ずっと好きな人
マッチングアプリは彼と出会う前にやっていた。最近、彼との関係を終わらせようと思ってまたマッチングアプリを再開した。彼と出会う前後で私の心境に変化があったので、今日はそのことについて触れようと思う。
私は過去に1人としかお付き合いをしたことがなく、その人とは肉体関係がなかった。マッチングアプリやその他の方法でオンラインで知り合った男と出会い、一夜を共にすることはあったが、2回目以降会おうという気にはならなかった。
同じ男性と複数回、体の関係を持ったのは彼が初めてだった。好きな人からもらう言葉がどんなに重いか、温かいか、残酷か、それを彼からは学んだ。彼は正直すぎる。というか、嘘を付けないのだ。どんな言葉もきっと本心だろう。だからこそ私は傷付くし、ときめくのだ。
彼は私に惜しげもなく「綺麗」「可愛い」と言ってくれた。他の誰から言われるよりも嬉しかった。こういうことされるのが好きだと言えば必ずやってくれた。「俺ら、相性はいいよね」と言われた意味はその時には分からなかったが、他の男と会うほど彼の言う「相性」の意味がよく分かった。
彼は自分に自信がないと言う。そのせいかは不明だが、ホスピタリティに溢れる。2人で会うことになれば、食事をする場所など全て決めてくれる。そしてハズレはない。手を繋ぐのも、ハグもキスも好きではないと言っていたものの、私が好きだと言ってからは多めにしてくれるようになった。ああ、普通の恋人はこうやって絆を深めていくのだろうなという想像もできた。
アプリで知り合う男たちは「気持ちよくさせる自信しかない」「絶対満足させるから」などとほざいている。女の子が満たされるのは単なる体の快楽ではない。安心できる場所と空間、大切にされる幸福感、思いやりが感じられる信頼関係、これら全て揃って初めて「満たされた」と感じるのだ。そのためにはコミュニケーションが不可欠だし、嫌なことを断れる勇気も必要だ。
彼は私の心の変化にとても敏感だ。表情が少し曇れば「今こう思ってるでしょ?」と聞いてくるし、動きが止まれば「今なに考えてる?」と私の気持ちを確認してくる。私が求めていたのはこういう気遣いだ。好きになっても返ってこないことは分かっているのに、会えば会うほど好きになる。
彼に恋してから知り合った男たちは皆、一旦、彼と比較してどれほど彼と劣っているかを痛感するという過程を踏まなければならない。肉体的な面においても、世の中、最低限の思いやりもない男が多すぎる。
久しぶりにマッチングアプリを始めて、男のクズさに触れ、私はまだまだ彼のことが大好きであることを改めて思い知らされた。仕事からの帰り道、堪らず涙が溢れた。夜風を浴びながら漕ぐ公園のブランコは気持ちよかった…はずだった。漕いだら脚全体が痛くなり筋力の衰えを感じたし、少しスピードが出ただけで胃が気持ち悪くなった。リフレッシュするどころか、気分まで落ちていた。まだ当分、新たな恋には踏み出せそうもない。