【脳波解析】コネクティビティ解析/ボリュームコンダクション
本ページでは「Analyzing Neural Time Series Data Theory and Practice」(Mike X. Cohen and Jordan Grafman)のChapter25をベースに、そもそもコネクティビティ解析とは?何を気をつけるべき?ボリュームコンダクションとは?を説明していきます。
前回のnoteはこちら↓
コネクティビティ解析とは
そもそもコネクティビティ解析とは、同時に複数の電極の信号に着目する解析で、線形/⾮線形関係なく、位相/パワーに基づいて行います。これは、離れた脳部位でも、同時期に同じ位相で活動している箇所があれば、その間で何らかの情報交換や同期的活動が行われているという仮説をもととしています。
2変量に着目する理由
実際には複数箇所で相互作⽤は起きていますが、殆どのコネクティビティー測定は2変量(2つの脳部位/電極)です。それには3つの理由があります。
1) 複雑な活動を簡単な2変量に分けるのが簡単
2) 実際に多くの認知機能において2変量で接続している
3) 実践的な意味で理解/導⼊/視覚化/統計的定量化が簡単
また、2変量コネクティビティ解析の結果が出た!解釈するぞ!って時に、気をつけなければならないことが5つあります。
1) 位相のラグはあんまり気にしなくていい
大事なのは、時間/トライアルでラグが⼀貫していることです。そのため、ラグの解釈をしっかり行う必要があります。
2) 位相のラグは必ずしも因果/直接的な関係を意味しない
AとBという部位に着目するとしましょう。AとBでの位相のラグの一貫性が見れたとしても、AからBに影響が及ぼされているのか、BからAに影響が及ぼされているのか、ラグのずれだけではわかりません。そのため、直接的なコネクティビティーを⾒たいなら、位相⾓分布(phase angle distributions)やパワー相関ではなく、グレンジャー因果やphase slope indexを用いましょう。それぞれのコネクティビティの概要は次のnoteで、詳細は今後のnoteで説明していきます。
3) 位相/パワーベースのコネクティビティーは異なるパターンの結果を出すことがある
これは、位相とパワーは独⽴した成分だからです。もっというと、位相はニューロン活動のタイミングで、パワーは発⽕ニューロン数で決まります。いつどっちを使えばいいのかは特に決まっていないのですが、位相に用いる方が一般的で、位相は(瞬間的に)連続的なコネクティビティを、パワーは時間的なオフセット/ジッターに着目します。
また、独立した成分と言いつつも、Cross frequency Couplingでは、パワーと位相の同期性に着目します。というのも、先述の通り、位相もパワーも、結局はニューロン発火に寄与するからです。
4) 機能的/有効的なコネクティビティーの区別が可能
機能的コネクティビティーは、異なるネットワークの線形/⾮線形の共変動(相関関係)を指し、有効的コネクティビティー は、ネットワークの因果的影響(因果関係)を指します。自分が扱うコネクティビティはどっちか、ごっちゃにしないよう気をつけましょう。
5) ボリュームコンダクションによってコネクティビティの解釈が難しいことがある
どういうことでしょうか?次のセクションで説明します。
また、コネクティビティ解析に対し、Causality Analysisというものがあります。Causality Analysisでは、コネクティビティ解析でわかること(脳の各部位間が関連して活動しているかどうか)に加えて、流れを見ることが出来ます。 Causality Analysisの例として、グレンジャー因果及びPhase-slope indexがあります。グレンジャー因果では、時系列データから変数間の因果関係を、Phase-slope indexではコヒーレンスの位相の符号を調べます。この2つに関しても、今後のnoteで詳細を説明します。
ボリュームコンダクション
ボリュームコンダクションとは、一つの活動源の信号が、複数箇所に跨って乗ってしまうことです。乗り方としては、A) 活動源の影響が、そのまま複数の表面に乗る B) 頭皮上の一箇所に信号が到達してから、複数箇所に派生する、という2つが考えられます(画像はイメージです)。
ボリュームコンダクションにより、信号の発生源はどこなのか、特定が難しいため、ラプラス変換などを用いて、深部の信号を最低限に、表面を最大限にする必要があります。
発⾒したコネクティビティがボリュームコンダクションのアーチファクトの場合に予測できる4つのこと
発⾒したコネクティビティがボリュームコンダクションのアーチファクトの場合に予測できることが4つあります。
1) 0/πの位相のラグ
volume-conducted アクティビティが同時に複数の電極に記録されてる可能性があります。ただ、めちゃめちゃ早いガチなコネクティビティの可能性も否めません。
2) 近くの電極とやたら強い&電極間の距離と共に弱くなるコネクティビティ
3) 正の相関
時間領域コネクティビティでは、2電極は双極⼦のそれぞれ極にある時、負の相関を⽰します。
4) 同じ周波数帯でのコネクティビティとパワーの正の相関
ボリュームコンダクションによるコネクティビティの場合、パワーとコネクティビティの変化が相関するはずです。
ボリュームコンダクションを減らすためにできる10このこと
ボリュームコンダクション、いいことなんもないですよね。ノイズだもの。ってわけで、ボリュームコンダクションを減らす方法を10通り紹介します。
1) コネクティビティの前に空間フィルタをかける
空間フィルタはボリュームコンダクションの影響をなくすことはできませんが、減らすことはできます。空間フィルタには、サーフェスラプラシアンや、source imagingがあります。
2) 周波数/時間周波数領域の負の相関のみを調べる
負の相関は正の相関とは異なり、タスクと仮説のみに依存しています。
3) ラグのあるコネクティビティを調べる
ボリュームコンダクションは瞬間的であるときが多いためです。
4) 単⼀条件ではなく、複数条件で違いをコネクティビティでみよう
ボリュームこんだクションにかかわらず、ノイズなどのバイアスが全条件に跨って乗っている可能性があります。そのため、複数条件で違いを見ることで気にしなくても⼤丈夫になるかもしれません。
5) Cross-frequency correlationを実⾏
例えば、1つの電極の6Hz/20Hzの活動が相関しているかを調べます。相関してなかったら嬉しいです。相関してたらボリュームコンダクションの可能性があります。
6) コネクティビティ/パワーの統計的/量的の分離を検定
これには、いろんなやり⽅があります。例えば、AとBの電極を⾒たとき、コネクティビティは増加したけどパワーは減少したらokです。
7) 位相のラグが0 /πではないかどうか
ボリュームコンダクションの可能性を消せます。ただし、ラグが0/πの真のコネクティビティを消してしまう危険性もあります。
<位相ベースで使える>
8) ボリュームコンダクションに影響されない測定を行う
位相ベースのコネクティビティで使える
例えば、imaginary coherence, phase-lag index, weighted phase-lag index, phase-slope-indexがこれに当てはまります。
<パワーベースで使える>
9) “ある電極”を⼀定に保つ2つの電極の偏相関を計算
ここで、“ある電極” とは、1つの電極の隣接電極を指します。偏相関係数とは、2つの変数の相関が第3の変数によって⾼められる、または低められる場合に、2変数から第3の変数の影響を取り除いて求めた相関係数のことです。詳細はPower-based-connectivityのnoteで説明します。
10) ⾒たいペアの時系列を変える
これにより、ボリュームコンダクションを無視できます。
次のnoteではいろんなコネクティビティ解析の概要を説明します!
最後に、このノートにスキを押してくれると、とても嬉しい&更新のモチベが爆上がりします!ここまで読んでくださり、ありがとうございました。