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「ラブライブ!」ファン層の二極化と運営戦略の課題

ブシロードから発売予定の『ラブライブ!』のカードゲームにおける目玉の一つはキャストのカードですが、SNS上では「声優を売り物にするなんておかしい」という不満の声が散見されます。

しかし、ブシロードの代表的なIPである『BanG Dream!』ではキャストのグッズ展開をアーティスト○○と称して行われているため、同じ方式で『ラブライブ!』も成功するだろうと運営が考えているようですが、それが本当に「ファン層に寄り添った施策」と言えるのでしょうか。


ラブライブ!のファン層は二極化している

私は以前から『ラブライブ!』のファン層には、次に挙げる2つのグループが存在してると考えています。

  1. キャラクターや声優個人の活動に関心を持つ層

  2. 物語やその展開を主に楽しんでいる層

仮に本稿では1.を「声優層」、2.を「物語層」と名付けて論評してみましょう。

ライブ来場者を「固定ファン」と定義すると、Kアリーナでのライブは可能ですが、それ以上の規模、例えばさいたまスーパーアリーナは難しいのが今のこの作品の規模感であり、固定ファンの数は2万人程度と推定されます。

また、『Liella!CLUB』の会員数は5000人程度と考えられ、『ラブライブ!スーパースター!!』のX(旧Twitter)のフォロワー数は約10万人です。アイドルグループの固定ファン数はフォロワー数の5~10分の1程度と仮定すると、「声優層」は4000~5000人、多く見積もっても1万人を超えないと推定されます。したがって、ファン全体の約7~8割が「物語層」、残りの2~3割が「声優層」であると考えられます。

「物語層」の多くはキャストへの関心が薄く、積極的に応援することはありません。ただし、アニメ出演声優のSNS投稿をリポストする程度の関心は見られるため、完全に無関心というわけではありません。それでも、声優の活動に積極的に時間やお金を使う層ではないといえます。

声優もキャラクターも物語を味わうためのインターフェースである

図1 リンクラのスクリーンショット

『Link! Like! ラブライブ!』のUI(図1)を見ると、キャラクター配信である「スクールアイドルコネクト」が最上位に配置され、メインストーリーが次に続いています。このことから、運営は「スクールアイドルコネクト」を主要コンテンツと位置付けているようです。

しかし、「物語層」のファンは「活動記録」(メインストーリー)にプライオリティを置く傾向が強くファンがキャラクターそのものよりも「物語」や「成長」に帰属しており、要するに「物語層」のファンが消費しているのは「キャラクター」ではなく「物語」なのです。

ライブにおいても、キャストに「役になりきる」ことが求められます。物語層の人々にとってライブは物語の追体験の場であり、極端なことを言えばキャストやキャラクターどちらも物語とファンを結びつける「インターフェース」を担うだけにすぎないのです。

5000人のファン層について

先ほど「声優層」の固定ファン数を4~5000人と仮定しましたが、この数字というのはライブアイドルとしては大手と言える規模です。

例えば、ギリギリで武道館でのライブが出来る数字ですし、このくらいの人気であれば雑誌にグラビアが掲載されたり、ファンクラブの年会費が5000円であれば、年間2500万円の収入が見込まれます。

運営が収支のバランスを取れば充分に黒字経営が可能であり、アイドル自身も浪費しなければ収入のみで生活できるものと思います。

ただし、アニメやゲームでは状況が異なります。例えば、ソーシャルゲームで年商1億円ではまず運営が成り立たないでしょうし、アニメだって今1話あたり3000万円が相場なので、1クールアニメを作る度に4億円近くのお金が飛んで行きます。それを考えたら、ライブコンテンツは「簡単にアリーナライブができる」というものではなく、収益分界点が大きく「アリーナライブが出来る規模のファンを確保しなければ商売が成立しない」のかもしれません。

まとめ

もし、運営がファン層を十分に理解せず、「ファンは全員声優が好きだろう」という感覚で運営しているとしたら、それは衰退への道を歩んでいると言わざるを得ません。

今こそ冷静で的確な戦略を持つことが重要と思う次第です。

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