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【創作小説】私の好きでも嫌いでもないこの季節⑫
前回、こちら⬇︎
最初からは、こちら⬇︎
私は、カムフェンの運転する車に乗っていた。
いつの間にか、カムフェンは、私を誘うようになっていた。2人で、いつの間にか誘い合うようになり、
時々、2人でフラフラとドライブに出かけるようになっていた。
今日は、あてもなく、ドライブへ。
軽自動車だが、最近多い、ホンダのノート。
カムフェンは、手慣れた様子でカーブを切る。国際免許を持っていた。
日本に来る前に免許をとり、もう、3年も運転しているという。
夏の国道、ちょっと大きな川沿いを疾る。後ろから、何となく、イライラとした様子が如実にわかる、一台のフィットが追い越していった。揺れる柳の下。仕事へ行くのに急いでいるのだろうか。
私たちの前では初心者マークをつけた、やはり、軽自動車のミニバンワンボックスのルーミーがどことなく、愉快な気持ちを醸し出しながら、疾っていた。イライラのフィットが追い越して並ぶ。
カムフェンも、周りの車も、この2台を気をつけて窺っていた。
初心者マークは、何かヘマをするかもしれないので、一応のこと気をつけるのである。イライラの車は、初心者マークがトロトロ疾っているのに、ヤキモキしているのか、再び、追い越そうとして、車体を揺らす。
周りも、少し、この車を窺っていた。
工事車両が、あった。
初心者マークは、ウィンカーをつけずに隣車線へ移った。(あ、やらかした)。
イライラの車にぶつかりそうになり、すかさず、けたたましいクラクションを鳴らす。
初心者マークが、驚いて急ブレーキをかける。
ぶつかりかけて、イライラの車が停まる。(やばい)。
初心者マークが止まったところへ、イライラの車から、会社員が降りてきて、猛抗議をしに行った。目も当てられない。
初心者マークの車から、運転手を引き摺り下ろす。
周りの車は、哀れそうな目を向けるが、どれも通り過ぎていく。触らぬ神に祟りなし。
カムフェンは、車を疾らせ、少し行った道の端に停めた。
イライラの車のサラリーマンは、初心者マークを殴りかかる勢いだ。
初心者マークは、悲鳴をあげて、頭を庇う。
(ひっ! )
イライラの会社員の腕が……空を回ったところで、誰かに腕を掴まれる。
カムフェンが、腕を掴んでいた。
カムフェンは、ラオスで武術を習っていた。スポーツマンめいた体躯は、そのせいだった。
難なく、止めに入って、イライラの会社員を止める。
そして、何やら、3人で話し始めた。けんけんごうごうの雰囲気が伝わる。
私も、車から降りてこの様子を窺う。通行車両の物見高な、そこはかとない渋滞。
しかし、この事態はすぐ収束する。カムフェンの
「そんなに、急ぐなら、さっさと行けばいいじゃないですか。こんなンことしてる間に、お客さん、逃げちゃいますよ」
という一言。
「この初心者マークには、警察へ行ってもらいますから、それでいいでしょ? 」
初心者マークは、震え上がる。
ベテラン、イライラの会社員は、納得して去っていった。後には、震え上がった初心者マーク。
カムフェンは、にっこり微笑んで、振り返り、
「大丈夫、『嘘も方便』。あなたを警察に突き出しはしませんよ」
カムフェンは、白い歯を見せて笑う。にっこりと。浅黒い肌に、ちょっとふくよかとも言える、肉付きのいい身体で。
つづく
つづきは、こちら⬇
©2024.8.27.山田えみこ