見出し画像

<おとなの読書感想文>漂流物

石垣島でダイビング中に失くしたカメラが、2年半後、なんと台湾の海岸で発見され、現地で熱烈歓迎されながら持ち主に返還された、というニュースが一時期話題を集めました。
これを聞いて真っ先に思い出したのが、この本。
以前紹介した「やこうれしゃ」同様に、字のない絵本の傑作です。

「漂流物」(デイヴィッド・ウィーズナー BL出版、2007年)

字のない絵本にはどうしても、並以上の「画力」と「演出力」が要求されます。
説明の言葉を排除する分、絵がおはなしを正確に物語らなければならないからです。
ウィーズナーの絵は緻密で美しく、画力の高いことはもちろんですが、ドラマを魅力的に盛り上げる演出力にも長けています。
コマ割を多用した構成は映画のコンテにも近く、この本一冊を読むと短編映画を一本を観たような気持ちになります。


海岸には時々、思いもよらないものが流れ着きます。ゴミやガラクタは
もちろん、中には非常に珍しい、貴重なものも。
海は向こうの陸地とこちらの陸地を隔てる境界です。
が、さらにもっと違う世界、時間や空間を超えて、誰も知りえなかった世界をもつないでいるのかもしれません。
自分自身の一夏の記録が、偶発的な出会いによって、遠く離れた誰かの心を打つとしたら?

一台のフィルムカメラがつなぐ、壮大な海辺の物語をぜひお楽しみください。

でも、実際にカメラを海に放り投げてみることはあまりおすすめできないので、ご注意を。

画材費、展示運営費、また様々な企画に役立てられたらと思っています。ご協力いただける方、ぜひサポートをお願いいたします。