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20歳の着物ノスタルジー

ここ数日、今年最初の出張に行っていた。

折しも、着いたその日は成人式。

行った先は、しとしとそぼ降る雨にぬれていた。

霧雨に降られながらも、成人式に向かう着物姿の女性たちが、朗らかにはしゃぎながら歩く姿を多く目にした。

振り返れば、当の私はというと、かつての成人式に出席しなかった。

学生時代は名古屋に暮らしていた。

生まれ育った地域の成人式は、中学から学区外の女子校に行った関係で、何となく行きづらさを感じた。

冬休みに帰省し、そして名古屋に戻ったばかり。地元にこれだけのためにまた帰るのもなんだか億劫。実に、何という思想も理由も無く、なんとなくスルーした。

その代わり、卒業式には虹色の淡い絞りの着物を母から借り、袴をはいてきっちりと満喫したので、さほどの感慨も無く、私の成人式は人生をするりと通り過ぎていった。

時は過ぎ、結婚が決まった折り、結納では梅の刺繍が細かく入った叔母の赤い振袖を着た。

振り返ると、私が人生で着物を着たのは、この2回だけだった。

それから以降も、部下や後輩の結婚式など、チャンスはあったのに、なんだかんだと忙しさにかまけて、結局洋装ですませてしまった。

今にして思えば、母や叔母の着物は祖母が用意したもので、時代が時代だったので、実にいいものだった。

成人式で見かける、二十歳の彼女らが来ている着物の多くは、華やかでポップで。レンタルならではの、決して質がよいとはいえないけれど、明るい現代的なデザイン。

その中にも、確実に「あれは、お母さんの着物かな」という、やや古風で質の良さそうなしつらえの着物を着ているお嬢さんがいる。

そういう光景を目にすると、着物というものは母から娘へ伝承される、いいものだなと思わずにはいられない。

「成人式に出ておけばよかった」というほどの感慨は、いまだにたいして出てこないが、「あのとき、着物を着ておいてもよかったな」と、毎年の成人式のたびに、いつも少しだけ思う。

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今年のnoteの書き方は、昨年同様に、土日祝日と旅に出ている期間はお休み。それ以外の時に書いていこうかなと思います。

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