桂枝
生薬の個性について、私なりにまとめてみるシリーズです。
一般向けの生薬解説の本や、専門書を参考にします。
随時、学びを深めて更新していきたいと思います。
ご意見、ご感想頂けると嬉しいです。
一般的なイメージ
桂枝湯や桂枝○○湯に入っているのは、桂枝(ケイシ)ではなく桂皮(ケイヒ)という生薬です。
厚生労働省の『第十八改正日本薬局方』(←法律に沿って定められた医薬品の規格基準書)の『桂皮』の欄を見ると
桂皮は英語でCinnamon Bark。シナモンの樹皮。と書いてあります。
シナモンは香辛料として馴染みがあります。
日本の香辛料のシナモンは、スリランカや南インドなどの熱帯地方原産のセイロンシナモンのことが多いようです。(セイロンはスリランカのこと)
生薬の桂皮は学名:Cinnamomum cassia=カシアという植物。
シナニッケイと言います。
カシアは中国原産。中国南部やベトナムで多く栽培されているようです。
セイロンシナモンと同じニッケイ属の植物です。
アメリカではこの、カシアが香辛料のシナモンとして使われることが多いみたいです。
もう一つ、肉桂(ニッケイ)も同じ仲間です。
ニッキ飴とか八ツ橋などのお菓子に入っています。
肉桂は日本の固有種で、根っこの香りが強い品種だそう。
ですので、
生薬の『桂皮』はシナモンや八つ橋の香りや味をイメージすると、わかりやすいかと思います。
桂枝(ケイシ)と桂皮(ケイヒ)の違い
桂枝と桂皮は同じ植物の部位が違う生薬です。
桂枝は枝、桂皮は幹の皮の部分です。
桂枝は、辛・甘・温
枝の部分なので、人体で当てはめると四肢や、身体の表面の部分に相当します。
桂皮は、辛・甘・大熱 4)
幹の皮の部分は、人体では体幹や身体の内側に相当します。
また、桂皮の方が熱性が強くなります。
お茶などでも、葉っぱに比べると枝を使ったお茶の方が陽性となります。
(幹に近い方が身体を温める効能が強い)
三年番茶は身体を温めると言われお手当に使われますが、枝の部分が多く使われています。
登録販売者としての知識
薬効成分はシンナムアルデヒド、
シンナムタンニンには収斂作用があります。
発汗作用、消炎作用、鎮痛作用、健胃作用がよくあがっていると思います。
薬徴の記載
薬徴:
吉益東洞(よしますとうどう)の著書、薬物書、全3巻、1785年初版
薬徴では、桂枝は
『衝逆(しょうぎゃく)』はつきあがる症状のことを言います。
桂枝は、何らかの理由で胸や頭の方にエネルギーが昇ってしまう症状を治めることができると書いています。
私が理解している解釈
上記の情報と、「中医臨床のための中薬学」の本の内容から
私が今現在理解している桂枝の解釈は
寒さによる滞りを温めて通す(寒滞を温通する)
水湿を変化させて体外へ出す(水湿を化して利する)
気逆や奔豚を降ろす
冷たい風が身体に当たって、風邪を引いたり、痛みを誘発する場合、良い働きすると思います。(風寒痺痛に適する)
そもそも寒さに反応しやすい人のなかで、
身体の中に余分な水分を多く持っている人に適しているのかなと考えます。
(水があるところにしか氷ができないみたいに)
発汗する作用はそこまで強くなく(桂皮は熱が強いので発汗作用も強いかも)、体表を温めて水湿を通して、正しく(重力に沿って)水が下半身(下焦)に降りることで、気の突き上げが治まるのかなとイメージしています。
注意点
漢方薬は副作用がなく、安全であると思われることが多いですが、
生薬の毒等を用いて、身体の中の病邪に反応・作用させています。
生薬の強さ(毒の強さ)は様々で、服用する人の病邪の強さも様々です。
「副作用が少なく安全である」というのは間違いです。
桂枝・桂皮は辛味があり、温める作用が強いので、
炎症性の疾患の方や、出血しやすい状態の方、妊娠中、月経の出血量が多い方などは注意が必要です。
参考にした書籍
鈴木達彦.生薬とからだをつなぐ.医道の日本社
ユーキャンの登録販売者お仕事マニュアル 生薬と処方がわかる漢方薬.自由国民社
吉益東洞.薬徴.たにぐち書店
神戸中医学研究会.中医臨床のための中薬学.東洋学術出版社
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