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あなたたちだけは生きていて

山本周五郎の小説を読んだ。「ちゃん」という話だ。

その話は、ある少し前の時代の 実直な鋳物鍛冶のお父さんが、簡単にできる鋳物の流行に遅れを取り、貧乏暮らしを家族6人で余儀なくされる。
しかし、最後には家族全員でチカラを合わせていく、というものだ。

その話というのだが、お父さんがかつての同じ のれん内の仲間に侮られ、悔しい気持ちで盗人までにも身分を下げようとする。しかし、そこで家出までしてそういう自分を後悔し、出ていこうとしたお父さんを、子供たちが嗜める。まだ、上は16。下は3歳だ。

みなで、働いてお父さんを守る、というのだ。

奥さんもお父さんを守る、という。家族全部で過ごせないくらいなら、皆で今住んでいる長屋を出ようと言う。

決してお父さんが、盗みを働いたわけでない。断っておくが。お父さんはそう思って言っただけだ。

しかし、この家族で泣けるのは、家族が離れるより、子供たちも一身になって働こう。助け合おう、というところ。お父さんだけに頼り切らず。

実直だけで、流行り物を作ることに手を出すのには納得せず、自分の" 伝統を守る" 気持ちに、正直でありたい。
そういうお父さんを支えて、家族は一緒に生きていこうとする。

この話の家族の近所の長屋の人たちも、この家族が好きだ。

温厚で、人に迷惑をかけずに実直に生きている。


私は、現在 夫と姑と暮らしている。
姑は、言うのも抵抗があるが、少し痴呆が出始めている。何度も、同じことを確認もしなければならず、何度も話す、何度も忘れる。

私のじつの親は、2人とも痴呆になり、老人ホームに入っている。

私の夫は、コロナの後遺症の鬱で、社会にもそれはまだ理解されていない。

暗いことばかり書いて申し訳ないが、それでも、私は、家族が一緒にいなければ生きていけないと思う。

10代から20代にかけて、私は気の狂うような孤独を味わった。

それくらいなら、家族が、いるほうがいい。
ただ、健康で生きていてくれるだけでいい。

だから、言った。私は今日、夫との帰り道で。
「生きていてくれるだけでいい。私もパートで働く。あなたもバイトでいいから、もうフルタイムで働いて無理しないでいい。それでいいじゃない? 」


トップ画像は、メイプル楓さんの
  「みんなのフォトギャラリー」より、
   有難うございます🙏🍀

©2023.11.8.山田えみこ    

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