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計算論的神経科学 第2章-2(ドライブ/ポントリャーギンの最小原理)

「計算論的神経科学」(田中宏和)の第2章に出てくるドライブ/ポントリャーギンの最小原理(p51〜)の導出をAppendixC & 元論(Dongsung Huh et al., 2016)から理解し直そうの巻。 

ドライブとは

ドライブとは躍度最小モデルにおける保存量のこと(2.22)。ラグランジアン=運動E-ポテンシャルEであり、ドライブはラグランジアンが時間に陽に依存しない場合だと考えれば良い。以下論文(Dongsung Huh et al., 2016)のまとめです。

Results

ドライブとはコスト関数Lの最小積分を時間微分したものである[1]。さらに、ドライブはハミルトニアン(の符号を変えたもの)で、[2]式においてpはラグランジアン、qは状態変数、uは制御変数を示しており運動軌道の最適化問題において
D=H
D=H_t=p・f_t - L_t
である。そのため、時不変モデルではf_t=L_t=0でdD/dt=0が成り立つ。

Minimum-jark control(躍度最小モデル)は最適な手の動きの幅を算出する最適化モデルであり、躍度は加速度の時間微分値を意味する。このモデルは線形時間微分モデルであり、ドライブは[3]式で示される。

Local Regularities

そもそもドライブは外部要因を想定せずに自己ペースの動き(internal motivationによる生物学的な運動制御への働きかけ)の規則性を示しおり、を外部タスクに基づく理論の補完をしている。
本セクションの残りではドライブと躍度最小モデルを使った手の動きの説明を解説している。

Global Regularities

Local regularitiesが個々の動きの軌道について説明しているのに対し、global regularitesは複数の動きを説明する。Local regularitesではドライブ(の保存則)と最適制御モデル(optimal control model)を用いていたが、最適制御モデルは個々の最適化問題を切り離して説明されるためglobal regularitiesには適用できない。一方、ドライブは時不変の動作(movements)に対し適用可能であり、global movement variablesの予測を行う。したがって[4]式より描画運動の冪乗則([7]式)が導かれる(「計算論的神経科学」内(2.21)式の導出同様。)。さらに、この1:3比率(length, time dimentions)は様々なコスト関数に当てはめることができ、ドライブ(の保存則)はサイズ対動作速度の冪乗則もこれに従う。

(次のセクションは飛ばします)

Discussion

ドライブの、ここがすごいよ!は以下の通り。
・動作を生み出すためのinternal motivationを説明する
・サイズと運動速度の関係を示す(global regularities)
・他の理論と異なり、ドライブを用いることでglobal regularitiesを外部運動タスクを使用しない(代わりにlocal regularitiesで使用した保存則で説明する)([6]式)
・脳システムにおけるドライブでの生物学的根拠あり
・ドライブベースのフレームワークは外部要因に影響される動作に一般化可能である
また、ドライブは構成要素内で共通の値を保持するため運動制御の時間の二重変数として定義される(i.e., ガスの容量と圧力)。

Mαterials and Methods -作用

q:状態変数(body state)
u:制御変数(control signal)
L:コスト関数
をそれぞれ示しており、A(作用)をLの時間[tバー t_0]微分と定義する。ハミルトニアン([10]式)はラグランジュ(p・f)からコストを引いたものであるので、Aにラグランジュ(p)を取り込むと[9]式となる。
[11]式はAの時間微小変化を示しており、ハミルトン・ポントリャーギンの最小原理(運動方程式をみたしながら評価関数を最小化する方法)より[12]-[14]式は任意の変分dp、dq、duに対する積分の停留条件(最小条件)(=極小値が満たすべき必要条件、変分法)を示す。よって、[11]式は[15]式に書き換えられ[16]式が成り立つ。

Materials and Methods - ドライブ

ドライブは最適作用(optimal action)の時間に対する偏導関数で[17]式で定義され、さらに[15], [16]式より[18]式(D=H)で表される。これよりドライブの(全)時間微分は[19]式となる。

Materials and Methods - 躍度最小モデル

躍度最小モデルの評価関数は
dq/dt=Aq+Bu
L(q,u)=u^2/2
で表される(「計算論的神経科学」内 図2.4参照)。さらにqについて
q=(q_1 q_2 q_3)' = (x dx/dt d^2x/dt^2)'
と表され位置、速度、加速度が成分の3次元ベクトルである。また線形なのでもちろんA, Bは文中の行列で示され、これを[10]式のハミルトニアンを代入すると
H=p・f - L= p_1・q_2 + p_2・q_3 + p_3・u - u^2/2([22]式)
となる(特に難しい計算では無い)。
これよりドライブは速度ベクトルを用いて[23]式で表される(計算論的神経科学(2.23)式)。

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