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【小説づくり習作】少年ハードボイルド「最後の時に…」4〜再会〜

 和成は彷徨い続けたーー。
 東京の街中を、路地裏を、川沿いをーーー。
 あてもなく、あてもなくーーー。

 二日が過ぎた、三日が過ぎた。
 所持金は、底をつき、空腹感にフラフラになりながら……

 傷口は、開きかけていた。
 家や元の場所に帰る気にはなれなかった。

 自分の話を果たして警察が聞いてくれるかどうか自信がなかった。

 このまま、母親と妹の居る場所へ向かいたかった。

 なんの希望もなかった。


 家では、本当の父親である、母のかつての初恋の人である父親の、職業と同じ医者を目指して勉強していた。

 母は政略結婚で、義父である五代宗介は和成の出生の秘密を知って浮気をしていた。

 和成は、母を楽にさせてやりたかった。

 まだ、幼いちいさな小学生の妹は宗介の実の子で、
 とても和成に懐いていて、
 和成は、可愛くて仕方なかった。

 宗介は、その真希まで殺してしまったのだ。

 (かあさん……、真希…………、二人のもとへ行きたい)

 和成は、願った。


 しかし、死にきれなかった。


 追跡の手が、和成を追って来たが、
 彼らは、和成を罰しようとずる訳ではなく、
 和成を 助けようと、やってきたのだった。
 和成の家に仕えていた者が、和成の人柄を認めて慕い、

 救いの手を差し延べてきたのだ……



 宗介を殺した犯人は、和成とは別人と思われていた。 


 和成は、救われた。



 が、想いは満たされなかった。





 何ヶ月か経った頃、




 和成の傷はすっかり癒えて、




 和成は、或る港に来ていた。



 夏近い爽やかな風に、夕焼け雲。


 ウミネコや、かもめ、トビが舞い、

 とおくに外国の船が、渡ってたーーー。



 和成は、港の公園で 手すりにもたれてぼーっとしていた。


 和成の生活は、家族がいない他は元通りになっていた。


 学校でも、友人間でも、もう元の平穏さが波が引くように戻っていた。



 けど、和成は満たされなかった。



 (もう、大事な家族が無くなったーーーーーーー)






 和成のうしろでは、


 白い帽子を被った白いワンピースの少女が、ちいさな子供と遊んでいた。


 そのさざめきを聴きながら、

 和成は、ふと(克己の声に似てる)と思った。

 「そんな筈はないか」

 と、頭を振ると、

 「ーーーーそんな筈あるんだよ」


 と、
 声が………





 少女は、やおら立ち上がり、白い帽子を脱ぐ。
 日に焼けた顔に白い歯をのぞかせて。

 「え?」

 「俺だよ、和成。ずっと、追けてたんだ」


 (なぜ、早く気付かなかったんだ)と言いたげに不貞腐れて言う。






 「…………克己、ーーずっと会いたかった」







 「和成………俺と一緒に来るか……?」









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〈エピローグ〉




 秋も入り口、僕は始発電車に乗っている…カタン コトン…音がする。


 とても 眠たくて…

 でも、朝の白い住宅…景色を観ていたくて…… 
 そして、僕は 改札口を抜ける……



 
 そこには、ロングヘアの少年が立っている……。親しげに 微笑みをながら…





     笑顔で…………………………







            完結

画像は、スナフさんの、
    「横浜は山下公園あたりをぷらりぷ 
     らり」です。
         有難う御座います。                      


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