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149.雲の上は、いつもお天気

子どものころは、七夕に雨が降らないように祈っていた。
雨が降ると、織姫さまと彦星さまは逢えないと思っていた。

(だまされていた!)

ことに、今は気づいている。

雲の上は、いつもお天気。

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帰宅して、フェイスブックを開くと、6年前の七夕に投稿した記事をシェアした昨年の投稿が飛びこんできた。
画像は、6年前の七夕のものだ。

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草原にゆれる短冊が幻想的。

(何を書いたのだろう?)

と思って、投稿を読み進む。

〈1999年の七夕の夜、私は産婦人科のベッドの上だった〉

という一文に、ぶっとんだ。

***

(七夕は、初めて、赤ちゃんと対面した日)

そのことに気づいた昨年の7月7日。

今年は、

〈夫にとっても、そうだった〉

ということに思い至り、

〈七夕の日に、三人になった私たちって、いい感じ〉

と、うれしくなった。

1999年7月7日は、雨が降っていて、寒かったことを覚えている。

新生児用の小さなベッドには、ガーゼの産着にくるまれている赤ちゃんがいて、すやすや眠っているときは、じっと見ていられたけれど、動き始めたら、どうしたいいかわからず、手をのばすのも、声をかけるのも、おそるおそるだった。

2021年の今日も雨。
雨の音を聴いていると、胸のあたりに、あの夜のことが、じんわり灯る。

(赤ちゃん)

としか言いようがなく。
まだ、名前が決まっていなくて、録画したビデオを見ても、「赤ちゃん」を連呼している。

(名前がない!)

という事実が、とてもリリカル。

名前がないまま、一週間くらい、存在していた赤ちゃん。

(実態があるのに、名前がないって、どういう感じなのだろう?)

名前がついていない赤ちゃんに、おっぱいをあげたり、おむつを変えたり、沐浴させたり、抱っこしたりしていた病院での日々。

静かな雨の日に生まれた、赤ちゃん。
静かな雨の日に、初めて赤ちゃんと対面した、私と夫。

***

子どものころは、七夕に雨が降らないように祈っていた。
雨が降ると、織姫さまと彦星さまは逢えないと思っていた。

(だまされていた!)

ことに、今は気づいている。

雲の上は、いつもお天気。

浜田えみな

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