【創作小説】見上げれば、碧いそら⑧
前回まで、こちらのマガジンに収められています。⬇︎
小学校の授業中だった。
体育の時間。
私たちは、わた雲のむくむくと流れる青空のもと、ポートボールをやっていた。
けれど、
ゴールの役割をしている女子が、私のボールを取らない……
落して、
落して、
また 落とす……
私は、自分がゴールすることを諦めて、
他の子にゴールを投げることを譲った。
途端に入りだす得点。
私は、いつも「運動も勉強も出来るなんてずるい」
と、言われていた。
いつも、言われていた。
私、里帆は、家の6畳間で目を覚ました。
夢だった。
4畳半と6畳間の1DKの木造アパートにお母さんと妹で住んでいる。
近くを、鉄道が物凄い音を立てて通り過ぎる。
勉強が、これでは家で なかなか出来ないので、いつもは図書館に入り浸りの生活をしていた。
家事で、食事作りが私の係。妹は、洗濯係だ。
小学校では、イジメられたが、中学に上がってからは教室であまり発言をしなくなった。
授業でも、学級会でも。
そしたら、途端にイジメはなくなり、男子にはモテ始めた。
いや、そんなことはどうでもいい。
今日の放課後は、折角ここまで来た球技大会、バレーボールの敗者復活戦。
「落ちこぼれグループ」と言われた私たちの敗者復活戦だ。
これに、勝てば3位以内に入れる。
それを チームの他の子は楽しみにしていた。
運動で、なにかの賞に入ったことがない子が殆どだった。
私は、空手の腕があって、もう少しでボールに当たれば「空手チョップ」で、物凄いスパイクが打てそうだった。
だけど、……。
お腹が痛い。
この間からお腹が痛いのだ。
時計を見ると、試合の10分前。
けれど、私はずっとトイレで動けなかった。
(ごめん、みんな……)
コートの近くでは、萌奈が心配してキョロキョロしていた。
「里帆、遅いな……」
「遅いね、……どうしたんだろう? 」
「あと、5分で始まっちゃうよ? 」
私は、まだトイレにいた。
(いつも、みんなの応援団でいい。自分が、目立たなくてもいい。上に出なくてもいい。自分だけ目立って、みんなに嫌われるよりは……)
私は、自問自答していた。
「それ、思い上がりじゃない? 」
萌菜の声がした。
トイレの外で、萌菜が私の独り言に対して喋ってる。いつの間に?
「そんなの、結局は上に居るものの思い上がりよ。堂々と、周りと勝負したら? 本気出すのを待ってる人も居るのよ? 」
私は、ハッとしていた。
「私を同じ土俵に上げて。里帆は、何処か いつも手抜きしているわ。私たちから逃げてるのよ。勝負してくれないのよ。それこそ思い上がりじゃない? 」
萌奈は、涙声だった。
つづく
©️2023.12.5.山田えみこ
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