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計算論的神経科学 第3章-2

「計算論的神経科学」(田中宏和)の第3章(p67〜)についてメモ書きする。他の動物に対しヒトは新たな環境に対する適応能力が非常に高い。本noteでは運動適応の過程を記述する状態空間モデルの柔軟性からまとめを行う。

状態空間モデルの柔軟性

 状態空間モデルは物理過程と観測過程を含み、状態変数を自由に定義できる点から様々な現象に適用可能である。さらに、異なる時間ステップを含めることで過去の状態まで次元を拡張した状態変数を導入し、観測変数が遅れを含める場合でも記述が可能となる(式(3.19)-(3.22))。ここで(3.21)の
\left( \begin{array}
A & 0 \\
0 & A
\end{array} \right)
は状態変化を示している(行列式の入力がわからずtex形式で記述しました)。

隠れマルコフモデル

 現実の状況をモデル化する上で外乱などのノイズを式に加える必要がある。観測方程式に観測ノイズを加えたものを確率論的状態空間モデルといい、時間発展方程式及び観測方程式にに過程ノイズw_k及び観測ノイズv_kをそれぞれ加えると式(3.23), (3.24)となる。ノイズはガウス分布に従うと考えることが多く、それに従い繊維確率及び観測変数もガウス分布に従う。また、マルコフ性は過去に依存しない(状態が直接観測できない)ことを指し、マルコフ過程とはマルコフ性のある確率を指す。

運動学習

 運動学習はキネマティック/ダイナミックな運動適応及びスキル獲得に分類できる。運動適応の学習曲線は比較的短期間で頭打ちになるが、スキル獲得は学習が進むにつれ学習は遅くなるがその期間は非常に長い。状態空間モデルの状態変数xを脳内の記憶過程とし、実験者が操作できる摂動をu、被験者の運動出力をzとすると状態空間モデルの基本形(3.28)で書くことができる。ここで、記憶過程に対しAが記憶の保持率、摂動に対しBを学習率である。式(3.29)において、bが学習寄与率、uが外乱(外的要因、実験者がコントロール可能)で、|a|<1よりkが増えるとa_kは0に近づき一定の割合で学習速度が遅くなっていく(3.30)。
 粘性力とは速度に比例する力のことで、ヒトは粘性場の影響下でも真っ直ぐの到達運動が可能である。外力粘性場に対する運動適応を可能にするメカニズムは①関節をガチガチに固くして外乱の影響を0にする、②外力粘性場を学習し、打ち消すような反対向きの力を生成する、の2つである。キャッチトライアルと呼ばれる試行より、脳は課された外力場を打ち消すような力を生成していることがわかる。運動汎化とはk回目の試行で得た誤差が他の運動方向にどのような影響するかの尺度である。
 ニューラルネット の学習則において
n_i=Σ[j]ω_(ij)a_j
でここでω=weight, a=activationである。これを考慮しある思考での力の誤差dfが次の施行に与える影響は式(3.35)で表すことができる。
 運動適応の計算は小脳でも行われており、ダイナミクスとキネマティック運動適応は異なる脳部位で処理されている。自発回復とは条件付けされた反応を消去手続きによって反応が起こなくなるまで消去しても、条件刺激を提示すると再び条件反応を示すことである。多時間モデルでは遅い過程と早い過程が逆符号でも同じ大きさを持っているからと説明されるが、これは実際の運動ありきの話である。



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