コーヒーをストーリーごと楽しむ
コーヒーが一杯の飲み物になるまでには、数多くのプロセスを踏み、さらに数多くの人が関わっている。そこには色々な思いが交錯しているだろうし、その中には喜怒哀楽が溢れているだろうと容易に想像できる。
特にコーヒーのストーリーと言えば、農家さんが真っ先に連想されることが多い。元々は暗い歴史があるコーヒーは、これまで虐げられてきた農家の人たちに光を当てるという風潮が盛んになっているためだろう。それはとても大切なことだ。光が当たることでコーヒー業界の透明度が上がり、持続可能性が高まっていくだろう。
だけど、コーヒーに関わる人たちは農家さんだけではない。もっと言えば、私のように消費者が目にすることのできる人たち(バリスタ・豆屋さん等)以上に、コーヒー業界には関わっている人たちが多くいる。
たとえば、コーヒーメーカー。コーヒーを抽出する機械を作る人たち。ドトールではコーヒーメーカーを自社開発しているということにとてつもない驚きを感じた。ドトールのブレンドコーヒーの値段は250円。コーヒーだけではとてもじゃないが大きな利益を出せる値段ではない。だが、その一杯のコーヒーを作るためには多くの思いが込められている。そのコーヒーを基軸にして、どう継続性を出しているのかなど。
なぜそこまでして自社開発されているのか。それは、コーヒーマシーン導入当初、ドトールの創業者 鳥羽博道氏の思いに耐えうるマシーンが日本に無かったからである。ドトールのコーヒーマシーンには、湯力・挽目・温度・速度といった数多くのセッティング項目が存在する。それらを毎朝セットし、最適な状態にしてモーニングコーヒーを提供し始める。当時はそこまで細かく設定できるマシーンは無く、その日のコンディションに合わせた設定はできなかった。だからこそ自社開発したのだ。どこにもないから自分で作ろうという強い思いで。そんな歴史のある一杯250円のコーヒー。それを想像しながら飲むブレンドコーヒーは格別なうまさがある。味という観点で見れば、正直絶賛するほどの味わいとは思っていない。最近のスペシャルティコーヒーの方がはるかに美味しく感じる。だけど、そのストーリーごと飲むと、心が満たされるような感覚になり、非常に満足感がある。これはただ高額なコーヒーを飲むだけでは味わえない楽しみだ。
コーヒーはストーリーごと楽しむ。ぜひあなたも、そんな味わい方をしてみてほしい。きっと新しい体験ができるはずだ。