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【創作小説】見上げれば、碧いそら④
今までの話は、こちらに収録されています⬇
「ほーい」
「はーい」
私は、なんとか飛んでくるバレーのボールを拾い、次に繫ごうとしていた。
しかし、私たち2軍チームは揃って運動オンチ。全然パスが繋がらない。
「ほーい」
「はーい」
球技大会は、1週間の期間に渡ってのトーナメント制だ。
球技大会が始まった。
……番狂わせが、起こった。
我が6組、球技大会の女子バレーボールの運動神経がいい選抜チームが、1回戦で敗退した。
こんなことがあるのか?
彼女等は、いちように運動神経が優れてる。それを自慢にも思っている子が多かった。
それが、1回戦で敗退した……。
他の組と対戦した私たち2軍チームは、2回戦進出。
何が起こった。
2軍チームに来た、中学のときにバレーボール部だった加藤さんが、ボールを拾って拾って拾いまくったのだ。
相手のチームは、他のクラスの平凡なチーム。選抜でも補欠でもない編成のクラスのチームだったが、変に繋いでいくとやはり素人の高校生なので相手の子たちは繋げることができない。
私たち6組の2軍チームは、いちように高揚した。
「勝った……私たち、初めて運動で勝ったよ? 」
興奮して、頬を紅くし、手を顔に当てて泣き出しそうな子もいた。
加藤さんが拾いまくり、そして、私……一応空手を習っていたのだが、スパイクなどは人より鋭くできる私が、思い出したようにスパイクを決めていた。
選抜チームは、(あいつら、どうしてこっちに入れなかったの? )と、揉めてる素振りもあり。
私は(後悔しても遅い)、と、横目で見た。
親が、お金持ちや高学歴持ちで、小さい頃から恵まれているあの子たちとは違う。私だって、萌奈だって、塾に頼らず自分で勉強してここの高校に受かったんだ。
2軍チームの他の子は、親が金持ちや高学歴持ちでなかったり、運動神経が悪かったりした。
(学校の中まで、そんな階級制度なんて)
馬鹿馬鹿しいと思ったが、こんなもんか?
ところが、………。
次の日、球技大会の試合前に、グラウンドに割り当てられた6組のバレーボール練習場が、泥だらけの水浸しだった。
昨日まではよく晴れていて、こんなことは有り得ない。それも、その練習場だけ。
「なにこれ? 」
背後でくすくすと嗤う者あり。
うちのクラスの選抜チームだ。あの子たちのやったこととは思いたくないが、またしてもこちらの闘志に火が灯る。
挙句の果て。
「2軍チームじゃ、もう絶対勝てっこないわよねぇ。私たちより劣ってるくせに。これ以上、勝ったら赦さないわよ」
やっぱり、こいつらのせいか……?
(ガツン! )
校庭の灯りの柱が、バラバラと倒れた。
ちょっとした電柱のようなものだが……
私の空手チョップで。
つづく
©2023.11.30.山田えみこ
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