362.大寒の朝 ヒツキアメツチファーム ~ローズマリー~
二十四節気では「大寒」と呼ばれる朝、ヒツキアメツチファームへ。
前回は、「冬至」の翌日、山羊座の新月だった。
氷が張り、空には雪雲が浮かぶような朝。
風が吹きすさび、手がかじかんで、とんでもなく寒かった記憶があり、しっかり防寒対策をして、覚悟をして出かけたら、
(あれ? 寒くない!)
風がないと、こんなに寒くないのだと、驚いた。
おりてくる太陽の光のあたたかさが、逃げていかない。
駅から、道路を歩き、目印の場所からあぜ道に入り、ファームのあたりまで来て、思わず歓声。
(わぁ。きらきらー―――)
土が、植物が、野菜が、輝いている。
(何が輝いているのだろう?)
(何を感じているのだろう?)
(共鳴しているのは何?)
(歓喜?)
きらきら。ぴかぴか。
近づくと、土も、植物も、花も、しっとりと潤っている。
花びらには、朝露が残っている。
(今しか感じられない光景を、今、見ている)
昨年、仲間が植え、育て、収穫を終えたあと、春になって蘇るのを待って、残したままでいるもの。
ローズマリー。コモンセージ。フェンネル……。
水はけがよいように、そのまわりを溝にしてあるだけで、あとは、自然のまま。
庭や室内の植物のように、毎日、世話をするわけではないのに、
(生きている)
春を待つ。
十年くらい前、寒く曇った冬の日に、プランターからのぞいている、小さな芽をみつけたことがある。
(こんなに寒く、くもった空の下にも、春を招く呼吸がある)
そう思った。
小さな芽は、
(自分が特別なことを知っている)
と思った。
自分で決めて生れてきて、まっすぐ伸びていくことは、もう決まっている。
すっかり枯れているように見えるファームのハーブに、小さな芽が出ていた。
********
ファームと自分の内側は、つながっている、と感じる。
しっとりとしめった、ファームの土。
黒くて、きめ細かくて、靴をはいていても、そのエネルギーが身体に入ってくる。
てのひらをのせているだけで、しあわせな気持ちになれる。
スコップで掘り返すと、ふかふかになる。
みみずや、名前のわからない小さな生き物が、ごそごそと現れる。
(みえているもの、手や足に伝わってくる感覚、その行為が、内側と連動している)
この日は、土壌づくり。
土を小さな熊手やスコップで耕し、水はけがいいように作ってあった溝を均す。
手を動かしながら、あちこちで飛び交う会話。笑い声。
作業が終わり、顔をあげると、湖か池に浮かぶ小島のように、どこか、孤高の存在だったローズマリーが、世界と一体になっていた。
(つながっている)
(支えられている)
(守られている)
(ゆるがない)
(ひとりぼっちじゃない)
その体感があふれてくる。
〈いっしょにいるのに、ひとり〉とか、自分だけが部外者のような、アウエイな気持ちを感じることが、これから自分に起きたとしても、
(それは気のせいなのかもしれないね)って、
私は、私の中のちいさな私に、言ってあげられると思う。
ファームが見せてくれた奇跡で。
********
ささやかな、セレモニーを行う。
ファームで育ち、土に還ろうとしているハーブの茎を手折り、火をつける。
たちまち、風に乗って、鼻腔に芳香が届く。
(いい香り……)
(落ち着く……)
植物の香りは、動けない植物が身を守るために発する「自己防衛物質」だと、アロマテラピーを習ったときに教えてもらった。
(今、薫っているのは、植物が自分を守り、生きていく力)
その想いが、湧きおこってくる。
手をあわせ、ただ、祈らずにはいられない。
すべてのものに、神様が宿り、すべての行為が神事であり、祈りであるという心を、日本人は大切にしてきたと思う。
火の浄化。
風の浄化。
水の浄化。
地の浄化。
糸のような煙がたなびき、芳香をくゆらせるハーブの茎を、ファームの土に、そっとさしこむ。
ファームで車座になって、ひとりずつ順番に、思い思いのセレモニーが続く。
********
神事のあとは、直会。
大橋和さんの星田サロンで、2つの土鍋で煮込んでくださった、お心づくしの粕汁に、ファームでいただいた、おさがりの葱をいただいてきて、分け合い、皆で食す。
持参したおむすびは、かたちも具材もさまざま。
和さんが、土鍋で煮込んでくださった粕汁は、いつまでたっても冷めず、お椀に口をつけるたびに、底からあふれてくる汁の熱さに驚く。
身体はぽかぽか。頬は上気し、熱いエネルギーが循環している。
恭子さんが、漬け込んで熟成した、十年もののラムレーズンを使って、焼いてくださったパウンドケーキ。
ちょうど、農園に来ていらしたオーナーの奥様がくださったレモン。
和美さんが持ってきてくださった、松ぼっくりと、松葉のアレンジメント。
ほのかに揺れながら、ハートをあたためてくれている、キャンドル。
先月、ファームを訪れたとき、和さんは壱岐にいらして、zoomで繋がったのだけど、そのときのお土産の、古代米(黒米・赤米)と塩。
恭子さんが買ってきてくださった、大吟醸山田錦の酒粕。
それらを、分担して、みんなで分ける。
分けると、少なくなるはずなのに、すこしもへらない。
小分けしていただいた袋は、元の袋よりは小さいはずなのに、エネルギーは、ずっしり重い。
分ければ、分けるほど、増えていく。
神道において、神様の魂は、いくら分けても減らないという、日本人が大切にしてきた思いを、実感して、胸がいっぱいになる。
輪になって、同じ空間にいる。
輪になって、同じものを食す。
目の前で話される言葉が届く。
対面のバイブレーションは、押されるスイッチが違う。
和さんが、アストロイニシエーションのことをお話されるのを聴いて、
(そうだったのか!)
という気づきが生れた。
(なぜ、イメージワークをしているのか)
(なぜ、ドリームオープニングが大切なのか)
漠然と感じていた、ドリームボディについても。
*********
2月、3月は、ヒツキアメツチファームの会はお休みで、4月の花まつりのあたりでということ。
(参加する自分にロックオン)
浜田えみな
恭子さんが撮影された、小さな芽の画像を見ていたら、言葉を添えたくなりました。
導いてくださる和さん。
ヒツキアメツチファームの会をオーガナイズしてくださる恭子さん。
ご一緒してくださる皆さん。
読んでくださったすべてのかたへ。
「こんなに寒く、くもった空の下にも、春を招く呼吸がある。
自分が特別なことを知っている。
今は、まだ小さい芽」
**********
前回のヒツキアメツチファーム