嫌な相手でも、人が善くしてくれたことは忘れちゃ駄目⭐
人が善くしてくれたことを忘れない。
これだけでも心得ていると、ほんの少しでも人生は救われるのではないか?
どんな、嫌な人でも、どんなに合わない人でも、長く付き合っていると一つや二つは、自分に善くしてくれたことが出てくる。
かつて、私には、職場で嫌な人がいた。
調理補助のパートをしている私たちだった。
後から入ってきた彼女は、他の場所でも調理補助をしていて、しかも私はまだ2年にしかならないキャリアだったのだが、彼女の方は、その他の調理場のキャリアで10年というものを持っていた。
当然、彼女には、何もかもかなわない。職場に慣れた彼女は バンバン実力を発揮する。
仕事が遅く、トロい私に業を煮やしてきた彼女は、私に厳しく当たるようになった。
「山田さんと同じお給料なんて納得しないわ」
「山田さん! ぐずぐずしないで!! 」
「山田さん! 一度言ったことは覚えて!! 」
そのうち、彼女は、私に八つ当たりかと思うほど、きつく当たるようになったのだ。
私は、当時(この人はそういう人なんだ。厳しいばかりで、温かい心なんてないんじゃないか)と、思ったりした。
けど、違ったらしい。
この何でもできる“後輩“は、末期のがんだった。
以前から、腹痛を抱えていた。その中での業務で、気が荒れていたらしかった。
彼女が健康診断に行くと「膵臓がんステージ4。全身に転移」という診断だった。
しかし、この職場では、なかなか代わりの人員が補充できず、彼女は、職場での常識の通り、辞めるまで3ヶ月の間、そこで働き続けた。
激痛に耐えきれず、うずくまる彼女も見かけた。
彼女は、3ヶ月ちゃんと勤め上げた後、入院し、治療をしたが、半年後帰らぬ人となった。
私は、怒鳴られたことも忘れて 涙を流した。考えてみれば、彼女はそれなりに私のことを気遣ってくれていたのである。
そのころのチーフは、怖い人だったが、その"後輩"が間に入ってくれたり、
私が、他の人の代わりにシフトに入ると、差し入れを持ってきてくれたりした。
それを忘れていた私は 単なる恩知らずだった。
私は、忙しさにまぎれ、疲れに逃げて、怒鳴られると恨んでた。
他人に善いことをするのは、それなりにモチベーションが要る。それが、自身の体調が悪いなら、尚更だ。
私が、ひとに善いことをして、忘れられたら悔しいだろう?
なぜ、わかってあげなかったのだろう。なぜ憎んだのだろう。
"後輩"は、教訓も遺してくれた。
ひとが、自分に善くしてくれたことは忘れちゃ駄目。こちらが、忘れられて嫌なら忘れちゃ駄目。
忘れてなければ、もう少し関係は変わっていた筈……してくれたことをどんどん忘れるから、人間は関係が変になる。
その"後輩"を時々思い出す。自身の苦しみの中で、私を思い遣ってくれていたのに。
私は、単なる恩知らずだった。
かしこ
画像は、hina.aさんの
「桜の木の下で」です
ありがとうございました🍀
©山田えみこ.2023.1.3