひょっとして、地元の日曜写真家!?)
(期待度MAX――――!)
きっと、ビューポイントがあるのだと、おじさんの撮影してくれる写真に期待がふくらむ。
撮影は、すぐに終わるはずだった。
ところが……
裕子ちゃんと私がポーズを撮っても、なかなかシャッターが押されない。
操作がわからないのだろうか? と、おじさんのほうに歩きだそうとしたとたん、シャッター音。
(えー―――っ)
(そのタイミングは、困ります!)
「もう、一枚、お願いします!」
あらためて、にっこり。
二人でポーズを決めているのに、やはり、なかなかシャッターが押されない。
(???)
おじさんの、なんだか困っている波動が伝わってくる。
そして……
ぴとん、という水音のような音。
(ぴとん?)
通常のシャッター音と違う。
不思議に思って、スマホを見せてもらうと、写真ではなく動画になっている。
まちがって、動画撮影のボタンを押してしまったようだ。
「真ん中の、これを押すだけでいいですから」
気をとりなおして、もう一度、スタンバイ。
(はやく、撮ってー――)
ぴとん。
「ここだけ、これを押すだけでいいですから」
(笑顔がひきつるー――)
ぴとん。
「これを、ほかをさわらないで、このボタンだけを押してください」
ぴとん。
「ここ、これだけ、押してください」
ぴとん。
……というわけで。
ほんとうにぴっくりするのだけど、おじさんは、写真が撮れない。
録画しか撮れない。
困っているおじさんはいじらしくもはがゆく、もう解放してあげたらいいと思う反面、ボタンを一つ押してもらうだけなのに、どうしてなのだろう? という、わかってもらえなさ感の行き場に困り、私も少し意地になった。
でも、何回頼んでもできないので、だんだん、もの悲しい雰囲気が漂ってきて、シャッターボタンを押してもらえないまま、
「ありがとうございます」
と、スマホを受け取った。
あきらかに、ほっとしているおじさん。
履歴を確認すると、おじさんは5本の動画と2枚の写真を撮影してくれていた。
2枚の写真のうち、1枚は、最初のもの。
時間が経ちすぎて、二人の表情が疲れている。
もう1枚は、動画と動画の間にはさまれていて、いったいどんなふうに撮影したのか、ものすごいショット。
とにかく、風が強くて、雨粒も落ちてきたので、それを見上げているのか、裕子ちゃんは空を仰いで口をあけているし、私は強風に、髪を押さえて足をふんばり、ひどい顔。
まるで、ずっこけ漫才。
(撮影 おじさん)
(ひどいのか天才なのか、わからない)
(お絵描きフォト 旅する絵描き 木の葉堂 白澤裕子ちゃん)
おじさんは、何者なのだろうな、と、ずっと考えていて、帰宅してから、裕子ちゃんに、
「もぐらかな? かえるかな?」
と尋ねたら、
「あのおじさん、どうりでカエルっぽいと思ってたよ🐸」というコメント。
「ギャラリーに、写真あったね」
「お弁当食べてるとき、鳴いてたね」
カエルだと思うと、なっとくする。
まんなかのシャッターボタンを押そうとしても、吸盤があって、となりの動画ボタンを押してしまうことも。
押したのに撮影できていないので、もう一度押すと、録画が始まってしまうことも。
シャッターボタンが赤くなり、びっくりしてさわると、録画が終了することも。
録画ボタンの終了する音が、水音に似ていることも。
(あの場所なら、何が起こっても驚かない)
(おじさんの録画からフォト加工しました♪)
浜田えみな
いよいよ、次回は、えみなの撮影♪
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