
ボクは徳永進一!叔母さん盗るな!ー7ー
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ボクは、意固地になっていた。美奈さんは、ボクの叔母さんで、ボクとは、三親等であるから、結婚は出来ないにしても、竜二に素直に渡す気にはなれないでいた。
竜二は、学歴も高くない、カッコよくない、そして、なんてったって「粗野な人」なのだ。オシャレな美奈さんには、相応しくないんだ!
ボクは、クサクサして、独り歩いていた。今度の対決は「オセロ」らしい。これなら、従兄弟や近所の子、妹たちと、小さいときからやっている。
あの「粗野な」竜二には、勝てるかもしれない。
ボクは、学校から家へ帰って来ている途上。
しゅぼぼぼぼぼ……。
何処かで聞いたことのあるエンジン音……。
「よおー!坊主ー!」
竜二の軽トラだ。
竜二は、いつも恥ずかしげもなく誰彼構わず声を掛ける。ボクと竜二が知り合いになる前から。
ボクは、こういう図々しい奴が厭なんだ……。
ボクと、竜二は、同時にボクの家に到着した。
(おかえーりなさい、君の声はぁー)
竜二の音楽ツールから、嵐の「おかえり」という曲が流れてくる。いや、絶対この家の縁者から、お前にそんなセリフは言わせないぞ!
………、ダイニングテーブルに陣取った竜二とボクは、ピリピリと、殺気に包まれ、勝負は、始まる……。
竜二は、勝負を進めていくうち、四隅の角のすぐ隣のマスに駒を置くヘマを2回くらい繰り返した。愚かな奴め……そこに置くとほぼ確実に角を敵に取られる。それも、極端に簡単にだ。
ボクは、心のなかでほくそ笑んだ。
が、竜二は不思議な取り方で、角を全部とり、あっという間にオセロ盤の上を 自分の駒の色で埋め尽くしてしまった。
ああ……………
こ、こいつは、魔法使いか……?
惨敗だった。
こんな酷い負け方をしたのは、初めてなくらい…………。
角の近くに堂々と駒を置いて、なおかつ、角もとり、最後には試合をひっくり返す奴は、竜二が初めてだった。
決闘の3戦が終わった。
1対2で、竜二は勝った。
振り返ると、美奈さんは両手で拝むようにし、目をキラキラさせて、竜二を見ている。
ボクのだいじな、だいじな美奈さんが……竜二のことを……。
つづく
©2023.7.21.山田えみこ