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金沢公共交通考
先日金沢に行ってきましたが、そのついでに公共交通についても視察を行ってきました。
はじめに
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よく言われる金沢駅の地下のイベントスペースは鉄道乗り入れ用という話、浅野川線が「地下1階なのにホンマかいな?」と思ってたら、どうやら浅野川線とは別の新交通システムの計画の話です。おそらく、これはラッチ内コンコースで下にエスカレーターみたいなことになるのでしょう。
「金沢駅東広場工事記録誌」より金沢駅地下2階部に確保されている新交通システム用空間の図。将来的に金沢市が新交通ないしLRTを導入する場合、ここが活用される事になる pic.twitter.com/ZV5VJIS7NG
— ラインボーテ (@lrt_kyuu) November 5, 2016
この日は試乗会の受付なども行ってるイベント広場の、奥まったところに頭端式の小さなとしたホームがあります。
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じつはここは完全に埋まってるわけではなく、半地下構造になっており、写真には写っていませんが左側にある待合室から外部が見られる構造となっています。
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金沢の現状
さて、さらっと新交通システムと書きました、金沢ではことのころ30年以上新交通システムの計画が浮上したり消滅したりを繰り返しています。2021年に一度遡上にあがった時のルートですが、たいてい検討されるルートはほぼ同じものです。
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出典 https://www.chunichi.co.jp/article/260521
消滅したときにはたいてい「バスを充実させればよい」で終わるわけですが、実際バスロケーションシステムなどは比較的発達しています。
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もっとも整備されたのは昭和の頃なので、地震の影響か老朽化はわかりませんが、休止中というバス停も目立っていました。
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また、駅前には主要観光地になんのバスに乗ればよいかという案内もあり、城下まち金沢周遊バスというものもあります。
このようにバスがそれなりに高い利便性を確保してきたと言えるでしょう。
問題点
まず、香林坊と武蔵ヶ辻のバス停が複雑なことが第一に挙げられます。「香林坊東」とかバス停ごとに別の名前をつけるべきだとは思うのですが、市民にとってはアレでわかりやすいのでしょうか?
次に全国共通交通系ICカードがないことです。ICaという独自のICカードはあります。西日本JRバスはICOCAですし、前述の城下まち金沢周遊バスにも導入していますし、一日乗車券は事業者関係なく乗れますし、一部の石川鉄道線も使えます。だけど、北鉄バスでは交通系ICは使えないのです。
おそらく手数料の問題があってタッチ決済のほうが安上がりで外国人にも馴染み深いという事情はあるのでしょうが、利用した限りではどうにも片手落ち感が著しいのです。
また、バスロケーションシステムも老朽化が進んでいますが、いっそのこと金沢駅・香林坊・武蔵ヶ辻・兼六園下・ひがし茶屋街・長町・野町あたりの主要なバス停以外はQRコードを乗っけてWeb版のバスロケを整備して「知りたければホームページにアクセスしろ」でも良いのかもしれないです。実際横浜はバスロケを全面Web化してしまっていますし。
なぜ金沢に軌道系交通が整備されないのか
ここからが本題なのですが、なぜ金沢に軌道系交通が整備されないのかという話になってきます。まずよく言われるように戦災にあっておらず道路が狭いということが挙げられます。
とにかく道が狭い
金沢市内の路面電車の廃止の一因は道が狭いがゆえに幅2,200mmサイズの小型車両しか導入できずバスのほうが輸送力が上がるということも廃止の理由でした。ちなみに、宇都宮ライトレールの車両は幅2,600mmで、これは大江戸線の車両(幅2,490mm)よりも大柄です。
なら、地下は?となるでしょうが香林坊と武蔵ヶ辻の地下は地下通路が整備されています。
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これらの地下歩道をみても、地下に地下鉄道を走らせる構造にはなっているとは思えません。また地下鉄道と簡単に言いますけど、ちょっとしたものでもエレベーター・エスカレーターは必須でかなり大掛かりなインフラになることは容易に想像できます。
一番のネックは
しかし、いろいろ書いてきましたがおそらく一番のネックは金沢の人口が少ないことが挙げられるでしょう。
宇都宮・金沢・松山はそれぞれほぼ市だけで見れば同じ人口ですが都市雇用圏でいえば、宇都宮都市圏が110万人に対し、金沢都市圏は74万人、松山都市圏は63万人で、宇都宮のそれは浜松に匹敵する大きさです。
宇都宮はライトレールの沿線に清原工業団地があり、大学が有り、ショッピングモールが有りと集客施設が充実していますが、金沢はそんな工業団地は有りません。大きな工場といえば野町駅にある津田駒工業くらいです。
人口の過小さは、軌道系公共交通の利用客の少なさにも現れています。
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北陸鉄道の鉄道線と比較して富山地鉄・福鉄・伊予鉄・遠鉄各線の輸送密度を掲載しましたが、公共交通先進地とされる福井と富山と比べても輸送密度自体は引けを取らないとはいえ、12~15分間隔で運行される遠鉄や伊予鉄と比べたら話にならない輸送密度です。ちなみに、遠鉄に至ってはコロナ禍でも国鉄で言えば幹線レベルです。
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石川線は1時間に1~2本、浅野川線はパターンダイヤで1時間2本です。石川線が放置されているのはLRTにするのか方針が決まらないとも言われていますが、それがなくても浅野川線の半分の需要しか無いことが最大の原因とも言えましょう。
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ちなみに昭和40年代には更に一駅先の白菊町駅まで伸びていましたが、とても交通結節点になりようがない場所ですし、無理にでも延伸して長町まで行っていればと言われるかもしれませんが、もう昭和の頃には市街地化が進んでいますし、そもそも石川線のルーツは大手私鉄の阪神電鉄や、地方鉄道でも静岡鉄道に代表されるインターアーバンの路面電車ではなく馬車鉄道であるので貨物駅のスペースが有ることが前提でした。
また、金沢城は河岸段丘のキワにあるもので、お城の直ぐ側にある香林坊や武蔵ヶ辻というのは実は河岸段丘の2段め(お城は3段目)で、野町駅から白菊町駅までキワに近いところをはしっており、昭和初期の技術では勾配を上がれなかったものと思います。
誰もが石川線と浅野川線が分断されていることに違和感を覚えるでしょうが、好き好んで分断して、今までそれを放置したわけではないということは理解しておくべきです。
まとめ
金沢の場合には、今までバスの改良でなんとかなってきたというのは事実でしょうが、今後もそれが通用するとは限らないのもまた事実です。
しかしながら、バスと言うと1段見下して相手にしない風潮は、交通クラスタの中にまん延しているし、バスより鉄道のほうがあこがれの仕事だから人員が獲得しやすいという世迷い言を言う人はおりますが、鉄道も人員不足なのは変わりがないのです。
「金沢の交通網の現状はどうか」と「解決したい課題はなにか」をはっきり認識すべきであり連接バスを入れた程度でBRTを自称するようなことでは話しにならないという意見があります。
新交通システムは確かにあくまでも問題解決の手段です。それなら「今のバスを改良する」とか、「連接バスを入れた程度の自称BRT」でも十分という可能性はありえるわけで、どうも鉄軌道有りき、専用空間導入ありきで、現場を見ていない机上の議論なのではないかと強く感じました。