美味しい記憶 再び海へ
タコが送られてきた。
東北の親戚からだ。
冷蔵便の発泡スチロールをあけると、大きな茹でタコが出てきた。「え?まさか丸々一匹?」
足を数えると8本あるし、頭も付いてる。
1人暮らしの我が家では、到底食べきれない。タコ一匹。
「どうしよう。冷凍出来るか検索だな。」
結局、足を一本ずつラップでくるんでジップ付きのビニール袋に小分けして冷凍出来ることがわかり安心する。
送ってくれた従姉妹に電話すると、「今年はタコが豊漁なんだよー。」と教えてくれた。
牡蠣も身の詰まった大きな美味しい物が採れているらしい。
東日本大震災で壊滅的な被害を受けた東北の太平洋沿岸地域だが、震災後には牡蠣の筏の数を減らす工夫をしたら、震災前には3年間かけて育成していたものが1年で大きく育つようになり、
味も良くなったとの事だ。
津波が押し寄せる映像をただ見ているしか出来なかったあの日、多くの親戚や友人、知人の安否も分からず眠れない夜を過ごした時には、こんな事を笑いながら話す日が来るとは思えなかった。
10年の間に亡くなってしまった親戚や友人、知人も残念ながらいるけど、新しい命の誕生もあるし、豊かな海の恵みも戻っきた。
今はコロナ禍で先の見えにくい状況だけど、きっと後で振り返って「あの時こんな風にハグし会える日が来ると思わなかったよね」とぎゅーぎゅーハグし合いながら話せる日が来ると信じてる。
だから、私は今日も解凍したタコをお刺身用にスライスし、たこ焼き用にブツ切りにする。
熱々のたこ焼きをフウフウしながらほおばる時、それが私のおいしい楽しい幸せ時間だ。
#エッセイ #おいしいはたのしい #フード #宮城県南三陸町
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