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タロット The Fool's Story

THE FOOL (愚者)と『放蕩息子』

『放蕩息子』とは《新約聖書》のなかにある、イエス・キリストが語った神の憐み深さをあらわした例え話です。ここで少し、キリスト教の聖書について簡単に整理してみます。

キリスト教の聖書には、《旧約聖書》と《新約聖書》があります。

《旧約聖書》はユダヤ教の聖書であり、紀元前6世紀頃から始まったのではと言われています。もとはヘブライ語とラテン語で書かれたもので、《ヘブライ語聖書》とも言われるようです。アダムとイブの話や、ノアの箱舟、バベルの塔、モーセの話はここに書かれています。

《新約聖書》は、1世紀~2世紀にかけてキリスト教徒によって書かれ、その内容は主にイエス・キリストについて、その生涯や言葉などが記されているようで『放蕩息子』はこちらに記されています。

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 ある人に息子が二人いました。弟の方が父親に財産の分け前を要求します。財産の分け前をもらった弟は、遠い国へ旅立ちそこで放蕩の限りを尽くして、財産を無駄使いしました。そのうえある日飢饉が起きて、彼は食べるものにさえ困るようになります。しかしお金に困った彼に食べ物をくれるひとは誰もいませんでした。彼は父親を思い出し、後悔し懺悔し古郷へ帰ることを決意します。

古郷へ帰った息子を父親は温かく出迎え、手厚くもてなしました。それを快く思わないのはずっと真面目に働いてきた兄の方でした。自由気ままにふるまった挙句、財産を使い果たして帰ってきた弟への不満を父親に訴えます。

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といったお話なのですが、この兄と弟がとったそれぞれの行動の違いは、愚者のカードのいくつかの側面に大変似ているように思われます。

そのひとつは、弟が取った行動の結果から示されるように「無謀さ」や「準備不足」、「不注意」です。

もう一つは、自由への憧れはあったとしても行動せずに、多少の不満はこらえ、その場所に留まるという兄の選択から示されるように、「自分の本心・本性を認められない、慎重さ、用心深すぎて行動できない」という状態です。

行動を起こすか、現状を維持するか。

『放蕩息子』は、まさに誰もが経験するような人間の一生のうちに起こりうる普遍的な物語を表しているようです。

タロットカードの起源は、14世紀頃と云われています。
その普遍性は、愚者のカードの中にも込められているのかもしれません。

【参考図書】
『《放蕩息子》の精神史 - イエスのたとえを読む - 』
宮田光雄 新教出版社

『ヤコブと放蕩息子』ケネス・E・ベイリー著
森泉弘次訳 教文館

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