【創作小説】峠の庵 恩返しー番外編④ー
番外編、最初のお話からは⬇
前回のお話⬇
本編、最初のお話からは⬇
峠の庵のたぬき母子は、庵の親父と女将の霊といっしょに仲睦まじく、ほこほこと、しあわせに暮らしていた……のに、……
このあと、大変なことが起こるのでした。それは、村の話し合いのあとに起こりました。
村人たちは、集まって話し合いの会を設けていました。みんな、困り顔。
「わしたちゃ、あの たぬき母子が、居なくなるのは寂しゅうて。もし、花火でびっくりして逃げてしまったら、どうしよう? 」
その会合に、吾平が居ました。
吾平は、悪いやつではありません。けれど、眼がギョロリとしていて、頬がこけて、痩身なその姿は、どうしても、(とくに子供たちには)受けがよくありません。どうしても、悪人に見えてしまうのです。
ただ、昔から、この村に居る者だったら、分かります。吾平は、じつは、いい奴です。
……その吾平が、言いました。
「あゝ、それなら、たぬき母子を祭りの間、耳に栓をして、小屋の中に居てもらったらどうだろう? 花火の音も怖かろう。逃げられるのは、みんなにも辛いから」
みんなは、(それは、ごもっとも)と、頷いたのでした。
「それでは、たぬき達を祭りの前に捕獲して、小屋に居てもらうしかない」
村の佐平が、言いました。
「なんとか、そうしよう」
ーいえ、それは、立派な拉致ですー
どうなるか、大体 想像がつきます。
ーー作戦、当日ーー
祭りの日になりました。悲劇の日です。これからのたぬき母子にとっては、悲劇の日だったのです。
だって……
その日のたぬき母子は、るんるん、として、祭りに行く支度をしていました。
母だぬきは、きれいなお母さんに。
子たぬきは、いつもの村の小僧に。
二人共、いえ、二匹とも、その姿はたぬき母子の化けた姿ととうにバレているのに、悲しいかな気づいていません。
「おーい、子だぬきや。用意はいいかい? ちゃんと、草鞋も履いたかえ? 」
「かあちゃん、とっくに支度は出来とるけん。葉っぱのお金も用意しとるけん」
たぬきの母子は、仲良く会話していました。
二匹は、ウキウキ、ウキウキしています。
「まつり、まつりと言うのね? あの、賑々しい集まりは、山の上から憧れていた。ヒトの楽しい、賑やかな集まり……」
目がうるうる、うるうるしてくるのでした。
「たぬきには、あんな楽しそうな集まりはない。せいぜい、月夜の狸囃子の会だ」
ー……、ちゃんと、有るじゃないですかー
たぬき母子は、用意を済ませました。
そして、親父と女将の人魂が、ゆらゆらする、薄暗がりの庵の戸を開けたとき、やつらが居たのです!
ねずみ色のトンガリ三角帽を被った、数人の男たちが、大きな松明と棍棒を持って、待ち受けていたのです!
「なによ!? あんたたちー!? 」
母だぬきは、子だぬきを庇い、牙を剥き、大きく威嚇しました!!
(キーッ!!! )
つづく
トップ画僧は、メイプル楓さんの
「みんなのフォトギャラリー」より、
いつも使わせて頂いて、有り難うございます😊✨
©2024.8.19.山田えみこ
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