2024年10月後半日経平均相場の振り返り
① 日経平均チャート
10月後半相場を振り返ると、日経平均株価は一時38000円を下回るも末日には39000円台をキープして終わった。
② 「選挙は買い」アノマリー
この間、株式市場では半世紀以上続いてきた「選挙は買い」のアノマリー(経験則)が崩れた。
25日の日経平均株価は前日比229円安の37913円と、衆議院解散の前日よりも3%安い水準で終えた。
「選挙は買い」は数あるアノマリーのなかでも有力なものとされる。
実際1963年以降、前回2021年まで19回連続で日経平均株価は解散前日から投票日直前の営業日まで上昇してきた(1976年の任期満了を除く)。
上昇率は0.2%高から12.1%まで幅があるものの平均すると3.9%高である。
今回は2.6%安と64年ぶりにマイナスに沈んだ。
1947年に施行された現憲法下の全25回でみても通算21勝4敗となる。
投開票日前最後の取引となった25日には日経平均の下げ幅が一時400円を超え終値では3週間ぶりの安値となり38000円を割り込んだ。
このアノマリーが外れたなかで、珍しい現象があった。
それは日経平均株価の日足チャートで終値が始値を下回る「陰線」が解散前日の8日より23日までの11営業日連続となり、野田佳彦首相で民主党政権だった2012年5月16日までの13日連続以来である。
③ テクニカル分析
少しだけ基本の話をすると、投資家の日中のトレードで、翌日に不透明感がある場合は、当日の建玉を手仕舞うケースはよくあることだ。
その力が大きいと、当日の寄り付き値よりも引け値が下回ることになる。ローソク足チャートではこの1日の動きを書くときは、黒で書き、これを「陰線」と呼ぶ。
逆に寄り付き値よりも引け値が高いと白で書いて、これを「陽線」と呼ぶ。
通常のローソク足チャートは、この陽線と陰線が入り混じった形で進んで行く。
④ 「鯨幕相場」
白と黒が交互に並ぶと、葬儀などに使う鯨幕のようになるので「鯨幕相場」と呼んで、方向感のない局面を表す。
⑤ 三羽烏
また黒が同一方向に3本出ると三羽烏と言って、相場の下降トレンドが始まる兆候だと言われる。
ただ、日経平均は、今回の11連続陰線がスタートした8日こそ前日比395円安だったものの、ずっと下落たわけではない。
翌日は340円高と切り返し、翌々日も102円高、その次も304円高で同一方向とはなっていない。
やはり、日本の投資家が建玉を翌日に延ばしたがらない理由は、何と言っても27日の日本の衆議院選挙と11月5日のアメリカの大統領選挙の結果に対する不透明感があったからだ。
事実11連続陰線が始まった10月8日は、衆議院が解散された10月9日の前日であることでもわかるだろう。
⑥ 「与党過半数割れの可能性」
日本の話題を独占してきたこの衆議院選挙が、ようやく27日で終わったわけだが、選挙戦終盤では「与党過半数割れの可能性」を報道メディアも複数あった。
そのため、選挙直前の取引最終日である25日は売りをこなし切れず、日経平均は一時430円安となった。
しかし売りが売りを呼ぶ展開にはならなかった。
特に連続陰線の日にはなかった引けにかけてまとまった買いで229円安まで戻り37913円で引けた。
選挙の不透明感に対する不安は逆の意味で売り方にもあったようだ。
従って、選挙結果を不安材料とみるエネルギーはここで出尽くしと考えられる。
⑦ 移動平均線
チャートをみてもわかるとおり、日経平均は25日現在で25日・75日・200日という3つの移動平均線を下回り、極めて形が悪くった。
しかし、チャート理論から言うと、それならば大きく下落する可能性が高かったにもかかわらず、実際の日経平均はそうなっていない。
11連続陰線も、衆議院選挙の不透明感を嫌う「オーバーナイト拒否」の連続で現れたチャートの形であって、現在の日経平均が移動平均を下回るこのチャートの形は「これからの下げを呼ぶ暗示ではない」ということだ。
⑧ アメリカ大統領選
ただ、衆議院選挙は終わったが、まだ11月5日のアメリカ大統領選挙が残っている。
民主党のカマラ・ハリス候補有利から、共和党ドナルド・トランプ候補有利に変わりつつあるこの選挙も、市場にとっては大きな不透明要素である。
実際衆議院選挙前には1ドル=153円台まで円安が進んだにもかかわらず、日本株は株高になっていない。
「円安・株高」の関係がトランプ候補の揚げる「アメリカファースト」主義で壊れるのか不透明感が拭えない。
とにかく日本の衆議院選挙が終わり、選挙戦終盤の予想どおりの結果となったことで、大きな不透明感はひとまず晴れた。
カラ売りで儲けようとしていた売り方からすれば、いったん買い戻すところだ。
だが買い方の心が晴れ「もうここからはあまり落ちないはず」と強気になるのは、11月5日以降のアメリカ株式市場を待たねばならないようだ。
⑨ 取引時間延伸
最後に今月の話題として一つ述べておこう。
東京証券取引所は11月5日に立会内取引時間の終了時刻を現状の午後3時から、同3時半に延長する。
それに合わせ、終値形成の透明性向上へ「クロージング・オークション」と呼ぶ板寄せ制度を導入する。
ザラ場と呼ばれる日中取引は3時25分に終了し、以降の5分間は売買が成立しない注文受付時間とし、3時半を迎えた時点で売り注文と買い注文を一斉に突き合わせ、売買を成立させることになる。
市場としては、注目や流動性も上がる可能性が高い。
取引時間の変更に伴い、市場参加者はしっかりと把握をして備えてほしい。