マッチングアプリ体験談12
●第12話「うんちく男」
この男は別に入力しなくてもいいのに出身大学をアプリ上で公開していた。誰もが知っている都内有名私立大学だ。そこに惹かれたわけではないが、メッセージを続けて博識であることは感じられた。
都内で会うことになったのだが、お昼を食べようと誘ってきたのはラーメン店だった。九州に本店があるチェーンで、男はよく利用するということだった。デートと思って来た私が間違いだったのか、客層はおじさんが多かった。どう考えても綺麗めの格好で来た私が浮いている。
店に着いてからは、店名の由来などが書かれた掲示物などを指しては補足情報を止めどなく話してきた。初めて来るラーメン屋、旨いかも分からないのにそんなこと聞かされても全くつまらねえ…。私に興味がないこと、気付いてないのかな?まあ、良い人演じちゃうから頷いてはテキトーなタイミングで質問を入れるし、分かるわけないか。
おすすめのメニューやら創業の話やら、どこまで話したらネタが尽きるのだろう。テーブル席についてはいたものの、当然ラーメン屋なわけだから頼んだものが届いたら会話を楽しむということはできなくなる。と思っていたら1人延々と話していた。色々と具が乗ってなさそうなものを選んだつもりだが、途中でお腹いっぱいになったし、脂を受け付けなくなった。
正直、色んな意味でもう帰りたい状態だったのだが、ゆっくり話そうということで喫茶店に行くことを提案された。ああ、そこはちゃんと分かっていたのね。ならお昼食べて集合でもよかったんじゃない?どうしてもそのラーメン私に食べさせたかった?
どんな話題でもちゃんとついてこられるし、否定せず聞いてくれるし、いい人そうではあった。ただ、お会計の時にテーブルに置かれた「LINE追加で5%オフ」という広告にかなり食いついていたのが気になった。堅実なのはいいことだが、「5%オフは大事ですよね!」「クーポンの使い方は…どれどれ…なるほど…」と1人で合点している。
もはやここまで来れば潔い。かっこつけたいというような気持ちはないのだろうか。いや、がめついとかケチだとかそういうことを思ったわけではない。単純に女の子慣れしてなさそうだなと感じた。経験豊富がいいかと言うと、そういうわけでもないのだが、あまりに庶民的すぎる。ごめん、私はどうやらロマンチストでお姫様扱いされたい夢見がちな女の子らしい。
悪い人ではなかったのだが、「また是非!」というメッセージを最後にそれっきり何も行動を起こさなかった。